第1話 僕は落ちこぼれ。むしろ1回も上がってないから落ちてない。
僕の名前は要目 陽路。
年齢は19歳、高校卒業後は進学も就職もせずに今はコンビニでアルバイトをしてる。
自分の能力と自分の人生にはもうウンザリしている。
頭も顔も良くないし、家庭も平凡中の平凡。
夢や希望もないし、当たり前のように彼女もいない。
僕って生きてる意味あるのかな…
今日もコンビニのバイトに行かなきゃ…
また店長に叱られるんだろうなーって考えながら自転車を走らせる。
自宅から5分ほど走った距離にある交差点で赤信号に捕まった。
カゴの中のバックからスマートフォンを取り出そうとするが、見当たらない。どうやら家に忘れたようだ。
「あぁ、なんだか今日もツイてないなぁ」
つい独り言が溢れる。
反対側の歩行者用信号が点滅を始めたのでペダルに足をかけた。
その時、凄まじい轟音を響かせながら大型トラックが要目のいる交差点に向かってくる。
「あっ、僕 死っ…」
突如目の前が真っ暗くなり、意識が飛んだ。
目を覚ますと要目は森の中にいた。
大型トラックを見た景色が最後で、そこからの記憶は無い。
事故に遭った。と思ったが不思議と体に痛みは全くない。
「ここは… どこなんだ?…死んだのか…?夢なのか?というか、自転車…」
自転車が無いことにショックを隠せないまま歩き出す。
果てしなく続く森。途方に暮れ、足も進みが悪い。
しばらく歩いていると遠く後ろの方から声が聞こえた。
「おーい誰かいるのかー?」
声の方に振り向くと、戦闘機のパイロットが着けているようなゴーグルをした金髪の男がこちらに近づいてくる。
よかった、助けてもらおう。要目は安堵した。
「ここは子供が入れる場所じゃないぞ?何処から入った?」
金髪の男は怪訝な顔をしながら要目に聞いた。
「あの、助けてください!ここが何処か、どこから来たのかもわからないんです!!」
「あと、一応19歳です!」
金髪の男は僕と年齢が近いように思えた。
「名前は?」
金髪の男はゴーグルを外しながら聞く。
「僕の名前はカナメ ョ」
名前を言いだした途端、木の上から黒い影が僕たちを襲ってきた。
「うわぁっ!」と情けない声を出し尻餅をつく要目。
自分の足と足の間に真っ黒で獣のような筋肉質の脚。
見上げていくと翼の生えた悪魔。まさに悪魔がそこにいた。
「あっ…あっ…あくまだぁぁぁぁぁ!」と叫びながらずるずると後退していく。
腰が抜けて立ち上がれない。
「出でよ!ホープ!」
金髪の男がそう叫ぶと同時に僕の目の前にいた悪魔は吹っ飛んだ。
「立てるか?カナメ」
そう言って手を差し伸べてくれたが、金髪の男の手は真っ黒い光沢のあるガントレットが装着されていた。
「ありがとうございます…いっ、今の
悪魔みたいなバケモノはなんなんですか…?」
手を貸してもらいカナメは立ち上がりながら聞く。
「お前今まで魔物を見たことがないのか?」
金髪の男は眉間にシワを寄せながら何かを考えている表情だ。
「あの、お名前聞いてもいいですか?」
カナメは名前を聞いていないことを思い出し質問をした。
「俺の名前はアギト。まぁ、とりあえず街に送ってやるよ。」
そう言いながらアギトはゴーグルを着けた。
「背中に乗れ。おぶってやるから。」
もう、歩けるよ。と思いながらも果てしなく続く森を見て甘えることにした。
アギトはカナメに指示をする。
「落ちないようにな!しっかり掴まっとけ!」
彼はガントレットを装着した手を地面に向けて叫ぶ
「いくぜ、ホープ!街までひとっ飛びだ!」