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女子3人以上集まれば

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

工学系訓練生が居る1号機同様、4号機もユニークである。

ここは女性訓練生だけで固めたのだ。

既に語ったように、女性用設備が1機分しか出来ていなかったから、そのモニター役も兼ねて女性だけ纏めた訳だが、本来はこういう運用はしない。

隔離された極地の観測所等で見られた現象だが、男性だけのチームより、女性も混ざったチームの方が雰囲気が穏やかで、コミュニケーションも円滑になったという報告があった。

宇宙飛行は、乗り込める人数がごく限られていたから、スペースシャトルで7人乗りが実現するまでは中々女性を含むチームが出来なかった。

(テレシコワのような、単独女性飛行はあった)


日本においては、南極越冬隊に女性が加わったのは1997年、女性宇宙飛行士がスペースシャトルに乗ったのが1994年と、アメリカに比べて女性科学者・技術者の「隔離された過酷な環境への派遣」は遅れているかもしれない。

そういう環境に乗り込む女性は、別に女傑とかそんなタイプではない。

専門家スペシャリストである以外は、大きく変わったとこは無い。

まあ、女子大以外の理工系の大学院卒では、男子院生の奇行に慣れていて、パンツ一丁で彷徨かれてもキーキー文句言わなくなる程度に鍛えられてはいるが。


※言わないだけで不快ではあるとの事


という訳で、多少研究職の空気に晒されていたとはいえ、普通の女性が纏まって生活している。

そして、どうも「女の子ばかり集まって独特な世界を築いている」アイドルグループなんかに見られる問題が発生した。

派閥が出来てしまったのだ。


深刻なものでは無い。

会話は普通だし、共同作業に支障は無い。

ただ、普段を見ていると、仲良くいつも一緒に居る2人と、特に仲良しを求めて無いからか単独だが、ペアを組むとなると必然的にその組み合わせとなる残り2人。


秋山たち男性には、これが深刻な亀裂かどうか分からなかった。

女性職員の目から見て

「ああ、こんなの日常茶飯事。

 男だって何となく連む人と、仕事以外じゃ話さない人いるでしょ。

 だからって不仲じゃない」

「いや……、男の場合、普段話したくない奴とはやっぱり合わないから不仲になるんだが……」

「男の方が陰湿って事ですね。

 まあ、不仲でも仕事になればちゃんと切り替えるんでしょ!

 女はああやってベタベタしてたり、話さなかったりってあるけど、全然深刻じゃないから。

 仮にあの仲良しやってる内の一人を外したら、ちゃんと他の2人とも話すようになりますから」

「そうなんですか?」

「気が合う人とくっついてるだけだし、全然深刻じゃありませんから」

「本当に深刻に不仲なら、それは分かりますから」

その言葉を信じざるを得ない。

「まあ、一致団結する機会があれば、簡単に纏りますよ」


10日もすると、モヤシが食べられるまでに育つ。

最初の何本かを調査に回し、危険が無いかを確認する。

地上で、一般人でもやってる栽培法だし、特に問題が無い事は分かっている。

宇宙で行った場合のシミュレーションで行っているだけだ。


そして、ついに室内で育った物を食べる時が来た。

1〜3号機は大して変わり映えのするものは見られない。

茹でる、塩で炒める、インスタント味噌汁(パックから飲む)に混ぜる、こんなとこ。


女性チームは違った。

まず、モヤシとゴマ油、醤油、すりゴマや私物の唐辛子粉を混ぜてパックの中で揉んだ。

モヤシナムルってやつだ。

パック内の玉子スープと合わせる。

中華風スープだ。

豆腐とツナ缶と合わせ、パックに入れて、加熱する。

沖縄風のチャンプルーだろう。

日によってそれぞれメンバーが自分のレシピを出し、ハズレ無しで食べている。

男性チームが、たまに凝った料理を作ろうとして、有り合わせで作れずに失敗し、他のメンバーが不味い失敗作をお見舞いされるのとは違った。

段々と4人の女性は、食卓で仲良く話を始める。


その内容は……


「韓国料理好きなんだ!?」

「沖縄もいいよね!」

から

「食糧の中に、キャンディー型のチーズ有ったよね」

「あ、じゃあお餅も使う?

 円柱っぽく切って」

「それとモヤシ混ぜてさ、チーズトッポギ作ろうか」

という料理のアイデアまでは良かった。


「もう少し持ち込めるの増やしても良かったんじゃない?」

「だよね〜。

 分かってたら、唐辛子もっと多く持って来てたのに」

「あれ、ナイスだったよ。

 でもさ、気圧差で破裂するとかで、ニンニクとか生姜のチューブはダメだって、没収されたんだけどさ。

 事前に言ってくれたら、もっと色々考えられたんだゆね」

「つーか、この訓練自体が伝染病で自宅待機になるならって事で急遽決まったって言ってたしね」

「だから計画性無いって言うかさ、バタバタしてたんだ。

 付き合わされるウチらも大変だよね」

「ちゃんと連絡あって、準備出来る時に、もう一回やった方がいいよ」

「だよねえ〜」




かしましい女性4人の結束は、ドタバタで訓練計画を策定した秋山たちを批判する事で固まっていったのである。

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