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宇宙飛行士第2陣とミッション・スペシャリストが発表される

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

まだ第1陣の全員が宇宙に上がった訳ではないが、それでも第2陣とミッション・スペシャリストの発表をする事になった。

「ジェミニ改ver.2」が最大4人を宇宙に運べる事と、使い捨て実験モジュール及び、簡易補給機「のすり」の完成をもって、訓練と実験の両立が可能になった。

これをもって、ミッション・スペシャリストと実験計画を発表する事になる。

その後に「東南アジア諸国、アフリカ諸国、中南米諸国からの研究生受け入れ」がある為、「日本の宇宙ステーションに日本人の研究員を入れずに、先に外国人を入れるのか?」という文句を防ぐ為でもあった。

また、第1陣の11人は「ジェミニ改ver.2」を使う頃には複数回の宇宙経験を持つ事になり、教官役に回って貰う為、次の訓練生を入れて大丈夫となった。




日本というのは、カロリーベースでの食糧自給率は極めて低い。

内容についての議論は置いて、食糧増産の実験というのは議会を通りやすいし、民意も得られやすい。

米でさえなければ、割と農家からの反発も少ない。

これと長期飛行用の研究、さらにISSでは受け容れられないものが選ばれた。

民間企業から、改良型水耕農法の実験と、短期での収穫と食事について提案され、そこから研究員が選抜された。

かねてから議論されていた養魚計画、この中で淡水でかつ細菌の影響の少ない「仮想渓流」、つまり「ステーション内に人工の湧き水という上流、吸引による下流という人工の流れを作って、その中にコケやバイカモのような水草と、それを住処及び食糧とする魚、貝やエビを飼う」環境を作成し、成長と二酸化炭素の処理、及び酸素生産を調べる。

これは基礎研究に近く、大規模な二酸化炭素処理や光合成による酸素生産をするには、遥かに大きな器が必要となるのは分かっている。

清流、清水という点で山葵の栽培を提案して来た学生も、研究員として選抜された。

山葵は冷たく清浄な水と、砂利や砂地での栽培となる為、細菌を嫌う宇宙空間での栽培実験に適しているという判断であった。

宇宙養魚の中で、最も大規模に行い、試食実験まで出ているのが淡水エビの大量養殖であった。

エビ自体の養殖は良いが、循環型食糧供給の為、宇宙ステーションでの廃棄物、ぶっちゃけて言うと排泄物を再利用する為の基礎実験である。


「農業大学、水産大学、地方高校の教諭等が多く選ばれましたね」

という感想を言う者もいた。

選考した秋山にしたら

「化学系、医学薬学系、工業系、理論物理系はアメリカ行き、ISS案件だからな」

と選べなかった事情もある。




宇宙ステーションは細菌、ウィルスの類を嫌う。

バイオハザードを警戒する。

だが、全く受け入れない訳ではない。

きちんと漏れ出ないよう隔離し、実験器具内で完結するなら培養や変異についても実験可能である。

醸造系ではワインの宇宙熟成の実験も行われている。

そういう方面の実験では

・藻類の人工繁殖と酸素生産、二酸化炭素処理

・キノコの宇宙栽培(非食)

・麹菌に関する実験

も選考された。

麹菌の研究は、職員の和食スキーが望む醤油や味噌の宇宙醸造に繋がるかもしれない。

「それを専門家がやってくれるならありがたい」

との事。




ISSで簡単に許可が下りない生物系以外では、ロボット工学系や航空工学系からの実験計画提出もなされた。

日本のアニメではロボットが宇宙を進む。

その際に推進剤を節約する為、軌道修正に手足を動かし、重心の移動やトルクによる変更を使うものがある。

果たしてそれはどの程度可能なのか。

航空工学の方は、将来的に「滑走して離陸する」宇宙船に結び付けたい為、その模型を宇宙で操作してみたいというのがあった。

また、軌道エレベーターやレーザー推進宇宙船の実験も選考される。

これらはISSで実験するには研究規模が小さい為、日本独自でやる事になった。


こういう宇宙での姿勢変更や推進実験には、セミ・ソフト素材での軟式拡張モジュールを使用する。

以前の実験で、風船の延長線上の完全なソフト素材だと不安がある為、外枠(フレーム)は用意して強度を維持する。

模型を船外の放出して実験するのも良いが、ある程度の広さがあれば船内で実験する方が、データ収集的にもやりやすいし、無くす心配が無い。

船外での実験も、先日のカナダアーム取り付けによってやりやすくなった。

宇宙ヨット(光推進機)の実験計画が大学工学部の方から出ていて、これも軌道放出の後、回収軌道に乗せてアームで回収して何度でも実験出来るようになる。




といった研究員が多数選抜された。

70機も購入計画がある為、多めに選ぶ事が出来た。

問題は

「宇宙ステーションの方がそれまで使えるかな?」

という事だ。

次の飛行計画は補給なので、延命は出来るが、あくまでも一月弱しか使わない設計だった為、2年も3年も使うとなると心許ない。

打ち上げ当初は綺麗にラックや棚に機械が収納されていたが、今は既に

・アーム操作用のコンソールが棚外に伸びている

・2人滞在用から最大4人滞在用にフィルタを改装し、それが船内に飛び出ている

・トイレ用品を使いやすいようにトイレ内に置いている

等、雑然とし始めている。

長期に渡って使えば、拡張、改装、便利化で散らかってしまうだろう。


(その時は内部と生命維持装置を再設計した「こうのとり改」2号機を打ち上げよう)

と、その時も予算があればそうしたい。

その一方で

(強化されたらされたで、次は6人用、8人用とか言われて、新型も手狭になるのだろうな)

と快適さ追求による宇宙ステーション仕様のいたちごっこを秋山は予感していた。

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