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続々と集結

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

正月特番なんかも終わり、1月も通常の日々に戻る。

冬季休暇も終わり、JAXAにも職員たちが帰って来て仕事を始めた。

代わりに、休暇期間仕事をした者たちが代休に入るのだが。

そして、最終選考に進んだ6番組の宇宙に行く者たちの訓練が始まった。


基本的に彼等にとって、訓練からが企画の始まりである。

この時点では宇宙に行かない者も、地上訓練を撮影に来る。

これが結構大人数となる。

身軽な地方局の番組であっても、彼等の訓練を撮影する為に別のスタッフがやって来ていた。

行く者たちは、小さいカメラで自分たちで撮影をしているのだが、それとは別で。

こんな感じで各番組が撮影チームを引き連れて来る為、訓練は2編成に分かれて行われる事となった。

1つ目は降下訓練、脱出訓練、耐G訓練をしてから、閉鎖環境での生活訓練を行う。

もう1つの方は、先に閉鎖環境訓練を行う。

実際の宇宙ステーションを模した閉鎖訓練室及びそのモニター室の数からも、全員を同時に閉鎖環境訓練は出来ない。

短期滞在だから閉鎖環境訓練は一週間程。

それとシミュレーターを使った危機対応での人物確認がセットとなる。

長期滞在程ではないが、閉鎖環境でイラついたり、逃げ出そうとする者は失格である。

短パンで膝をバシバシ叩きながら歌を適当に歌い出すのは微妙なところだ。

意図的に演出した絶体絶命の危機に、他罰的になったりさっさと諦める者も選考では落ちる。

役に立たないフニャフニャマットでバリケードを作るくらい、何かをするという事こそ望ましい。

そういういざという時の人間性を確認する。

意外に人間性については大きな問題は出ていない。

というのは、タレントを宇宙に派遣しようとしているのは2番組だけだった。

あとは二の足を踏んで、局アナ、更には若手ディレクターとかADとかカメラマンとかを派遣している。

局アナは半分芸能人みたいな扱いをされていたりもするが、基本はサラリーマン、OLである。

楽屋に挨拶に来られる側ではなく、なんだかんだ言って挨拶に行く側の人間だ。

居丈高だったり、スタッフと揉め事を起こすようだと降板させられる。

ゆえに人当たりが悪い人間は少ない。

どちらかというと、芸能人の方が難しい。

今訓練を受けている人たちは、素は凄く良い人なのだが、カメラが回っていると見ると演技が入ってしまう。

職業病のようなものなので、たまに

(いや、これは人間的にちょっと……)

と思うような行動も、番組知っている人からすれば

「あれは、あの関係性があってのものですよ」

「尻をボッコボコに蹴ってますけど、実際はかなり尊敬してますよ」

「ボヤきは芸風ですし、ボヤきつつもあの人、やらない事はなかったので。

 むしろ、ボヤき始めてからが本番です」

なんていう若手スタッフのフォローが入る。

真面目な採点官しかいなかったら、シャレがシャレにならずに落選となっただろう。


訓練の内、降下訓練とかの方は、泊まりでなくて良い。

本来の宇宙飛行士訓練生だと、宿泊で3ヶ月程みっちり訓練するが、今回の場合は通いでよくなった。

経費使って遠方からでも来られるのだから、その辺は問題ない。

そういう時間の都合がつく為、実は何人かは先行して降下訓練とか脱出訓練は終わっていた。

その人の中で……具体的には一名だが……ロボットアームの操作、ジェミニ改の操縦訓練、船外活動の為の潜水訓練をしたがっている人もいる。

番組スタッフから頭を下げられた事もあり、シミュレーター操作まではさせる事とした。

見た感じは、ゲームセンターのようなものだ。

すると、他のチームからも

「あの番組だけ優遇しないで下さい。

 ああいう実習なら自分たちもしたいです」

とか言い出して来る。

「今のメニューを終えたら!

 基礎を終わらないで、応用に進まない。

 あの人、11月から2ヶ月かけて、何度も降下訓練も危機回避訓練も実習しましたので。

 あと、あの人の持ってる技能免許の種類をご存知ですよね?」

最後の一言には全員沈黙。

建設用重機の免許を大量取得している芸能人は、そうそういない。

そして他のアイドルも、危険物取扱とか潜水士とか免許を持っていて

「一般の訓練生よりも技能面で上だったりしますよ」

と専らの評判なのだ。

無論、パイロットや本職メカニック上がりの正規飛行士訓練生に比べれば劣るも、大きくは劣らず、一応宇宙船の操縦技能まで学ぶミッションスペシャリストのほとんどよりも上だった。


「えーっと、他の番組の皆さんは、宇宙に滞在して放送する事が仕事なんですから、

 宇宙ステーションのシミュレーターを使って放送する為の機械操作や、

 船外カメラの操作、双方向データ送信、宇宙ステーション内のサーバアクセスを学んで下さい。

 宇宙で農作業しようとしている人たちと一緒のメニューじゃおかしいでしょ!」


その過程までたどり着けたら十分だ。

既に一番組、降下訓練で足を怪我してしまい、これ以上の訓練困難として中断となってしまった。

パラシュート降下、余程の事が無いとそんな事態にはならないが、いざという時の為の必須実習項目である。

実際に降下する前に、マットを使って飛び降り訓練をするのだが、そこで恐怖で体がすくむと変な姿勢で落ちてしまう。

低い場所だったので大した怪我ではないが、それでも必須項目の第一段階で怪我だと、日程が詰まっている以上辞退して貰う他ない。

この辺は規約に書いてある。

バックアップクルーもいればその人に交代というやり方もあったのだが、今回はギリギリの人数で可能な限り多くの人数の訓練に入っている為、バックアップクルーはいない。

その番組は仕方なく脱落となった。


そして他の番組の、訓練を課されていないスタッフたちは、その様子を撮影し、取材をしたりしている。

「宇宙は簡単には行けない、厳しい環境なのだ!」

というのを視聴者に見せる、恰好の材料なのだ。

この辺、転んでもただは起きぬ人たちであった。

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