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ごり押し、飛び込み、裏口申し込み

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

秋山たちは、例え一週間程度の宇宙滞在でも健康や精神に危険がある人は拒否すると、報道陣を宇宙に送ろうとしたマスコミ各社に返答した。

結果、3人しか訓練に進めない事も。

だが、この程度で諦めるようなら、世間に嫌われる程の存在にはならない。


「えーーっと、これ、スパムメール?」

「いいえ、またテレビ局から候補者が送られて来たものです」

どうも、落とされたのに対し、ムキになったのか大量に履歴書が送られて来ていた。

若手のADやカメラマンばかり……。


さらに

「広報の方に問い合わせが大量に来ているそうです」

「問い合わせというより、強引な押し込みというべきか」

「選考が厳し過ぎるという意見も……」


自分たちの気に食わないから、基準の方を変えろと言って来ている。

これは流石に受け入れられない。

NASAと協議して決めた基準でもある。

この辺の要望は無視し、とりあえず送られて来た履歴書の再審査は行う事にした。

「また健康診断の結果取り寄せするんですね?」

「いや、今回は添付して来た」

マスコミ各社も、行きたいと言った割と偉い方の人や、こき使って疲れているのではダメだと気付いたのだろう。

今回は比較的健康な人を推薦して来たようだ。

「最初からそうしていれば問題無かったのに……」


泣き落としに来た者もいる。

「彼は相棒なんです。

 一緒に宇宙でロケをしたいんです」

このカメラマン兼ディレクターが落選した理由は、年齢の問題があった。

まあかつて老教授を宇宙に送った事からすればセーフではあるが、

「でも、基本は余り高齢者は打ち上げたくない。

 年齢に比例してリスクも増えていくから」

それが本音であった。

だが、高齢だから拒否というのには、割と多くから反発が寄せられた。

強く言って来る者も居たが、多くは

「年だから行けないって、それは無いですよ……。

 この年になるまで、機会そのものが無かったんですよ。

 せめて訓練を受けるチャンスくらい下さい、お願いです」

という哀願であった。


「割と人気のバラエティー番組のスタッフは年配の人が多いようです」

「タレントも結構年齢行ってますね」

「大御所と言われる人たちを惰性で使ってい……」

「おっと、それ以上は言っちゃいけないよ」

「まあ、若造が知ったかして喋っているより、

 ある程度経験積んだ四十代、五十代のタレントが体張っている方が面白いのもありますね」

「ああ、あのアイドルとか俳優とかですね、分かります」

「それって、最近の若手が面白くな……」

「おおっと、それ以上は言っちゃいけませんぜ」

「……君ら、案外バラエティー番組見てるんだな」

周囲の意外な知識の多さに呆れる、時代劇専門チャンネル党の秋山であった。


更にJAXAには迷惑な客も押し寄せる。

「はい、有人宇宙船部門……、ああ、はい、適当にあしらって下さい」

「電話、どこから?」

「種子島宇宙センター」

「何か重要な用?」

「いえ、なんかテレビクルーが突撃して来て、訓練を受けさせて欲しいと言って来たそうです。

 種子島はもう訓練済みの人が行く場所なのに……」

ジェミニ改は種子島から打ち上げられる為、ここで宇宙飛行士を訓練していると思われる事も多い。

しかし……

「そこではない事くらい、ちょっと調べれば分かる筈なのに……」

「いやいや秋山さん、最近のテレビ局は裏を取らな……」

「さっきから禁止ワードが飛び交ってますねえ」

「いや、別に禁止ワードではないと思いますけど。

 言論の自由ってものが有りますから」

「うん、そうなんだけどね、近くにマスコミ関係者が居る中で変な事言うと、

 どんなネガティブキャンペーン貼られるか分かったもんじゃないので」

短期滞在でテレビ関係者が宇宙に行けるとなって以降、取材と称して出入りする数が増えている。

特に一次選考で訓練に入れる人が属する会社からは、密着取材を行う前の下準備でアシスタント・ディレクターや制作会社スタッフが頻繁にやって来る。

打ち合わせならリモートで良いが、密着取材の為に泊まり込んだりする場所の確認などで、人が直にやって来ていた。


そして裏技を使った者たちもいた。

与党政治家先生からメールが入る。

『〇〇君に頼まれたので、このメールを書いている。

 確かに健康上の不安というのは理解が出来ます。

 ただ、彼の場合軽度であり、病院から問題無いという診断書も得ています。

 だから、再審査をお願いしたい。

 それでも落選であったり、訓練での落選ならばもう仕方ありません。

 兎に角、私の顔を立てると思って、もう一回やって貰えませんかね』


「これ、断れませんよね」

「この先生、科学技術部会でしたよね」

「事実上、書類選考は封じられましたな。

 訓練までは進む事になります」

「書類選考って、こういう横やりには弱いとこありますからねえ」

「でも、訓練で落とせば良いのでしょう?

 まあ、合格の可能性もありますが、この人体力無さそうですよ」

「いや、彼等にしたら訓練まで行けたら勝ちなんですよ。

 常人は中々体験出来ない事ですからね。

 こう所内にマスコミ関係者が多く出入りしているのは、

 ここまでは誰でも来られるからです。

 宇宙に行けるのは限られた人。

 確かに映像としては良いのが出来るかもしれませんが、

 スタッフのほとんどは地上に留まるから仕事としては詰まらないのでしょうね。

 訓練で七転八倒している姿を撮影し、面白く仕上げる方がテレビとしては良いのでしょう」


 宇宙に行けなくても、訓練までは何とかなる。

 そこまで撮れたら番組は作れる。

 書類選考で撥ねられたら、番組は作れない。

 視聴率を取れる番組の為、かくも必死になるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 横槍に慣れている財〇省なら「おっと、ウッカリ」と言ってメールや嘆願書がマスコミが駄目ならネットに漏れたとやるんだがJAXAはまだ純情
[一言]  質問。  物凄く健康、ただし足が臭い、凶器並み。  こーゆー場合はどうなるのでしょう?  ↑いえ、決して私の事では有りませぬ。  足は普通に匂って、体臭は華麗臭^^;  年で身体はあちこ…
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