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魔装御前  作者: 快速丸
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 伊達の両親は空港にいた。空港自体に人はたくさんいるのだが、ビジネスジェット(自家用ジェット機)に乗る伊達家の二人には、特別な待合室と、搭乗口を用意されており、混雑とは無縁だった。

 待合室には、三人座れる黒いソファが二つ向かい合って置いてあり、その間に、高級感漂う木製のテーブルがあった。

 しかし、伊達家の二人は、そのソファに座ったことはほとんどない。空港に到着すると、すぐにコンシェルジュが来て、手続きをし、飛行機に案内される。

(予定より早く空港に到着しない限りは、空港内にいる時間は、十分あるかないかぐらいだ。たとえ、時間に遅れたとしても、飛行機だけ出発するなんてことは無い。ビジネスジェットはお客さまが来るまで、ずっと待ち続けるのだ)

 飛行機は一四人乗りの小型のジェット機だ。普通のジャンボジェットを小さくした上で、先っぽをとんがらせた形をしている。中は、外から見たよりは広く感じ、伊達父がギリギリ屈まずに歩けるぐらいの天井の高さだ。


 午後一三時、伊達の両親は、オーストラリア発、韓国行きの飛行機に乗り込み、出発した。


 黒菜はそれを、マホーンの遠隔撮影機能で見ていた。飛行機が飛び上がり、安定したところで、伊達母はスマホを取り出し、伊達父はノートパソコンを開いた。

 そこまで見ると、黒菜は遠隔撮影をやめた。


「ゴエモン、飛行機はあとどのくらいで日本の上空に来るかな?」

「あの飛行機の性能なら、八時間ってところだ」日本は今、一〇時である。

「十八時くらいになるね。待ってる間どうしようかな?」

「いつもは何をしてるんだ?」

「いつもの休み?」黒菜は先週のことを思い出した。先週といえば、まだ魔法が手に入っていない時だった。「ゲームかな……」


 黒菜は、先週やっていたゲームをやってみることにした。机の端に追いやったノートパソコンを中心に引き寄せ、電源を入れる。ちなみに、黒菜はパジャマのままである。


 結果から言うと、対して面白く感じなかった。いじめられている時も、学校への不安が頭をよぎり、ゲームを楽しめなかったが、今回は、違う理由で楽しめなかった。

 昨日、空を飛んだのが、楽しすぎたのである。パソコンにつなげたコントローラーを操作しながら、黒菜は空を飛んだ事を思い出していた。

 視界に広がる風景、風邪を切る音、新幹線をも追い越すスピード。全てが感動の対象だった。

 黒菜はパソコンを閉じ、立ち上がった。そして、マホーンを手に取った。


「お? どうした黒菜?」

「やっぱり飛びたい!」黒菜はそう言うと、マホーンを操作し、ドクロ御前のコスプレに変身した。

「おお、よほど空を飛ぶのが気に入ったようだな。その格好でいいのか?」

「正直どうでもいい!」


 ドクロの仮面をつけた黒菜は、ゴエモンに笑顔を向け、窓から飛び出した。

 ゴエモンは「やれやれ」と言いながら、あとを追いかけた。


 黒菜は日本中を飛び回った。飽きもせず、高層ビルの住民を驚かし、自衛隊のブルーインパルスの訓練に参加し(操縦士が驚き、事故りそうになった)、ジャンボジェットの羽の上で、テイクアウトしたマックのハンバーガーを食べた(客に写真を撮られまくり、後日ツイッターに投稿されたのを確認した)。

 しばらく飛び回っていると、昨日遅くまで起きていたのが災いしたのか、三時くらいに眠くなってきた。黒菜はテレポートで家に帰り、少し昼寝をすることにした。


「帰りたくなったら、すぐ家に帰れるって最高だね。限界まで遠出できるもん」黒菜が返信をとくと、

「限界はまだまだ先だけどな!」


 ゴエモンの言葉に、黒菜は笑顔で返事をした。


「伊達の親が、日本に近づいたら起こしてね」

「おっけーグー○ル!」ゴエモンは手を挙げ、答えた。


 黒菜は眠りに吸い込まれた。


 空が赤くなり始めた頃、黒菜は異音で目を覚ました。耳元で空気が漏れるような音がしている。黒菜はその音の方向に顔を向けた。

 ゴエモンが尻をこちらに向け「ブッブッ」と屁をこいていたのだ。なんの香りもしない空気が、黒菜の顔にかかった。

 黒菜はゴエモンの尻に思いっきりパンチを食らわせた。ゴエモンは壁まで吹っ飛び、跳ね返った勢いで、床にはずみ、そのままベッドまで戻ってきた。


「気持ち悪い起こし方しないでよ!」

「目ぇ覚めただろ?」ゴエモンは腕を組んで、自分のアイデアにうっとりしている。

「臭……くはないけど……ああ、もう!」


 黒菜は怒声を挙げながら、マホーンで時間を確認した。5時ちょうどだ。


「よーし、伊達の両親が日本の上空に来る頃だね……伊達はどこにいるかな?」


 黒菜はそう言うと、伊達を遠隔撮影した。ちょうど部活が終わり、家に帰る頃のようだ。

 部活中に魔法をかけて、伊達に恥をかかせる作戦も、ある程度は考えていた。しかし、今はそんなことより、いじめの復讐に決着をつけたかった。さっさと前に進みたかった。

 伊達にエネルギーを費やしている時間がもったいないのだ。


「予定通りだ……今日で決着をつけてやる」黒菜の瞳が燃え上がった。


 黒菜は伊達の両親が乗った飛行機の位置を確認するべく、マホーンのマップを表示した。マップに『伊達の両親』と入力すると、その位置が表示される。ちょうど日本の上空に差し掛かった所だ。

 黒菜はドクロ御前のコスプレに変身した。


「ん? 飛ぶのか?」

「うん、ちゃんとこの目で確認したいから」

「単純に飛びたいってのもあるんだろ?」

「まあね」

 

 黒菜はそう言うと、窓を開け、外に出た。屋根の上で浮遊しながら窓を閉じ、魔法で鍵を閉めた。


「では、出発!」


 黒菜は猛スピードで空へ舞い上がった。自分の町が、手の平で覆えるくらい小さくなった所で停止した。

 空はもう暗くなっており、青白い明かりが地平線の向こうから漏れている。町はポツポツと明かりがつき始めていた。もう十分も経てば、地上は星の海になるだろう。

 黒菜は、地平線を一瞥し、マホーンで方向を確認した。そして、自分の向きを目標にむける。

 一気に加速。スピードが上がると、黒菜の周りに、球形のバリアが張られる。さらにスピードが上がると、徐々にそのバリアは平べったくなっていき、進行方向に向かって尖っていくのだった。そして、尖ったバリアの先に空気の壁がはっきりと目に見えるようになる。バリアの先に空気でできた傘がひっかかっているようだ。

 音速の壁である。その壁を貫くと、轟音とともに空気の傘は弾け飛び、一気に静かになる。黒菜に届く音は、バリアが風を切る音と、自分の服が風になびく音だけだ(バリアは、重力や、風、慣性を、黒菜が心地よいと感じる程度にしか通さないのだ)。

 ゴエモンも黒菜の横についている。

 黒菜はそれを見ると、さっき屁で起こされたのを思い出した。


「ゴエモンってさ、屁の勢いで飛んでるの?」

「んなわけあるか、魔法だよ魔法」

「屁の勢いで飛んでたら面白いのに!」

「はっはっは! もしそうだとしたら、お前はさっきの屁で吹っ飛ばされていただろうな!」


 黒菜はゴエモンの屁で吹っ飛ばされる自分を想像した。音速を可能とする推進力を持つ屁なら、ベッドごと吹き飛ばせるだろう。ぬいぐるみの屁でひっくり返されるベッド、笑える。


「ふひひ……あーあ、伊達にそんな屁をさせてみたかったなーー」

「やればいいだろ?」

「復讐は今日で終わりにするの!」黒菜は笑顔になった。ドクロの仮面のせいで、目の表情はわからない。しかし、口はニッコリと、ゴエモンが今まで見たことないほどの笑顔を作っていた。


 (空をいく)道中、飛行機を何機か見かけた。黒菜はその度、マホーンで伊達の両親の飛行機かどうかをチェックした。

 ゴエモンに「おい、伊達の両親の飛行機は小型ジェットだぜ? あれはジャンボジェットだ」と言われたが、黒菜は遠くから見ているのと、機体の形を覚えていなかったのもあり、判断をゴエモンに委ねることにした。


 ついにマホーンが『目的人物周辺です。おつかれ様でした』と口にした。ゴエモンの出番はなかった。


 その時、黒菜は真下に小型ジェットを捉えていた。ジェット機のトロいスピードに合わせ黒菜はゆっくりと近づいていった。

 エンジンに吸い込まれる心配はない。魔法のバリアが、黒菜の邪魔をする気流をシャットアウトするからだ。しかし、黒菜はエンジンの知識などないため、気にせず飛行機に近づいた。ゴエモンも聞かれないし、問題にはならないため、そのことは黙っていた。


 黒菜はジェット機に体を預け、逆さまになって、目だけで窓をのぞいた。


 機内では、伊達父が、飽きもせずノートパソコンを広げていた。しかし、仕事に区切りがついたのか、伊達母が持ってきたワインに口をつけ、パソコンを閉じた。二人ともスーツ姿だ。

 そこへCAが食べ物を運んできた。ワインのつまみだろうか? 黒菜が見たことのないへんなフルーツ(オリーブ)に爪楊枝が刺さっているものだ。伊達の両親は、そのおつまみに舌鼓を打ち、ワインとの相性を絶賛していた。CAも嬉しそうに笑っている。

 その時、伊達父がなんとなしに窓を見た。


 窓にドクロらしきものの目が見え、そこから、黒髪がバサバサとなびいている。


「うわぁぁぁぁぁ!」伊達父はひっくり返り、ちょうど真後ろの椅子にダイブした。ワインは壁にぶちまけられたが、それでもグラスは離していない。

「ちょっと、どうしたのあなた?」伊達母は伊達父に注目し、その視線の先には目もくれない。


 伊達父は震える手で窓を指差し「そ、外に幽霊が!」と叫んだ。伊達とCAは窓を見るがそこには何も無い。月に照らされた雲海があるだけだった。伊達母はため息をつき、よくあるセリフを吐いた。


「あなた、疲れてるのよ……」疲れているのは確かである。


 黒菜は伊達父と目があった瞬間、反射的にジェット機上部に隠れていた。そこにいわゆる女の子座りをし、手をついて「危なかったー」とため息をついた。

 しかし、伊達父の驚く顔を見て、面白くなったのか、笑い声を漏らした。


「いいこと思いついちゃった」黒菜はそういうと、マホーンをポケットから取り出した。


 黒菜は、取り寄せ魔法で、自宅からハンドクリームを取り寄せた。黒菜の目の前にハンドクリームが現れる。黒菜は手袋を脱ぎ、それを置くと、ハンドクリームを過剰なほど手に塗り始めた。


「上空は乾燥するからな……ってわけじゃなさそうだな。何をするつもりだ?」ゴエモンが黒菜の顔を覗き込む。

「ふふふ……見てればわかるよ」黒菜の顔が、月明かりに照らされ、その笑顔を不気味に染めた。


 黒菜はジェット機を這い降り、また窓から中を覗き込んだ。伊達父は椅子に座ったまま、代わりのワインをもらっていた。落ち着きを取り戻そうとしているのだ。


「ちょっと寝たら?」

「ああ、そうするよ。これを飲んだらね……」伊達父は目を泳がせながら、ワインの入ったグラスをくるくると回した。その時……


 バンッ!


 窓を叩く音がした。機内の人間が一斉に音の方を向く。その窓には、はっきりと手形がついていた。

 伊達母は、その手形を凝視しながら、窓に近づいていった。見間違いであることを祈っているかのようだ。

 窓のそばまで来ると、ゆっくりと身をかがませ、窓に指を当てた。手形をなぞる。しかし、手形に変化はない。


「この手形……外にあるわ……」


 伊達父は背筋に悪寒が走り、弾けるように立ち上がった。CAはハッと息を飲み、声を出さないよう口に手を当てた。

 伊達母は、手形を見ながら、ゆっくりと後ずさった。


 バンッ! バンッ! ババンッ!


 反対側から連続で窓を叩く音がした。機内の全員が音の方を向いた。

 この時黒菜は、変身能力を駆使し、透明になっていた。音ともに、窓に手型が付いていく。手形をつけている本人は見えない。

 窓に正体不明の手形がつきまくり、機内はパニックになった。伊達の両親は抱き合い、CAは叫びながら、運転席のドアを叩きまくる。そのCAのとなりの窓に、もふっと音を立て、猫型の跡がついた。

 ゴエモンも、全身にハンドクリームを塗りたくり、体全体で窓に体当たりしたのだ。猫型が窓に張り付いただけで、全くホラー感がないのだが、CAはこれにもびびった。


 機内が叫び声でいっぱいになり、黒菜は満足したのか「このくらいでいいや」と、ジェット機の上部に戻った。ドクロ御前のコスプレ姿に戻り、服で手を拭いてから、マホーンをいじり始めた。(手形をつけたことが、あとで地獄を呼ぶのだが、黒菜はそれを知る由もない)


「機械を操る魔法っと……」


 そこにゴエモンも戻ってきた。ハンドクリームのせいで、テカテカしていた。

 気持ち悪いのか? 体を手で拭き取り、その手を機体に擦り付ける。しまいには、体全体を機体でこすりつけ、ルンバのように機体上を滑った。ゴエモンが滑った後は、機体が潤っていた。


 黒菜はそれを笑いながら見ている。マホーンの操作はそろそろ完了だ。


「ゴエモン。いっくよー!」黒菜は手を振り上げた。


 その声に呼ばれ、ゴエモンは、黒菜に注目した。黒菜はそれを確認すると、手を振り下ろし、マホーンのボタンをタップした。


 その瞬間、右側のエンジンが爆発し、爆煙が黒菜の顔をオレンジ色に染めた。耳の奥が叩かれるような轟音が機内にも届いた。


「う、嘘でしょ?」伊達母は、窓から炎上するエンジンを見た。あまりのショックに、ふらふらし、後ろ側に倒れそうになった。伊達父はそれを受け止め、炎をにらんだ。

「どうなってる? 一体!」


 機内にアナウンスが流れる。パイロットの声だ。


『落ち着いてください。すぐに消化します』


 その声が聞こえてすぐに、エンジンは消化剤をふきだし、炎を消した。伊達父は伊達母を抱きとめながらそれを見て、ため息をついた。

 またアナウンスが流れる。


『ご安心ください。片方のエンジンが残っていれば、充分航行が可能です。このまま韓国に行くことも可能ですが、大事をとって最寄りの空港に行くことをお勧めしますが。よろしいでしょうか?』


 伊達父は、妻を椅子に座らせながら、CAに向かってうなづいた。CAは運転席に行き、パイロットに伊達父の意を伝えた。

 パイロットは最寄りの空港へ舵を切ろうとした。しかし、いくら舵を切っても反応がない。


「なぜだ? 羽には損傷がないはずなのに……」パイロットは計器を確認し、そこらじゅうのスイッチをいじり始めた。しかし、何も変化がない。


 黒菜が飛行機を操作していたのだ。魔法がパイロットから操縦権を奪っていた。

 飛行機はパイロットの意に反し、旋回を始め、やがてまっすぐ飛び始めた。パイロットは不自然さを感じながらも、操縦しようと努力を続けた。

 

 パイロットが『舵が効かない』事を伊達の両親に告げ「不時着も覚悟してください(墜落と言わないところがミソ)」とアナウンスで告げたのだ。

 伊達の両親は、隣り合ってソファに座り、緊張した面持ちで天井を仰いでいた。CAはそんな二人に、何か飲み物はいらないかと尋ねた。


「人生最後の飲み物になるかもな……」伊達父は言った。

「そうね……ココアはあるかしら?」伊達母は、青白い顔で言った。

「ココア?」伊達父は妻の顔を見た。

「落ち着くでしょ? 落ち着かない? ココア……」伊達母は辛そうな笑みを浮かべ、夫の顔を見た。


 伊達父は、うなづきながら、自分もココアを頼んだ。CAは笑顔で了解し、ココアを作り始めた。

 CAが持ってきたココアを受け取った伊達夫妻は、それを一口飲むと、ホッと一息ついた。ドロリとしてコクのある、苦味と甘味のバランスが良い味だった。


「ああ……確かに落ち着く味だな」伊達父は笑顔を取り戻した。

「うん、そうでしょ?」伊達母はそう言いながら、窓についた手形を不安そうに見回した。「お化けの仕業かしら?」

「おばけ? そんなの、いるわけない……」伊達父は自信なさげに言う。


 黒菜は、ジェット機の上部に青むけに寝転んで、二人の会話の様子をマホーンで見ていた(ゴエモンを枕にしている)。

 伊達の両親がどう言う人間なのか、そして、金持ちは、緊急事態にどう言う行動をとるのか、それが興味深かったのだ。

 それと同時に、ココアの味も気になっていた。なぜなら、CAはココアを作る時、黒菜が見たことのない作り方をしていたからだ。

 ネッチョリした泥のようなものを練りこみ、それにミルクを入れていた。最初は何を作っていたのかわからなかった。


「金持ちはココアの作り方も違うんだね……」

「一応言っとくが、あのココアはお前の小遣いでも買える値段だぞ。普通よりは高いけどな」ゴエモンが黒菜の頭の下から声を出した。

「へぇー、帰ったら買ってみようかな……」


 黒菜はそこまで言うと、伊達夫妻の会話に意識を奪われた。伊達母が、気になる単語を口にしたからだ。


「確か、超常現象に詳しい子いたわよね? 麻紀と友達の……」伊達母が夫の顔を見ながら言った。

「いたっけ? 麻紀の友達はどうも……」伊達父は首をかしげる。

「ほら、異業種交流会で会った小さい子! 確か、そう……桜木さん!」


 黒菜はここから、伊達夫妻の会話に釘付けになったのだ。黒菜にとって、『桜木』という名前は『嫌な予感』の代名詞になっていた。


「桜木……ああ、あの小さい子か……」

「そう、あの小さい子」


 二人揃って小さい子と言っている。そんなに小さいのだろうか?


「あの子がどうかしたのか? 交流会では、麻紀と仲良く話していたが、友達になっていたのは知らなかったな……」仕事で忙しい父の宿命である。

「桜木さん、超常現象を再現するとか、幽霊を捕まえるとか言ってたのよ? この窓の手形も、飛行機が爆発した理由もわかるかもしれないわよ?」

「飛行機じゃなくて、飛行機のエンジンが爆発したんだぞ。しかし、わかったからと言って……」

「私もおかしい子かなって思ったんだけど……」

「いや、私はおかしい子だとは思ってないぞ? 普通にやんちゃな子だとは思ったが……」伊達父が口を挟んだ。伊達母は、失言を咳でごまかし、続けた。

「桜木さん『ウィンチェスター屋敷の幽霊を捕まえたよー』とか言って、おかしな機械をうちに持ってきたのよ? 麻紀と私に見せたいって言って……それで、機械を操作して、何かと思ったら『幽霊を解放したよ』って言うのよ」

「ははは……」伊達父は笑い話としてしか聞いていない。

「最初は何もなかったんだけど、桜木さんが『幽霊はあっちに行ったよー』って、キッチンの方を指差したの」伊達母は、自分も指を指し、身振り手振りを加え話をヒートアップさせた。

「私も桜木さんをおかしいと思い始めたよ」伊達父は笑っている。

「そしたら、キッチンの方から叫び声が聞こえたの……」


 伊達父は笑顔を真顔に切り替え、妻の顔を見た。


「急いで行ってみたら、シェーン(シェフの名前)が、泣きながら自分の腕をナイフで刻んでたの! 桜木さんが、また機械を操作すると、シェーンは気絶したわ……」

「……あ、シェーンが辞めたのって……」伊達父は息のつまった声を出した。

「そう、腕の怪我が原因。怪我自体は大したことなかったんだけど、『怖すぎて、うちにはもういられない』って言ったの。魚をさばいていた時に、突然体の自由が効かなくなって、誰かに操られているような感じがしたって言ってたわ」


 伊達父は言葉が出ない。


「……それで、桜木さんは? どうしたんだ?」伊達父はやっと言葉をひねり出した。

「笑っていたわ……『すごいでしょ?』って……。その機械を、建築業者とか、ホラー映画を作る会社みたいな……幽霊にこまってそうな人たちに売りたいから手伝ってくれって言われたけど」

「けど?」

「心当たりが無いって断りました」

「賢明な判断だ」伊達父は、妻に向けていた顔を真正面に戻し、ため息をついた。しかし、少し考えてから、また妻に顔を向けた。「麻紀とはまだ仲がいいのか?」

「ええ、桜木さんはちょっとおかしいけど、まともな発明もするから、麻紀はそれをいくらか試させてもらってるみたい。この前なんか、髪を一瞬でロールする機械とか、一瞬で三つ編みにする機械とか、しかも髪は痛まないとか……」

「ああ、髪をロールし始めたのは桜木さんの影響か……」


「なにその機械、欲しいんだけど……」ジェット機の外で、黒菜がつぶやいた。

「そんな機械に頼らずとも、魔法でできるぜ!」ゴエモンが黒菜の頭の下から声を出した。

「そうなんだ。ああ、髪も伸ばせるくらいだしね……」黒菜は自殺しようとした夜を思い出した。


 桜木に関する伊達夫妻の会話はまだ続いていた。


「それで、思ったんだけど……もしかしたら……もしかしたらだけど、今の状況も、ちょ、超常現象かなって……」伊達母は、自分がおかしくなっていると思われないように、注意深く言葉を出した。

 伊達父は、窓についた手形を見つめた。そして、自分に一番近い窓の手形をなぞってみた。やはり、手形は外にある。


「連絡してみるか……。電話番号は知ってるのか?」伊達父はゆっくりと妻に顔を向けた。

「ええ」


 黒菜は起き上がった。『桜木に連絡」それだけはして欲しくなかった。マホーンをかじりつくように見つめ、黒菜は言った。


「通信妨害魔法! 伊達の父と母のスマホ! じゃなくて、機内の機械全部!」黒菜は慌てて言った。

「桜木とか言うやつにビビり過ぎだろ。魔法に勝てるわけないのに……」ゴエモンは枕をやめ、立ち上がった。

「なんとなく嫌なの!」


 伊達母はスマホで電話をかけた。しかし、電波は届かないようだ。


「繋がらないわ……」

「機内の電話を借りてみるか?」

「そうね……」


 伊達夫妻は立ち上がり、CAに事情を説明した。CAは「どうぞ」と、壁際のテーブルに置いてある衛星電話に、夫妻を案内した。衛星電話の見た目は、普通の据え置きと変わらない。

 しかし、それも繋がらなかった。伊達母は首を傾げた。「普通は繋がるはずなんだけど……」

 その後も、何度か自分のスマホや衛星電話で試したが、繋がる事はなかった。


「当然だ。魔法で遮っているんだからな」ゴエモンが、マホーンを覗き込みながら言った。

「ああ、よかった」黒菜は空を見上げ、ため息をついた。


 伊達夫妻が通信を諦め、ソファに座って、しばらく経つと、飛行機は福島県上空についた。黒菜はそれを確かめると「そろそろやるぞー」と声をあげた。


「まずは、伊達の位置を確かめないと……」


 黒菜は、遠隔撮影を駆使し、伊達の様子を見た。伊達は自宅にいるようだ。珍しくベッドに潜り込み、布団で体を覆い隠していた。足だけ出ている。なにをしているのかはわからない。


「寝てるのかな?」

「なんだろうな? あいつは寝るときちゃんと枕を敷いて寝るやつだと思っていたが」ゴエモンが首を傾げた。

「まあいいや! 伊達が自分の家にいるってことが重要だから!」

「そうなのか?」

「そうなの!」黒菜は、ふふふと悪い笑みを浮かべた。


 黒菜は立ち上がり、飛行機の進行方向を見ながら、マホーンを操作した。飛行機が急降下を始める。


「ついでに不安を煽ってあげよう。左エンジン爆破!」


 黒菜が言うと、残りのエンジンが爆発した。


 外からの轟音に、伊達夫妻は目を向けた。炎により、伊達夫妻の顔が照らされる。二人は顔のパーツ全てが開けっぴろげになった。振動でココアがこぼれ、伊達母のズボンにシミをつけた。


「エンジンが……」伊達父の声が漏れた。


『この機は墜落します。シートベルトを締めてください』機内にアナウンスが流れる。エンジンから消化剤が噴出し、炎は消えたが、飛行機は一気に傾いた。

 ジェット機は、ガタガタと揺れながら、降下していく。機内のあらゆるものが滑り台になり、テーブルからノートパソコンが滑り落ちた。伊達父は「ああ!」と声をだし、手を伸ばしたが、パソコンが床に落ちる方が早かった。パソコンは液晶が割れ、キーボードを撒き散らした。

 伊達夫妻は、慌ててソファーから座席に移動し、シートベルトを締めた。CAも席に座りシートベルトを締めた。テーブルに置いてあったポットが落ち、CAの足を直撃した。「ファ◯ク!」CAの声だ。


 パイロットは、なんとか福島空港に連絡出来ないか、不時着出来ないかを何度も試したが、飛行機は全く反応を示さなかった。パイロットは、自分の無力さに苛立ち、叫んだ。「ファッ◯!」


 ジェット機の上に乗る黒菜は、エンジンの炎に照らされながら、笑顔で進行方向を見つめていた。福島は田舎なので、小型ジェット機が着陸できる場所はいくらでもある。田んぼでもいいし、通りのすくない広い道路、市場、遊園地、イオンモールのような複合施設の駐車場でもいい。

 しかし、黒菜は着陸(墜落)させる場所を決めていた。そこも、広い土地があり、周辺に被害を与えることがない。まさに、飛行機を墜落させるためにある土地だ。


 一方、伊達は、まだ布団の中にいた。布団の中で、スマホを見ていたのだ。なぜそんなことをしているかと言うと、桜木からこんなラインが来たからだ。


桜木『盗聴か、盗撮されている可能性があるから、布団とかに隠れて、ラインで会話しよう』


 伊達は、そのメッセージを訝しげに思いながらも、桜木の言うことなのだから、何か訳があるのだろうと、言う通りにしたのだ。

 伊達はそれから、布団に包まれた闇の中で、スマホを操作した。スマホの明かりが、布団と伊達の顔を照らしている。うつ伏せでスマホを操作するのは結構、顎と首に負担がかかった。


桜木『あ、そうそう。前、送ってもらった、監視カメラの映像、再生できなかったし、なんか連絡付かなかったから、伊達のスマホにハッキングして勝手にもらったから』

伊達『再生できませんでしたの? 申し訳ありません』


 ハッキングで、データを盗んだことに驚かないところが、桜木に慣れているという事なのだ。


桜木『それでさ、この黒沢ってやつなんだけど。カメラの位置を、登校して早々確認してるんだよ』

伊達『マジですの?』

桜木『うん。明らかに確認してるよ。前方に設置した奴は、あからさまに確認してるし、天井のは腰を伸ばしてるフリして確認してる。私の目はごまかせないよ』

伊達『どうやってカメラの場所を知ったんですの?』

桜木『知らないよ。でも、映像を分析すると、伊達が変になった時は必ず何か言ってるんだ。読唇術でわかった』

伊達『なにを言ってるんですの?』


 桜木の返信は早い、伊達より長い文章を、伊達の半分以下の時間で送ってくる。


桜木『聞いて驚け』今回は短かった。

伊達『内容によりますわ』

桜木『「幻覚魔法開始」とかだよ』


「魔法⁈」伊達は思わず声を上げた。周りに誰もいないか、一度、布団をめくり部屋の中を見回した。誰もいないことを確認すると、また布団の中に潜った。


伊達『魔法ってどう言うことですの?』

桜木『驚いた? (笑顔マーク)。他にも「弱体化魔法開始」とか言ってたし、色々種類があるんじゃない? 面白いよねー』


「面白いって、こっちは大変ですのよーっと……」伊達が次のラインを送る前に桜木のラインは届いた。


桜木『他にも、誰もいないのに独り言を喋ってることもあるんだ。幽霊と会話してるみたいにね。どう? 面白いでしょ?』

伊達『あなたの好きそうな話ですわね』

桜木『この会話も、監視されている可能性があるから、作戦は詳しくは言わないけど、その黒沢ってやつを直に観察したい。そっち行くわ。というか、向かってる。今飛行機の中だよ(飛行機マーク)』

伊達『もう日本に向かってますの?』

桜木『向かってますのよ(ピースサイン)』

伊達『では、お待ちしてますわ』

桜木『お土産あるからたのしみにしててね』


 二人はお休みマークを送り合った。伊達は、魔法という言葉に不安を覚えながらも、桜木が来ることを楽しみにしていた。

 桜木は、伊達が金持ちだと言うことを気にしない、唯一の友だちだ。他の友人と違い、ズケズケとモノを言う桜木は、伊達の癒しになっていた。何だかんだ言って、伊達は寂しかったのだ。


 伊達は桜木の『監視されているかもしれない』と言う言葉に、少し怯えていた。

 布団から出ると、部屋中を見回し、監視カメラがないかチェックし、盗聴されていないか、コンセントを分解してみようかとも思った。しかし、伊達はそれに関しては素人だ。

 桜木が来れば、すぐに解決してくれる。そう思い、深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。それでも落ち着かないため、ラインで執事にお茶を要求した(すぐに了解の返事が帰ってきた)。

 待っている間、伊達は戸を開け、バルコニーに出た。夜風がカーテンをなびかせる。布団の中で火照った伊達は、冷たい風が自分を冷やすのを心地よく感じた。

 その風を頭にも当てたくなり、伊達は髪を止めていたゴムを外し、手でわさわさとかき混ぜた。少し心地よくなり、月に向かって、小さくため息をついた。月は少しだけかけていて、もう少しで満月かと、伊達に思わせた(実は満月から数日経った後)。

 月を眺めてからしばらくすると、執事が部屋に、茶器の乗ったワゴンを持ってきた。執事はバルコニーの手前までワゴンを押し、言った。


「そろそろ就寝のお時間かと思い、ノンカフェインのルイボスティーをお持ちしました」しかもオーガニックだ。


 執事がその場で、カップにルイボスティーを淹れた。伊達は、お礼を言いながら、それを受け取り、ルイボスティーが入ったカップとソーサーをもち、再度、月を見上げた。


「高田(執事の名)、お父様とお母様は今、移動中なのよね?」伊達は月から目を離さない。

「はい、ビジネスジェットで韓国に向かっているところです。お電話をつなぎましょうか?」

「いいわ、もう寝ている頃でしょうし、起きていたら、仕事をしていますもの」

「さようで……」執事は頭を下げた。


 伊達の見上げる月をバックに、飛行機のシルエットが見えた


「飛行機が飛んでますわね」

「そうですね」

「私の両親も、あのような飛行機に乗って、空を旅しているのよね……」伊達は感慨深そうに言い、ルイボスティーを一口飲んだ。

「そうですね。ご主人様の乗っている飛行機は、小型ジェット機です。ちょうどあのような飛行機になりますね」


 二人は、月にシルエットの映る飛行機を無言で見つめた。夜風がルイボスティーの湯気を流している。

 月を見つめる伊達は、あることに気づいた。飛行機は月を横切らず、その場にいる。そして、だんだんと、シルエットは大きくなっていくのだ。月が見えなくなるほどに……。


「高田。あの飛行機……こっちに飛んできてません?」

「そうですね。私も何か変だと思っていたのですが、こちらに近づいているようですね」


 飛行機は、シルエットどころか、その色、形もはっきりとわかるようになってきた。そして、伊達の目には、エンジンが故障しているのも見えた。

 伊達の両親は『あのような飛行機に乗っている』のではない。『あの飛行機』に乗っていたのだ。


「いくらなんでも近すぎますわ!」


 伊達がそう叫んだ時には、飛行機は目前まで迫っていた。


「お嬢様、逃げましょう!」執事は伊達の肩を引っ張った。部屋にひきづりこまれた伊達はルイボスティーの入ったカップを落とす。カップが床に落ち……


 飛行機は伊達めがけて突っ込んできた。


 鼻先を伊達の部屋に突っ込むと、続けて羽で壁を破壊した。そして、その勢いのまま、逃げ惑う伊達の背中に鼻先で体当たりした。伊達は「おっげぇぇぇぇ」とかいう人間とは思えない叫び声をあげ、飛行機の鼻先にくっついたまま、壁を貫いていった。

 執事は羽にあたまを打ち、その場にたたきふせられた。

 飛行機は轟音を立て、壁も床も削り取りながら進んだ。すさまじい慣性に、伊達は飛行機の鼻先にへばりついたままだ。

 柱にぶち当たった翼が折れ、その拍子に、飛行機は真ん中から折れた。裂かれた飛行機の後ろ半分が、方向を変え壁にぶつかる。そして、前半分は勢いをなくし、最後の勢いで壁を貫き、止まった。伊達はやっと飛行機の鼻先から落ち、自分の鼻先から床に落ちた(鼻が折れた)。

 伊達は意識を朦朧とさせながら、無意識に起き上がった。膝と手をつき、飛行機にケツを向けている。撒き散らされた壁の破片が、床中に転がっていた。伊達は床より高い場所にいた。ここはどこだろうと、手をついている場所を凝視すると、銀色でしかもぬるぬるしている事がわかった。伊達の鼻から落ちた鼻血が、銀色の床に落ち、ジュッと音を立てた。


 銀色の床は、鉄板だった。


 伊達は「あっつー!」と叫びながら、そこから転げ落ち、下にあった瓦礫に腰を強く打ち付け、嗚咽を漏らした。ここはキッチンだった。伊達家のキッチンは業務用で、レストランと同じ作りだ。

 腰を抑えながら顔を上げると、伊達の目線の先に、ガス栓があった。鉄板のガス栓は床につながっているが、そのガス栓は途中からちぎれており、そこから嫌な臭いがあふれ出ていた。

 背後からバチっと音がした。伊達はその音に顔を向けた。飛行機の操縦席底部に穴が開いており、そこから電線がぶら下がっている。


「お願い、爆発しないで……」


 爆発した。


 爆発は、豪邸の屋根を突き抜け、壁、柱、床、全てを吹っ飛ばし、瓦礫と化した。

 外と屋敷内に境界は無くなり、月明かりの下、伊達の手だけが、墓標のように、瓦礫から出ていた。


 しばらく経つと、爆風によって吹き飛ばされた火炎が、勢いを取り戻し、燃やせるものに取りついていった。

 伊達家は、石やレンガで出来ていたため、燃やせるものは少なかった。カーテンやカーペット、花や、絵画。炎は、少ない燃料で燃え広がろうとしたが、そこにスプリンクラーが作動し、炎はジュッと音を立て、消えた。

 天井が破壊された伊達の周りでは、スプリンクラーは作動しなかったが、瓦礫しか無いキッチンでは、炎の居場所はなかった。


 飛行機の先端は形を保っていた。パイロットは、気絶しており、シートベルトで固定されたままぐったりしていた。CAは、ひこうきの前半分におり、これも、シートベルトに固定されたまま気絶している。

 伊達夫妻は、飛行機が分断した時に、割れ目から外に投げ出されていた。

 何本もの大理石の柱が、根元から倒れており、その柱が重なり合う下に、伊達夫妻は転がっていた。ちょうど、柱の浮いた隙間にいるため、押しつぶされずに済んだようだ。


 黒菜は、その様子を上空から見ていた。月に背を照らされている。

 伊達家の豪邸が、半分以上えぐれていて、食べている最中のミルフィーユのようだと、黒菜は思った。


「任務完了! さて、救急車よんであげようかな?」黒菜はそういうと、マホーンを取り出した。

「その必要は無いぜ」ゴエモンが指を指す。


 ゴエモンの指差す先を見ると、サイレンを鳴らした消防車と、救急車が走っていた。森の間の道路を通り、伊達家の敷地内に入ってきた。


「なんだ。もう通報されてたのか」

「もしくは、自動で呼ばれたのかもな。スプリンクラーがあったし……」

「ゴエモン、本当に誰も死んでないよね?」黒菜はマホーンからゴエモンに視線を移した。

「もちろんだ。お前は未成年だから、どんな魔法を使っても人は殺せない。というか、死んでても誰もお前を逮捕できないぜ? 何がそんなに心配なんだ?」

「逮捕とかそういう問題じゃ無いの! それに、この後計画があるんだから!」


 ゴエモンは腕を組み「ふーん」と言う。


「じゃあ家に帰ろう。飛行機が突っ込むところ、遠隔撮影で録画しておいたから、もう一回見れるよ。今度は、家の中からの視点でだよ! 伊達がどんなふうに吹っ飛んだか見てみたいと思わない?」さっきまでは空からの視点だったのだ。

「興味はあるな」


 黒菜はゴエモンの返事を待たず、家に向かって飛び始めた。サイレンの音が遠ざかっていく。黒菜は一度、伊達の家の方を振り返った。森に囲まれた豪邸から煙が上がるのが見える。周りには全く被害がない。黒菜はそれを見て、ニヤリと笑い、スピードを上げた。


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