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引きこもりと雪少女  作者: 詩和翔太
3/5

学校に行かない理由

 それから、晴斗と六花は毎週金曜日の午後六時に例のコンビニで会うという約束をした。どうして金曜日なのか、六花に聞いたところ答えてはくれなかったが晴斗は了承した。別に、毎日暇なのだ。何曜日でも構わない。


 晴れの日だろうが、雨の日だろうが、雪の日だろうが、そんなものは関係ないと言わんばかりに二人は毎週金曜日に会った。まぁ、関係ないとは言っても雨、雪の日は例の公園ではなく近くのファミレスとかだったりするが。引き籠りな晴斗には注文をするだけでもかなりの苦行だったが、数をこなしている内に少しずつ慣れていた。人間やれば出来るんだなと実感した瞬間だった。


 外出の都度、母親と父親が晴斗が週一だけど引き籠らなくなった! と泣いて喜んでいるのだが、晴斗は見ないフリをした。まぁ、そうさせたのは晴斗のせいなので見ないフリは出来ないのだが……。でも、両親が泣いて喜んでたら現実逃避しちゃうのも無理はないと思う。誰だってそうすると思う。


 因みに、六花には晴斗が引き籠りだということは話していない。話した方がいいということはわかっている。だが、だが……、話した後が怖いのだ。だから、聞かれたら答えようと自分に言い聞かせている。ようは、逃げたのだ。ヘタレここに極まれり。


 そうして、二人が初めて会った日から三カ月くらいが経った。季節は冬から春へと移り変わろうとしていた。少しずつ暖かくなり始め、陽も昇っている時間が長くなってきていた。


 そんなとある日、二人は公園にいた。ベンチに座っている時の距離も、最初の頃に比べれば近くなっている……気がする。


 普段と同じように他愛もない会話をしていると、六花からある意味爆弾な質問をされた。


「そういえば晴斗君は部活とかやっていないんですか?」

「うっ……、ぶ、部活?」


 晴斗は何のこと? と白を切る。三カ月も会って話していれば自然と仲良くなっていくもので、敬語で話すこともなくなったし名前で呼ぶ関係になっていた。といっても、六花は晴斗君呼びだし、晴斗の方も六花さん呼びだけど。流石に、女の子の呼び捨ては無理です。世のリア充じゃないんです。


「はい、部活です」


 きっと、というか絶対、六花に悪気とかはない。ただの興味本位で聞いてきたのだろう。今までそういった学校に関係すること(、、、、、、、、、)を聞かれてこなかったために油断していたのだ。


 さて、どうして晴斗が学校に着いて聞かれるのが困るのか。既にお気付きだろうが、晴斗は引き籠りである。外に出ずに部屋でダラダラと過ごす毎日だったのだ。つまり、学校に行っていない(、、、、、、)のだ。勿論、六花には一度も言っていない。言いたくなかったし。だって、不登校ですなんて言えないじゃん!?


 しかし、学校について聞かれてしまった今、晴斗としては嘘を吐きたくない。嘘は嫌いだ。大っ嫌いだ。嫌いな理由はともかく、嘘は絶対に吐きたくない。


 晴斗は意を決した。もうどうにでもなれ! と、その時はその時だ! と。


「部活はやっていないんだ」

「えっと、帰宅部ってことですか?」

「ん~、そもそも学校行ってないんだよね」

「え……?」


 晴斗の学校行ってない宣言に、六花は疑問の声を上げる。まぁ、確かに学校行ってない言われれば誰だって少なからず驚くだろう。


「えっと、どうしてか聞いてもいいですか……?」

「……嫌になったんだよ。何もかもが……」


 晴斗は淡々と、学校に行かなくなった理由を六花に明かした。


 高校に入学して友達も出来ず少しずつ孤立していったこと。アニメやマンガ、ラノベ好きをよく思わない奴等からの悪質な嫌がらせを受けていたこと。幾度となく自らの命を絶とうと考え、実際に手をかけようとしたこと。それでも、学校へと行ったこと。他にも色々なことを六花に話した。


 そのすべてを、六花は静かに聞いてくれる。もしかしたら、晴斗の余りの情けなさに呆れているだけかもしれないが。


「晴斗君は、どうして学校に行ったんですか?」


 六花は優しい声音でそう言った。呆れている様子は微塵も感じられない。やっぱり優しいなと晴斗は笑みが零れる。気持ち悪くはなってないはずだ。


 さて、確かに六花の考えている通り、そんなに、苦しい目に、辛い目にあって、挙句の果てには自殺まで考えた原因がある学校へは行きたくないというのが普通である。それでも、晴斗が学校に行った理由。それは……。


「友達がいた、からかな?」

「友達、ですか……?」

「そう、友達。まぁ、結局は裏切られたんだけど……」

「え……?」


 晴斗の発言に、六花は驚愕といった表情をする。


 晴斗は昔のことを思い出すように遠くを見つめた。そして、優しい表情から苦痛に歪んだ表情へと変わる。


「もしかして、辛いことを思い出させてしまいましたか……?」

「あ、いや、気にしなくていいよ。もう一年以上も前のことだから」


 そうして、晴斗は深呼吸をし、心を落ち着けた後、その友達のことを話し始めた。

ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。

今回はいかがでしたでしょう。楽しんで……、と聞いたところで無理なんですよね。

色々と暗い話へと突入してしまっていますが、安心してください。次回の方が暗いです。

まぁ、キーワードに切ないって書かれてるしね? きっと切ないと思います。人によって考え違うからね。

此度もめげずに宣伝を。

『兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。』、『黒の死神と白の吸血姫』を連載しています。ぜひ、お読みください。読んでくれている方々、いつもありがとうございます。

さて、今回はこの辺で。

それでは次回お会いしましょう。ではまた。

さて、今回はこの辺で。

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