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現実


「そうだ。ここは病院じゃない。」


それは心の余裕がなくなり始めた俊哉にかけられた渋い声であった。無機質な声ではなく生の人の声であった。


俊哉が振り返るとそこには無精髭を生やした中年男性がいた。彼は明らかに日本人ではなく、ヨーロッパ系の男性だった。

そう思う俊哉にもヨーロッパの血は流れているのだが、自分とは異なり金髪で青い目をした彼の姿は純粋な外国人のようだった。


「まずベッドを起こさせてもらうよ。」

すると男は空を切るように手を動かし、それに連動するようにベッドが起き上がった。




「あまり見ない事故だったから監視対象にしてたんだが・・・、まさか記憶障害まで起きてるとはな・・・」

「すみません、よく分からないんですが、自分は交通事故に遭ったんじゃないんですか?」

俊哉には、男の発言の意味は全く分からなかったのだが、何か自分の身に起きた事を知っているだろうと感じた。



「うーむ・・・、そうだね。特にここは忙しいわけでもないし、ゆっくりと適切な説明をしてあげよう。だが、こっちも仕事中だし、話す情報量はかなり多いから、数回に分けて話に来るよ。それでいいかな?」

「ありがとうございます。」

すんなりと話が進むことから、俊哉のこの施設や男性のことを怪しむ気持ちは薄れていた。


「オッケー、まず私なんだが、君の担当を任せられたローガンだ。呼び方はなんでもいい。君が早く外に行けるよう最善を尽くそう。」

「はい。ローガンさん。」

差し伸べられた手を俊哉は強く握った。


「最初は根本的な話からさせてもらう。私から君に一つ質問だ。今日は何年何月何日かな?」

「2018年8月26日です。」

俊哉は既にAIから聞いていたため即答した。

ローガンは何か確信した顔をして俊哉を見た。



「ありがとう。ちなみに君の回答は間違っているんだ。月日はあっているんだがね。年が違うんだよ。」

「えっ」

まさかとは思ったが、1年も寝ていたとかそのレベルで昏睡状態だったのか?と予想を越えた発言に俊哉は思いを巡らせた。



「答えを言う前に、今が何年なのかは君の予想を遥かに超えているだろうから、現実というものを受け止める心の準備をしてくれ。これを理解してもらわないと話が前に進まないんだ。」

「はい・・・」

ローガンが真剣な面持ちで話すがために少しの緊張感が伝わってきた。


「今日は2218年8月26日なんだ。」

「え?」

俊哉は聞き間違えかと思って何度もローガンの発言を思い返してみたが、やはり2218年と言っていた。


「山ほど質問したいことがあるのはわかる。だけどまずは受け入れ、次に私が来るまでになんの質問をしようか、考えておいてくれ。あと、そのAIは君が常識人であると思って接してくるだろうから、あんまり変な質問していじめないで上げてくれ。」


そう言うとローガンは俊哉に微笑みかけて部屋を後にした。

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