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ワールドチャレンジカップグランプリ

 学校で谷口くんに話しかけてみた。


「夏休み、僕は東京選抜のメンバーとして試合に出るんだよ」


「へえ、すごいじゃないか」


「東京での試合だし、テレビでも放送されるみたいだから、よかったら見てね」


 僕が頼むと、谷口くんは笑顔でうなずいてくれた。


「分かった。たぶん大丈夫だけど時間を教えてくれ」


 僕と谷口くんが話している教室で、離れたところで優海ちゃんが友達に話している。


「え、来栖くん試合に出るの!?」


「テレビでやるんだ、すごーい」


 何がどうすごいのかきっと女子たちは分かっていないんだろうなあと思う。

 それでもほめてもらえて応援してもらえるのはうれしい。

 でも夏休みだしなあと思う。

 そんなことを言っていると、とうとう夏休みに入って試合の日がやってきた。

 試合の会場は東京ヴェルベットのグラウンドを四面、稲白大グラウンドを四面である。

 参加チームは全部で三十二チームで、東京ヴェルベットも参加していた。

 そのせいで時任くんをはじめヴェルベットのメンバーは僕らのチームにいなかった。

 組み合わせはAグループに東京選抜、大宮アルディーニ、ガルーダ大阪、サーガ鳥栖である。

 そしてBグループにバルセロナ、バルデャクラブ、ペガサス仙台、ダニーデアルというチームだ。

 東京ヴェルベットはGグループにいる。

 決勝トーナメントはAグループ一位対Bグループ二位、Cグループ一位対Dグループ二位、Eグループ一位対Fグループ二位、Gグループ一位対Hグループ二位、反対がAグループ二位対Bグループ一位となっていた。

 

「おそらくバルセロナはBグループを一位で通過するだろう。決勝まで対戦しないためには、Aグループを一位通過する必要がある」


 選抜の監督がそう言う。

 同グループの大宮、大阪、鳥栖はどれも強いチームであるらしい。


「東京選抜は同じグループに強いチームを入れられるのはお約束みたいなもんだ」


 東京選抜という枠で出場権を特例的に持っている分、本戦では厳しいグループに入れられるそうだ。

 試合は予選は十五分ハーフ、ハーフタイム五分で八試合ずつ同時に行っていく。

 僕たちはいきなり出番で、対戦相手は大宮アルディーニだ。

 前の大会ベスト4に残ったチームである。


「大宮のシステムは4ー2ー3ー1を採用することが多く、ボランチをふたりおく守備重視のチームだ。攻撃はカウンター主体だから、シュートで終わるように気をつけろ」


 僕らはと言う4ー1ー3ー2というシステムだ。

 ディフェンシブハーフがひとりという攻撃的な戦術である。

 

「東京選抜は4−1−3−2なのか。去年までは4−4−2だったのに?」


 観衆の誰かがつぶやいていた。

 

「来栖がいる分、攻撃的にいこうってことなんだよな」


「取られても取り返せるって判断だろ」


 と六年生の攻撃陣たちが笑う。

 まあ4ー2ー3ー1というシステム自体はオランダ代表やドイツ代表も使ったことあるし。 

 試合がはじまり、まず僕はディフェンシブハーフの木村くんからボールをもらう。

 フォワードふたりにはマークがついていて、左サイドハーフの高村くん、右サイドハーフの大枝くんにも両ボランチがマークにいけるような位置にいる。

 六対五で向こうのほうがひとり人数多いからなぁ。

 僕にプレッシャーをかけてこないのはたぶんマークが足りていて、パスコースを消せているからだろう。

 僕はドリブルで中央突破を仕掛ける。

 これは監督の許可を得ていることだ。

 右からボランチのひとりが止めに来たのでひょいとかわす。

 同時にフォワードのふたりが手を挙げながら外へと広がっていくおかげでマークがつられ、中央に大きなスペースが生まれる。

 センターバックのふたりが僕を同時に止めに来たため、キックフェイントを入れてふたりまとめて一気にかわす。


「ふたりまとめてかわした!?」


「あっという間にキーパーと一対一だぞ!?」


 この段階で敵の両サイドバックはフォワードふたりを放り出して、僕のところに向かっている。

 いまフォワードにパスを出せばオフサイドになるから間違ってはいないけど、正しくもない。

 すでに<枯れ葉シュート>の射程距離だからで、遠慮なくお見舞いする。


「決まったー! 東京選抜先制!」


 やったぜ!

 僕が喜ぶと先輩たちにもみくちゃにされる。

 ちょっと痛いけどそれ以上にうれしい。


「いまメッチャ揺れなかった!?」


「<枯れ葉シュート>ってやつか!?」


「小学生が撃てるのかよ!?」


「開始二分でもう一点とったのか」


「近代サッカーのセオリーを無視するような中央突破だったな」


 まあ完全な奇襲だったよね。

 先制点をとれたから十分すぎる。

 大宮の反撃となったところで、僕は守備に戻らずセンターラインを越えて敵の陣地の近くをうろつく。

 その僕を警戒するようにボランチが近くにいて、もうひとりも少し離れたところにいる。

 ディフェンダーも四人とも残っているから、大宮は四人で攻撃しなきゃいけない。

 

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