第十七話 劣等種
注意:少々情緒が乱れます。
カイルさんがどこにいるか分からないので、とりあえずギルド内で待っておこうかな。
っとその前に。フードを被っておこう。もし見た目がエルフだからっていう理由でこんな扱いになってるなら、一応つけておいた方がよさそうだ。
ギルドの中に入ると昨日とは違い、お酒の匂いが漂ってきた。
匂いの元へ視線を送ってみると、そこにはカウンターがありその奥にボトルが沢山置かれている。多分酒場なのだろう。カウンターには5人の男達が突っ伏しており、お酒の瓶が足元に転がっていた。
「あいつらは昨日いい成果を出したみたいでな。昨晩に祝宴を上げてたんだよ。」
「うわぁっ!?」
後ろから声が聞こえ、思わず飛び上がってしまった。
何だと思って後ろを振り返ってみると、丁度探していたカイルさんがいた。
「ようリミュス。」
「あ、カイルさん。」
カイルさんは、昨日と同じように装備を整えた状態でいた。
「こんな時間にどうしたんだ?もう昼になる頃だ。依頼もあまり残っていないぞ?」
お昼になると依頼ってあまりないのか...。活動するなら朝からじゃないとだめそうだなぁ。
「あ~...ちょっと散歩してまして。カイルさんはどうしたんですか?」
そういえばカイルさんはなんでいるんだろうか?見たところ装備はつけてるみたいだけど...
「ん?あぁ。ちょっとな。」
...これは詮索してはいけないやつだね。そっとしておこう。
「じゃあ忙しい感じですかね?」
「いや。さっき丁度終わってな。何かあったか?」
あ、じゃあ今はフリーか。よかった。
「ちょっと、相談したい事というか聞きたいことがありまして...。」
「...わかった。ちょっと場所変えるか。座って話そう。」
この場で話してもいい物かどうかわからず周りをチラチラと見ていると、カイルさんがその様子を怪訝に思ったらしく場所を移すことになった。カイルさんイケメン。
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カイルさんに連いてギルドの奥に入っていくと、ドアに『未使用』と掛かれた札が掛かっていた。それが6部屋。ここは一体何なのかと聞いてみると。
「ここはギルドに入ってるものなら誰でも使える部屋だ。パーティーの会議や、ギルド職員との面談だったり依頼主との話し合いで使われる部屋だ。部屋の中は防音の魔法が掛かってるから、基本的に盗聴されることはない。ここならいいだろう。」
とのことだ。確かにここなら問題はなさそう。
部屋に入る際に、カイルさんが札を裏返すと『使用中』になった。解りやすくできてる様だ。
部屋の中は簡素なもので、中央にテーブルが置かれ椅子が合計12脚ある。俺たちはそのうちの隅の方にある椅子に座る。
「で?聞きたい事ってのは何だ?...そのフードと何か関係があるのか?」
カイルさんは座って落ち着くのを待ってから聞いてきた。しかもいきなり核心をついてきている。
「...はい。あの、劣等種って何ですか?」
俺が劣等種といった瞬間に、カイルさんの顔が一瞬動揺したように見えた。だがそれも一瞬ですぐにいつもの顔に戻っていた。...見間違いかな?
「劣等種ってのは基本的にハーフの事を指す。ハーフってのは、他種族との間に出来た子の事だ。ハーフはオリジナルよりも全体的な能力が低くなる。例えば、ハーフエルフは魔法が人間と同じかそれ以下になり、身体能力も人間より劣る。それにより、ハーフを総じて劣等種って呼ぶ。」
...ある程度想像していたのとはちょっと違うけど、大まかにはあっていたようだ。やはりフードを被って正解だった。
「劣等種...ハーフはどんな扱い何ですか?」
重要なのはそのハーフがどういう扱いをされているかだ。...まぁここに来るまでに散々味わったからわかりきっているけど、もしかしたらがあるかもしれないと思って聞いたのだが...。次のカイルさんの言葉で全てがわかった。
「劣等種は人として扱われていない。」
...やっぱり。予想していた中でも一番最悪な部類だった。だからあれだけの扱いを受けたのだろう。納得がいく。だがそうなってくると一つ疑問が出てくる。
「ハーフって見た目で分かるものなんですか?」
何故いきなり俺が劣等種とされてしまうのか。という点。皆すぐに劣等種と決めつけていた。ということは何か見分ける方法があるということだ。一体それがどこにあるのか。それだけは知っておきたかった。
「ハーフはその種族の特徴を見ればわかる。獣人なら耳がなかったり、尻尾がなかったり。逆に手が獣になっている者もいるらしい。エルフなら耳が短ければハーフだと分かる。他には...」
カイルさんがまだ話しているけどうまく頭に入ってこない。カイルさんはさっき何と言った?耳が短ければ。...俺の今の姿は、元はエルフだが耳が短い。それはつまり、ハーフエルフと間違われてしまうという事。
....これで合点がいった。ホテルを追われるように出されたこと。どの店に行ってもまともに取り合ってくれない事。舌打ちをされたり吐き捨てられたりされたこと。そのすべてが、耳が短いことによることだった。
そこまで思い至ったところで、体がうまく動かせなくなった。手を動かしたいのに動かない。顔を動かしたいのに、不自然な動きをする。
怖い。自分がその劣等種であるとカイルさんに知られたらどうなるのか。
怖い。これから劣等種というレッテルを張られて生きることが。
怖い。この世界で独りになってしまうことが....
早くここから出ていきたいのに、身体は震えてばかりで一向に動かない。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
「おい、大丈夫かリミュス!どうしたんだ!」
そういってカイルさんが近づいてきた。だけど今の俺にはその姿がどうしようもなく怖くて...
「いやッ!!」
思わずカイルさんの手を払いのける。
今自分が何をしたのかわからなかった。だけどカイルさんを拒んだのは分かった。怖い。だがカイルさんを拒絶してしまったことに対しての罪悪感が心を苛む。
「あ...ご、ごめんなさ...ぃ、いや。いや!あぁ...ごめんなさい...。」
最早自分でも何を言っているのかがわからない。心の整理がつかない。止められない。頭の中がぐちゃぐちゃになっていく.......
...だが、次のカイルさんの言葉だけはやけに明瞭に聞こえた。
「...リミュス...その耳...。」
頭の中が真っ黒に染め上がっていく感覚がした。
お読みいただきありがとうございます。
味方がいないかもしれず、見知らぬ世界で独りになる。どれほどの恐怖なのでしょうか...。
優しかった人が、突然豹変し自らを責め立てる。私にはとても耐えられるものじゃないです。




