第一話 始まり
「....は?」
開幕いきなり素っ頓狂な声を出したのは許してほしい。
さすがにこれは理解が及ばない。
周りは木々が生えており、草も生え放題なためさっきから足に不快感がある。
上を見上げれば、太陽さえ見えないくらい葉が生い茂っている。恐らく森だろう。
いつの間にこんな所に入ったのかは知らないが、ここは一体どこなんだ?
これだけ緑があるところと言ったら、樹海くらいしか思いつかないんだが...。
だが樹海などまず行くはずもなければ、家からも遠い。
仕事先からだともっと遠くなる。
じゃあここは一体...。
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日本の俺は、子供のころに描いていた夢に破れた極々一般的なサラリーマンだ。
・・・ただ一点、あまり公に出来ない趣味があることは除いて
それはまた機会が来たら話すとして、だ。
記憶が途切れるまでの事を話そうと思う。
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その日は仕事が終わった後に、飲み会に誘われていた。
内心「家に帰ってゲームやりたい...」といつも思っているが人付き合いだからしょうがない。
今日の飲み会は同僚ばかりだからか、上司の愚痴やあの後輩の女の子の体がどうとかそういう話になってる。
俺か?俺は端の方で適当に聞き流しながら飲んでるよ。上司の愚痴なら俺も参加できるが、異性の・・・特に外見とかの話はてんでダメなもんで。
こういうのを聞いてると毎度思うんだけど、お前ら盛りすぎじゃね?
女性の体の事ばかりで、そんなんじゃ結婚してもすぐに浮気して離婚っていうオチじゃねえのか?甘えさせてくれて甘えてくれて、分かり合えて何もしていなくても幸せ、ていう関係が築ける相手を見繕うべきじゃねえのか!って思うわけだよ!
.....すまん興奮した...
ゴホンッ!...とりあえず、今日もいつも通り飲み会で潰れた同僚をタクシーに乗せて、無事に家に帰ってきた。
「ただいまーっと...」
言ってはみるものの、暗い廊下に虚しく反響するだけだ。
孤独身なんてことはどうでもいいんだ。相手なんてそうそう見つからないし見つけようとも思わない。
そりゃいたほうのがいいけど、無理に見つけるものでも...っていかんいかん。
帰宅してすぐに俺は風呂場へ行って体を洗い、その後自室へ行きPCの前に座る。
帰ってきて決まってやることは≪アクシエル・プライム・オンライン≫をプレイする、ということだ。
言ってしまえばMMOというゲームだ。
剣と魔法の世界でエルフやドワーフだとかの定番物のオープンワールド制
俺はこのゲームが好きで、キャラも結構作っている。
なによりグラフィックもさることながらキャラクリエイトの豊富さが良い。
顔のパーツや体の細かい部分など、いくらでも作れてしまうから、気づけばキャラが7体になっていたほどだ。
キャラがいい以外にも毎日やるのには理由がある。
APOの中でとあるギルドに入っているのだが、そのギルドの中で一番の実力者だからだ。
...凄そうに聞こえるけど実際そうじゃない。
うちのギルドはENJOY勢...つまり楽しむことが最優先の者たちの集まりだ。数は96人と多いがIN率が高いのはその1/3の35人程。
その中で一位といっても、所詮はギルドの中
俺ぐらいの奴は他にもたくさんいる。
そして毎日やる理由に戻るんだが、うちのギルドでもなんとかイベントでランキングに乗れる時があり、今がまさにその時なのだ。
やはり狙えるなら目標もあった方が面白いし、自由参加なのでランキングに入ることを目標に一人頑張っている。
・・・ランキングといっても上位100チームまでのうち98位とかその程度だけどな。
とりあえずそのイベントも今日が最終日、一気にポイントを獲得しなければ。
そんな思いでPCの電源を付けたところで、俺は記憶が途切れた。
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字等がありましたらご報告いただけたら幸いです。
言い回しやあまり長ったらしく説明しないように注意してますがこんな感じで大丈夫なのか不安です。