第十五話 観察とこれから
前回までのあらすじ:街に入って迷子のところを親切な冒険者に拾われてギルドにやってきたリミュス。換金までの間にカイルと色々話をし、換金職員カザフに怯えながらもお金を受け取り冒険者に登録をした。お風呂付の宿屋へと入り、念願のお風呂を満喫した後自分の裸を見てしまい大慌て。アイテムボックスから着替えを探すリミュスであった。←今ここ
「おぉ~....。」
アイテムボックスの中に入ってた服を着て、もう一度鏡の前に立って観察する。
今は白いパーカーに黒いミニスカートといった格好だ。本当はズボンでもあればよかったんだけど、スカート物ばかりしか見つからなくて仕方なく。仕方なくスカートを穿くことにした。汚れた服はアイテムボックスにしまってる。出しっぱなしだと匂いきついし...
時に。ネトゲをやっている層の中に「自キャラ愛」という人達がいる。自分のキャラを自由に作ることができるゲームには大抵住み着いている人たちだ。その人達は自分のキャラがゲームの中で一番可愛く、自キャラを可愛く、或いは理想のキャラにすることに心血を注いでいる。
何故そんな話をしたかというと、俺も「自キャラ愛」の一人だからだ。
自分の作った全てのキャラを平等に、というわけにもいかなかったが。それでもそこらのプレイヤーやNPCなんかよりよっぽど可愛いと思ってる。
そこ、痛い奴とか言わない!!
何が言いたいかというと、鏡に映っている自分の姿が理想ぴったりで、理性というものがどこかへ飛んでいきそうってことだ。まぁ、理性と言っても物凄く愛でたいっていうものだけどね。というか自分の体を愛でるとかどう考えても絵面が酷いと思う。
しかしこうやって見ると、ゲームのキャラになったんだなーって実感がわく。今までは体や服、声、スキルだとかでしか判断できなかったから、鏡に映った自分を見るとやっとこれが現実なんだって思える。そう思うとこれからが楽しみで仕方がない。
気分が上がってくると、尖った耳がピコピコと上下するのが確認できた。
そういえばメインキャラはエルフを元にしてるんだったか。APOを始めた当初、一番かわいく作れそうなのがエルフだったから迷わずエルフを選んだ。でもどうしても耳が長いのが気になったから耳を最短設定にして、なんとか髪からちょっと出るくらいの長さまで抑えて満足したのを覚えてる。
そんな耳が、髪から先端だけをだして上下している。
「それは反則だろぉ~...///」
自分のとはいえ、美少女の耳がぴこぴこしてるのは流石に破壊力がデカすぎて悶える。悶えてると更に耳が激しく上下しているのが目に入って...
「もう...やめて...////」
悶え死にそう....
なんとか心を落ち着かせてもう一度観察する。
髪はさらさらしていて、触るのが飽きない。ウィッグとかだとすぐに絡まってしまったりするけど、全然絡まらないでスーッと指で梳ける。耳はさっき言った通りエルフの耳を短くした感じだ。それがまた全体の小ささにプラスされていていい。腕や手、足は小さくて白い。ちょっと力入れたら折れちゃうんじゃないかってくらい華奢だ。
それからじっくりたっぷりと小一時間くらい観察してから、近くのソファに座ってこれからの事を考える。...別に夢中になってたとかじゃないよ?ほんとだよ?
...んんっ冒険者に登録したはいいが実際どうして行こうか。力を隠そうとせず全力で行けば多分Aくらいなら行けるんじゃないかとは思う。受付さんが言っていた事が本当なら、エルダータイガンを倒せるなら問題ないと思う。でもその場合、なんだかめんどくさいことになりそうな気はする。
出る杭は打たれるとはよく言ったものだ。日本では優秀な為に上に目をつけられて使いつぶされた奴や。逆に上に気に入られたせいで嫉妬を買い最終的に自殺にまで追い込まれた奴がいるのを聞いてきた。俺自身が優秀ではないから無縁な話だと当時は思っていたが。B階級の冒険者でも狩るのが厳しそう(予想)な魔物を狩れる大型ルーキーなんてなったら絶対やばい。何かされそうで気が気じゃない。ましてこの世界では奴隷というのが一般化しているみたいだし、こんな美少女()だし...あの手この手で奴隷落ちさせられることもあるかもしれない。
いや、そうならなければいいってわけでもないけど。権力者に目をつけられるのだけは嫌だ。面倒だし。自由がなさそうじゃん。なんでこうして異世界に来てまで自由を捨てないといけないんだ。
とはいえラノベ?では力を隠して生きている主人公たちは大抵隠すためにめんどくさい事や、更には結局力持ってるのがばれて厄介なことになったりしてるし....どうすればいいんだ?
そういえばカイルはタイガンのお金を受け取ったときに「豪い大金」って言ってた。...てことは何もしなくてもそこそこ生きていけるんじゃね?この宿屋は一泊1万c。高級ということを考えれば、一般のところなら高くても5千cくらいしか行かないんじゃない?ならこのお金だけで1~2か月間は自由に生きていられそう...。
「...ニート生活キタコレ?」
お金はあるんだから何もしなくてもいいじゃねえか!
「てちょっと待て。何が悲しくて異世界に来てまでニートしなきゃいけないんだ。」
そうだよ。なんでお金があるからってニートしないといけないんだ。というかたかだか1,2か月程度でニートって言えるのか?
でも....
そうやってあーでもないこーでもないと非建設的なことを考えていた時、ふとカイルのとある言葉が頭をよぎった。
『それに見たところ人間だからな。奴隷だなんて決めつけやしねえよ。』
確か換金所の列に並んでる時に言っていた言葉だ。あの時は詳しくは聞けなかったから少し気になっていた。
人間だから。裏を返せば、人間じゃなかったら奴隷だと決めつけられることがあるということなのでは。いるかどうかは置いておいて、異種族というのをまだ見ていない気がする。もしもエルフだとかが人間として認められていないなら。もしも異種族は奴隷にさせられているのなら。今の俺の容姿は非常にまずいんじゃないだろうか....。
カイル達が、俺を捕まえる.......
(...そんなわけないよな)
そこまで考えて、すぐに頭を振る。今日あったばかりだけどカイル達はそんなことをするような人達には見えない。むしろギルドを出るときのあの二人組の方がしそうだ。というか絶対やってる。女性を下に見てたし。あれ絶対子悪党だって。
それに今日だって耳は見えていたはずだし、それで誰も特に反応を示してなかったんだから大丈夫だろう。
だからこれはただの思い込みで、この街にはたまたま異種族がいないだけだと結論付けて終える。
「ふわぁぁぁ....」
気づけば外は日が落ちており丁度いい時間になってた。今日は久しぶりにふかふかのベッドの上で眠れる。ならば考え事などは全部投げ捨てて、健やかに眠るとしよう。
「おやすみローズ」
机に置いていたローズに声をかけると「おやすみ」と返ってくる。
森を彷徨ってる時からやっていた為半ば習慣になりつつあるそれを終えて、俺は眠りについた。
お読みいただきありがとうございます。
少々長く期間が開いてしまったため、あらすじを細かく描写しました。
何をかくのがいいのか浮かばず、出てきたものをばーっと書いてみました。←




