第八話 辺境の街 ヴェスタリア
ここはヴァルナリア帝国領辺境の街 ヴェスタリア
ヴァルナリア帝国とは、初代皇帝アルカ=ムス=ヴァルナリアが建国した国で、人間国家の中で一番の領土と武力を誇る国だ。強大な武力を持って幾つもの国家を滅ぼし、領土を広げていったのである。その一番南に位置するヴェスタリアだが、辺境とあるが実は建国時代からある帝国領だ。
何故建国時代からある領土にも関わらず辺境のままなのか、その理由はさらに南に行った所にある森が原因だ。その森の名は”アルカ大森林”。帝国では初代皇帝の”アルカ”という名は力の象徴とされている。その名がつけられている事から解るように、森にはA級以上の魔物―――魔獣が多数生息しており、学者の話ではS級のドラゴンまでも生息してる可能性があるという話だ。森の大きさは広大、その一言に尽きる。一度200人程の大規模な開拓隊が組まれたが誰も帰ってこず、調査が進展していない。それでも予想では大陸の1/4の大きさはあるといわれている。そのため無理に森を開拓することが出来ず、いつまでも辺境のままなのである。
森から魔獣が溢れてくるのではないかという心配もあったものの、どうしてか森から魔獣が出てこないのである。これがドラゴンが生息しているかもしれないという話の信憑性が高い要因だ。ドラゴンを頂点とした食物連鎖が出来ているから、森の外に出なければならない程餌に困ることがないのだ。
「ふわぁぁぁ...」
そのためヴェスタリアの街は至って平和だ。辺境の街、更に出てくる魔物も危険な為街によるものも少なく、今日も彼は暇をする。
彼はウルブズ・カルトン。長年ヴェスタリアの街の門番を務めている門番長だ。
「ん?」
ウルブズはこちらへ向かってくる人影を見つける。最近に何か催し物などはないためこの時期に人が来るのは珍しい。そう思い注視してみるとその人物は女の子のようだ。それも酷く汚れている。足には血がこびりついてもいる。だが纏っている服は黒色を基調としたワンピースにマフラー。どれもここいらで簡単に手に入るものではない程上質なものだと分かる。伊達に何十年も門番はしていない。
そんな上質な服を着た少女がなぜ一人で、ここまで汚れているのか。不思議に思ったが、少女が持つものを見て理解した。少女は何か大きなものを引きずっていた。あれは恐らく何かしらの荷物が入っているのだろう。恐らく馬車が魔物にでも襲われ、少女だけ生き残ってしまったのだろう。
(もしそうなら、遺体が入っている可能性も考えなくては...)
ウルブズは遺体が入っていた場合の対処を考える。が今は目の前の少女だ。高貴な身分だろうことはわかる。ウルブズは問題を置き少女の元へ駆けつける。
「大丈夫ですか?」
「え?はいえっと大丈夫ですけど」
少女に聞くも返ってくるのはあっさりとした返事だった。ウルブズはそんな様子に少し驚いてしまう。
「一体何があったんですか?」
少女はそこまで言われてやっと気づく、門番は自分の血に塗れ汚れている姿を見て心配しているのだということに。漸く質問の意図を理解して説明しようとするが、どういって説明をするか悩む。
―――正直に言っても信じてもらえなさそうだし、最悪追い返されるかも。
そう思った少女は、少し考える。だがウルブズはその神妙な顔を見て勘違いしたのか
「あぁ、無理に言わなくてもいいですよ。辛かったでしょう。」
ウルブズは最悪の事態を想像しているため、少女を気遣った言い方をする。
少女はいきなりそんな事を言われたため少し戸惑ったが、説明も出来ないのでそれに乗る。
「はい...突然襲われて...怖かったです。」
「そうですか...もう大丈夫ですよ。」
ウルブズは少女の雰囲気を察し、自分の予想が当たってしまっていたかと内心残念に思う。
(当たってほしくはなかったが...ということはやはり後ろのは...)
そう思って少女が持っているものを見た瞬間戦慄した。
少女が持っていたのは彼女の両親の遺体でもなければ、ましてや荷物などというものではなかった。魔物―――それもアルカ大森林に生息している魔獣、エルダータイガンだった。一度A級冒険者たちが森の中に入っていきボロボロになりながらも持って帰ってきたのがエルダータイガンだった。その時の彼らはエルダータイガンを倒すだけでボロボロになったと聞いている。そんなA級冒険者達がパーティーを組んでやっと倒せる程の魔獣をこの少女は持ってきていたのだ。ウルブズは恐る恐る問う。何かの間違いであってほしいと。
「その...魔獣は一体...?」
「魔獣?」
聞いてみるも、少女は質問の意図が分からないようで首を傾げている。
「引きずっている魔獣です。それはエルダータイガンと言ってアルカ大森林にしかいない魔獣なんです。魔獣というのは魔物のさらに強い物の総称です。」
そこまで説明をして、少女は目を見開いて驚いている。やっと理解できたようだ。
「魔物だったんですか?!」
しかも魔物だと気づいていなかったようだ。
「えっと...これは...も、森の近くを通ってる...時に偶然倒れてるのを見かけまして...ですね...」
言葉を詰まらせながら説明をしているが、目線を泳いでいる事や汗をかいていることから、誰が見ても嘘だと分かってしまう。ここまで露骨だとさっきの襲われたというのも嘘なのだろう。ウルブズはその様子から秘密にしておきたいことがあるのだろうと、深く詮索するのはやめた。
「おう、大体はわかった...だがな、嘘をつくにしてもちゃんと人の目を見ような。」
常識を知らないというところはお嬢様っぽく感じなくはないが、ポンコツなせいで最早ただの子供にしか思えなくなり、敬語を使う気も起きなくなったウルブズは一応の注意をする。
「...はい」
少女は嘘だと見破られてしまったことに恥ずかしさを覚え俯く。その様子を見てウルブズは堪えきれずに笑ってしまう。
「アッハハハハハハ。何はともあれ、ようこそヴェスタリアの街へ。本来は身分証を提示するかないなら銅貨3枚払ってもらう規則だが、嬢ちゃんは魔獣しか持っていないんだろう?なら銅貨3枚は俺のツケで払っておく。魔獣を換金するときにでも払ってくれや。」
ウルブズは笑いながらそう口にする。少女はその様子から問題なく入れることが解ったのだろう。ウルブズに対して礼を言う。
「ありがとうございます。...えっと」
そこまで言って少女は言葉に詰まる。今になって名前を聞いていないことを知ったのだ。それにウルブズは気づき、
「俺はウルブズってんだ。よろしくな」
「はい、リミュスって言います。宜しくお願いします。」
少女―――リミュスはそういってウルブズと握手をする。
そしてリミュスが街に向かおうとしたときにウルブズはそのまま行こうとしているリミュスを慌てて止める。
「お、おい。エルダータイガンをそのまま持っていくつもりか?」
「え?そうですけど」
返って来たのはまたもやあっさりした言葉だった。少しづつだがリミュスがどんな人物なのかが否が応でもわかってきてしまったウルブズ。
「【アイテムボックス】は使えないのか?」
A級魔獣を仕留められるほどの実力を持っている少女が【アイテムボックス】を使えないわけではないだろうと聞くが、
「【アイテムボックス】??」
リミュスは意味が解らずまたも首を傾げる。がすぐに気づいたように魔獣の方を向き手を翳すと、魔獣はどこかへと消えていく。
「なんだ、使えるじゃねえか」
「いやぁ...忘れてました。ハハハ」
本当か?という目をウルブズは向けるとリミュスは顔を背ける。
「はぁ...まぁ呼び止めて悪かったな。じゃあな」
「うん。ありがとうございました。」
リミュスはお礼を告げるとそのまま街の中へ入っていく。
お読みいただきありがとうございます。
第三者視点で書くといったな
あれは嘘だ。
はいすいません。第三者で書こうとしてたのですが、途中で「あれ?これウルブズ視点じゃね?」と思い治そうと思いましたが既に終盤だったため諦めました。ハイ
やっと主人公の名前が判明しました。当初の予定では門番とはお話もそこそこに切り上げて、すぐに冒険者ギルドに向かい登録時に名前判明って流れだったのですが、気づけば門前で凄い話してましたね...
冒険者といえばA級とかS級とか出ましたがその説明は登録時に行おうかなと思っています。何か疑問、感想等があればドシドシお寄せください。




