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呪縛の勇者 ~装備からは逃げられない!~  作者: 角鹿リン
第一章 呪縛の勇者の誕生
7/12

第七話「新たな仲間と目標の確認」

「ん! 朝は気持ちいいね~!」


 翌朝、昨日は何事もなかったかのように言うソフィ。

 俺はというと……


「ああ、そう……」


 目にクマ――とまではいかないが、少しやつれていた。

 理由? そんなの簡単である。

 あのまま抱き枕にされて一晩を過ごし、全然眠れなかったからである。

 眠れなかった、というのがポイントだ。枕にされていたのでロクに身動きが取れず、眠れるわけでもないので一晩中理性を押さえつけて朝が来るのをひたすら待っていた。


 正直なところ地獄だった。だが、ソフィに手を出してはいない。彼女に手を出さなかった俺を、誰でもいいから誉めてほしいものだ。

 と、その時扉がノックされる。


「誰かな? はいはーい」


 ソフィが扉を開けると、待っていたのは昨日一緒にこの店に入った赤毛の少女“アルマ”だった。


「やあ、ソフィ。それにロニード……って、君やつれたね。何されたんだい?」

「ああ、実はな――」

「わ、わわ――――っ! 私、何もしてないよ!?」


 俺が抱き枕にされた件を話そうとすると、ソフィが慌てて大声を出す。朝からうるさいやつだな。

 でも、ソフィの反応も当然か。大の大人が誰かと一緒じゃなきゃ寝れないんだもんな。

 くくく。しばらくこのネタでいじり倒してやる。


「……まあいいや。その話はボクにもおいおい話してもらうよ」

「ん……? それって、どういう……」


 アルマの言葉を聞き、どういう意味かを尋ねるが、その後衝撃の発表を聞くことになる。


「ボクも君たちの旅に同行させてもらうよ」


 ……はい?



===



 グリームの店、一階の酒場スペース。

 今日はいつもとは違う……というより朝の時間なので、グリームとは違う人物がカウンター席の奥に立っていた。


「あ、ロニード君。おはよう」

「おはようございます、エリーさん」


 今の俺の顔はひどい顔だろうが、エリーさんは優しいのでそんなことは気にしていないはずだ。

 というか、昨日から衝撃の連続でもう疲れなどどうでもよくなっていた。


 エリーさん。茶色のふわふわロングヘアで、俺より幾分か身長が高い。いや、俺がチビなだけか。

 今はメイド服のような従業員の服を着ており、金の双眸が優しくこちらを見据える。


 エリーさんは朝から夕方までしかこの店に留まらない。要するに、グリームの寝ている間に店を預かっているわけだ。

 そしてエリーさんは輝いている。誰が何を言おうとも、俺には輝いて見えるのだ。

 さらにエリーさんは、癒しでもある。飾り気のない武骨なこの店の、唯一の飾りであり癒しでもある。


 まあ、それはさておき。


「本当にいいのか? アルマ」

「うん、もう決めたことだしね。君たちさえ良ければの話だけど」


 テーブル席に座り、朝食の注文を終えたところで話を始める。

 昨日はごたごたしていてソフィに聞けないことがあった。しかし、アルマが旅に同行するというのなら、そちらを優先して聞かなければならない。

 眠れなかったのは、昨日から装備している鎧のことを聞けなかったというのもある。


 そして一応ソフィも旅の仲間だ。仲間外れはよくないと思い、ソフィのほうを見るが……


「……?」


 ダメだこいつ早くなんとかしないと。

 ソフィは何も考えていない。というか、金の事しか考えていない。


「……ああ、わかった。歓迎するよ、アルマ」

「ほんとかい? ありがとう、ロニード」


 というわけで、俺の独断でアルマを仲間に引き入れた。あとで文句言われても知らない。


「それと、仲間になるんだったら俺のことは“ロニ”って呼んでくれ。ああ、いやなら別にいいけど」

「うん、わかった。ありがとう、ロニ」


 俺のお願いを快く引き受けて、はにかんだ笑顔を見せるアルマ。


「それじゃあ私も――」

「ただしソフィ、テメーは駄目だ」


 ソフィに愛称で呼ばれるのは何故かあまり気が進まなかったので駄目というが、ソフィは「えー、なんで私だけ?」と不満を口にする。


「……それで、ソフィ。お前に聞きたいことがあるんだが……」

「え? あー、そういえば言ってたね。私に聞きたいことがあるとか……」


 話を切り替える。

 どうやらソフィは俺の言っていたことを覚えているようだった。流石にそれを忘れられたら困るが。


「俺の装備についてなんだが……何か知っているか?」

「えーと、つまり。鑑定してほしいの?」


 あっけらかんとした態度で答えるソフィに、俺の心臓は一瞬止まる。


「……お前、〝鑑定(アイデンティファイ)〟を使えるのか!?」

「うん、使えるよ~」


 ……いや待て。鑑定魔法(・・)なら俺だって使える。

 ソフィのことだから、もしかしたら魔法と技能を間違えているのかもしれない。


「ほ、ほんとに技能なのか?」

「そうだよ?」

「……お前、熱でもあるのか? 無理しなくてもいいんだぞ?」

「ぐすっ。いいもん、ロニード君の装備なんか鑑定してやらないんだもん」

「ああっ、謝る、謝るから! 悪かったって! だから頼む、鑑定してくれ!」


 このやり取りを見ながら、アルマは運ばれてきた朝食をすでに食べ始めていた。



===



 鑑定は朝食後に行われることになった。

 あの後ソフィはごねたが、ただ俺をからかっているだけと分かった瞬間優しい目つきで見つめたら、血相を変えて了承してくれた。


「じゃあ行くよ、ロニード君」


 防具もやはり外せなかったので、とりあえず剣から鑑定を頼んだ。


 心臓が早鐘を打つ。はした金で買ったやたらと強いこの装備、いったい何なのだろうか。

 未知に対するワクワクもあるが、同時に呪い装備だったらどうしようという恐怖もある。


「ど、どうだ、ソフィ……」


 技能は魔法と違って詠唱がない。故に、ソフィはいたって真面目な顔で俺が手に持つ剣を眺めたり、触ってみたりしていたのだが。


「……んー、これ呪い装備だね」

「……! そ、そうか……」


 ソフィの宣告に、がっくりと気を落とす。

 はぁ……やっぱり呪い装備か。

 と、そこで俺があまりに気を落としすぎていたせいか、アルマが慰めの声を掛けてくれる。


「残念だったね、ロニ」

「ああ……でも、呪い装備は強い。ここはポジティブに、強力な装備が手に入ったと考えるしかないよ」

「ふふっ。ロニって、結構逞しいね」

「そ、そうかな……?」


 最後に俺が照れ気味に答えると、ソフィは少しだけ不機嫌になった気がした。



===



 あのままソフィに防具の鑑定もお願いしたところ、やはり防具も呪われていた。

 そして今は当面の目標などを再確認しているところだった。


「さて、まずはそれぞれのポジションについて確認したい」


 ポジションとは、戦闘での位置確認である。

 俺達は仲間とはいえ、まだお互いのことをほとんど知らない。戦闘でチームワークが取れなければ、それは致命的だ。


「俺の職業は勇者、使える魔法はそれなりに。多分魔法使い寄りだけど、知っての通り装備のせいで攻守ともに強いはずだ。

 ポジションは俺が前衛なのが一番いいだろう」


 客観的に判断して、奇襲でもなければ俺が一番強いというのは間違ってないはずだ。

 恥ずかしいことに、装備補正のおかげだが。


「じゃあ次はボクだね。格闘家の冒険者、魔法は使えないけど技能ならいくつか持ってるよ。

 ボクは……前衛か中衛がいいかな?」

「ああ、たぶん中衛がいいと思う。それなら前の戦闘にも、後ろの戦闘にも状況に応じて参加できるからな」


 アルマのポジションの確認が終わる。

 アルマは昨日知り合ったばかりなので、強さは未知数だ。

 流石にこの防具を破壊できるほどの実力は持っていないと思うが、実は中堅くらいの実力を持っていたりするかもしれない。少しだけ期待しておく。


「じゃあ最後は私ね! 名前はソフィ、職業はトレジャーハンター! ポジションは後衛希望……でいいよね?」

「ふぁぁ……いいと思うぞ」

「ちょ、ちょっとなんで私の時だけあくびするの! ロニード君のいけず! ばーかばーか!」


 流石にあくびしながらはかわいそうか。あくびしたのはたまたまだったんだが。

 てかこいつ何歳児だよ。


「はぁ……じゃあ次に、目標の再確認だ。最終的な目標は大きく三つある」


 溜息交じりに話を進める。というか、なんで俺が司会やってんだ。次は誰かに変わってもらおう。


「一つはソフィの夢に出てくる“妖精”の尻尾を掴むこと。

 二つはこの呪われた装備の解除方法を探すこと。

 三つは魔王を説得し、和解すること。ほとんど俺の私用で申し訳ないが、何か質問とかはあるか?」


 再確認を終え質問はないか聞くと、ソフィが意味が解らなさそうに尋ねてくる。


「魔王と和解? 殺しちゃうんじゃなくて?」


 ふと、脳裏に先日のクロムの言葉がよぎる。

『お前は、俺達を殺そうとしていないのか?』と。


「……俺も最初はそう思っていた。だが、魔族と戦ううちに、魔族と争う必要性を見いだせなくなってしまった……。

 今は魔族とは和解できるのでは、と思っている」


 いや、最初から魔族と争う必要性などなかったのかもしれない。

 実際に一般市民は力がないとはいえど、魔族との抗争には無関心だ。少なくとも、二年間各地を旅してまわった俺の市民に対する感想だ。


「ロニ、それは甘いよ。甘さはいつしか身を亡ぼすよ」

「……そうかもしれない。一瞬の気の迷いかもしれない。でも、誰も犠牲にならずに済む方法もあるはずだ」


 それに、無意味な殺戮は必ず復讐を生む。

 魔王がどうしようもない屑だったらさすがに殺すが、そうでなければそれは避けたい。人間の未来のためにも。


「……まあ、どっちみちそれは俺が強くなくちゃ成立しない話だ。その件は、おそらく一番最後になると思う」

「それもそうだね。その時になったら、考えることかも」


 俺の言葉に相槌を打つアルマ。そしてソフィは始終訳が分からなさそうな顔をしていた。

 きっと体だけ大人になってしまったんだろうな。哀れみすら覚える。


 その後、俺達はそれぞれ準備をして、三人で出かけることになった。

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