距離
「思い出の中から」
キミを紹介してくれたのは共通の友人だった。
キミは小柄で眼鏡をかけ、色白でよく笑う元気な人だった。
夏の或る日、キミに誘われてドライブに行った。
ボクは免許がなかったから、キミの車をキミが運転した。
ボクはちょっぴり引け目を感じていた。
「誘ったのは私だから、気にしないで」
湖の畔で、
「私たち、案外うまくいくんじゃないかな」
ボクには意外な言葉だった。
「試してみようか」
キミとボクには、車でも電車でも二時間ほどの距離があった。
冬の或る日、キミに誘われて海辺の公園に行った。
「あなたに会えてよかった」
そんな歌があったなあと思った。
「元気で」
キミとボクには、電車で一時間ほどの距離があった。
でも実際は、どんな乗り物でも及ばない遙か遠くへ隔たっていた。
その後のキミとボクの距離は計測不能になった。
16/9/24 Sat. ~ 16/10/23 Sun.