第3話 唐突に気功スキルが役に立った
2時間ほど歩いたところで小川を見つける事が出来た。
ここまで歩いてきて思ったのは、以前の自分と比べて確実に体力や頭の回転が早くなっている事だ。さっきまではテンションなんかの問題かとも思ったが、もともと俺には森を2時間も歩く体力は無いからな。
とりあえず、この川の水がどれくらい綺麗なのかだが、見た目的には透き通っていてそのままでも飲めそうだ。一応、製薬知識と毒知識の反応も無毒な水なので大丈夫だとは思う。とはいえ、どちらもレベルが1なので気休め程度ではあるのだが。
まあ、考えていてもいずれは飲む事になりそうだし、気にせず手ですくって飲む事にする。
うん、普通にうまい。スーパーで売られている天然水とかと比べても差し支えの無い程度にはおいしい水だ。まあ、工場の公害なんかも無いだろうから当たり前と言えばそうなのだが。
喉を潤したところで、今までの2時間で植物を観察した結果を整理してみる。別段、おかしなところは無かったと思うが念の為に思い返してみる。
まずは周囲の気候。あくまで素人の考察だが、地面に落ち葉があったことからある程度四季に近いものがあると予想される。別段、土も乾燥して無いのである程度雨も多いのだろう。木の幹や枝が不自然に折れているところも少なかったからあまり大きな動物もいないと思われる。
うん、特に異常は無い。あえて言うならこれだけすぐに考えつく事が異常なのだろうか。本当にこの思考力を地球でも持っていたかった。
とりあえず、今いる場所の情報を整理し終えたので、この辺りで夜を過ごす準備をする事にする。もしかすると、明らかに強くなっているこの体なら一晩くらい歩き続けられるのかもしれないが休める時に休んでおきたいしな。
夜を安心してすごすためには水と食料、そして火が必要だ。幸いにも水は近くに川があるし、食料もさっきから製薬知識や植物採取に反応するものがあるからなんとかなると思う。
問題は火を起こす方法だ。当然、マッチやライターなんかを持ってるわけでも無いし、木をこすり合わせて火を起こすなんてできるとも思え無い。
と、いうわけで困った時の異能を使ってみる事にする。もしかしたら何か今あるもので火を起こす方法が載っているかもしれ無いしな。
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火の起こし方
火は酸素、熱、燃料の三要素によって構成されている。よって燃料を集める事ができればなんらかの方法で熱を与えてやれば火は発生する。
摩擦発火▽
火花発火▽
光学発火▽
化学発火▽
加圧発火▽
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なんと言うか意外とたくさん種類があるんだな。この中で今持っている道具で出来そうなものは摩擦と火花、化学発火くらいだろうか。ただ、化学発火のスマホを破壊して火を起こすなんて論外だし、火花方式も火打ち石は見つかるかもしれ無いが火打がねになる様な金属は持って無いからな。実際できるのは摩擦発火くらいだろうか。
とりあえず、ある程度乾燥した枝なんかはあるから何とか熱を起こす方法を思案してみることにする。まあ、思いつかなければ単純に摩擦による火起こしを試してみるか、最悪焚き火無しで夜を過ごす事もできるだろう。
しばらく熱を起こす方法を考えたところでスキルの存在を思い出す。数時間前まではそんなものは無かったからか完全に意識から抜け落ちていた。
スマホを取り出してスキルをもう一度確認してみる。最初に確認した時から変化してい無い様だからそう簡単にスキルレベルが上がる事は無いのだろう。ともかく、今のスキルの中で使えそうなものはさっきから何回か使った気功と、次点で何か起こせそうな錬金、あとは大穴で使い方のわから無い付与魔法といったところだろうか。
まあ、これ以上考えたところで他の方法は思いつきそうに無いのでさっさと実行に移してみる事にする。
まずは気功を使ってみる。前に見た漫画やアニメでも気を圧縮して加熱していたり、火を起こしていたのでそれをイメージして試してみる。実際、さっき使った時に気の様なものを感じる事ができたから、これを集めれば熱が発生すると思う。
しばらく悪戦苦闘していたが、15分ほどである程度動かす事ができる様になる。そこから更に試行錯誤を繰り返しているうちに集中すれば体内での移動はそこそこスムーズにできるようになった。
しかし、ここで問題が発生した。熱を作り出そうと指先で気を圧縮すると、とてつもなく熱いのだ。確かに気を操作して熱を起こす事には成功しているのだが、火が起こる温度になるまで加熱すると恐らく指が使い物にならなくなりそうだ。
それからしばらく水で指を冷やしながら考えていると自分にはスキル以外にも能力を持っている事に気がついた。そう、様々な知識を検索できる便利な異能の事だ。実際に熱くなるという事はアプローチ自体は間違って無いのだろうが、正しい知識があるのと無いのでは大きく違うからな。
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気功
体内に存在する生体エネルギーを操
作する技術、またはその行為。基本
的には体力を消費して発動するため
注意が必要。魔力に依存せずに効果
を得る事ができるため内外問わず修
得者は多い。
内気功△
気功を体内で循環させ体力や回復力
を一時的に強化することができるが
実戦で使うにはかなりの修練が必要
となる。
外気功△
気功を体外に放出し様々な物理現象
を起こす技術。魔力に依存し無い遠
距離攻撃も存在するため、特に使い
手が多い。また、内気功よりも消費
が大きい。
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リンク
オーラ
氣
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どうやら気は体外に放出する事ができるらしい。さっき試した時は体内でしか動かしてなかったが、なるほど確かにそれは盲点だった。そう言えばそのアニメでも気を球状にして敵に放ったりもしていた気がする。
とにかく、今度は体外に放出するイメージで気を集めてみることにする。
精神を統一し気を集め始めて約10分、手の平の前方がぼんやりとオレンジ色に輝きだした。さっきみたいな熱さは全く感じ無いがイメージに近いものになったので積んでおいた枝の方に近ずける。
オレンジの球体の中に入ったところから木の枝が焦げ始め次第に赤色に変化していく。更に10秒ほどたったところで小さな火がついた。
火がある程度大きくなったところで気功を解除する。実際使ってみると思ったよりも気功は体力を消費し無いようだ。もっとも発動にこれだけ時間がかかるから戦闘では使えそうに無いが。
とにかく、火を起こす事には成功したので日が完全に沈む前に食料を調達することにする。さっきも言った様にこの辺りには食べられる野草や木の実、川の中には小さな魚などが居るのでそこまで苦労せずとも調達することができるだろう。
生物採取のおかげか小魚を捕まえようとすると、何となく体の動かし方が分かる。取り敢えず、二三匹確保したところで枝に刺し火にかけることにする。次に火が通るまで少し時間がかかるので木の実や野草なんかを集める。調薬知識に反応のあるスパイスの様な香草も意外とあるみたいだ。
魚に火が通ったので採取しておいた香草で味?をつける。正直料理なんて学校の家庭科の授業でしかやったことがないのでどんな物になるかは分からないが、まあ食べられる物にはなるだろう。
取り敢えず完成したので食べてみる。
………うん、なんとも言えない微妙な味だ。食べられないことはないが味が薄い。まあ贅沢は言ってられないので一応は完食する。
そう言えば、気功は体力を消費すると書いてあったが実際どれくらい消費するのだろうか。まあ、今更見たところで正確な消費は分からないので次回に回すとするか。
しばらく、火の前で休憩しているとポケットの紙切れが光りだした。
そう言えば持ち物を書いていなかったので一覧
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服(上下)
靴(革靴的な何か)
スマホ(充電残量∞)
銀貨×3
紙切れ(呪われている?)
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