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南大宮学園雑談部観察日記2ページめっ

作者: 豚野郎

「二ページ目めっ」と題名についていますがこれだけを読んでも問題ないです。

 別館とも呼ばれる授業では使われなくなった校舎の三階には、とある部活動で占領されている部屋があり、その部屋はとある部活動の部室として使われている。


 部室の中には一人の少女がいた。その少女は、どこかお金持ちの令嬢のような見た目をした美少女であったが、常に体の一部を動かし落ち着かない様子を見せている。また、椅子に座っているときも足をぶらぶらと動かしており、令嬢に見合った上品さを持っているようには見えない。どちらかと言えば運動部にいる活発で元気あふれる少女を思い出させる仕草だ。


 そんな見た目と仕草がかみ合わない少女は、部室の入り口でなにか細工を仕掛けていた。


 机の上には少女の鞄と、イタズラセット初級編~たらい落とし~、と書かれた大きな袋があり、床には風呂桶ぐらいの大きさをした小さなたらいが置いてある。


 少女の手元には少し太めのロープが握られており、ドアを開けたらロープが引っかかるように入り口に罠を仕掛けている最中だ。


 一通りの作業が終わったのか、少女は軽く伸びをすると足下にまだたらいが置いてあることに気づく。


 急がないと彼が部室にきてしまう


 そう思い、慌てて少女は入り口に仕掛けられているロープの先にたらいを縛り、ドアの真上にくるように調整した。


 今度こそイタズラの準備が終わり一息ついていると廊下から靴が床を叩く音が聞こえ、誰かがこの部室に向かっていることを知らせる。


 少女には誰がこの部室に向かっているか分かっているようで仕掛けの確認をしている。


 足音が部室の前で止まり、少女に緊張が走る。


 ドアが開かれた。


 そのとき、入り口に仕掛けられていたロープがドアに引っかかり、たらいが落ちないように抑えていたロープの固定が外れる。


 束縛から解かれたたらいは重力に従い真下へ、ドアを開けた青年の頭部目掛けて落ちていた。




 カコン




 青年の頭部に落とされたたらいは間抜けた音を立てただけだった。


「……」


「……」


 部室を静寂が支配する。


「……」


「……えっと、こっ、こんにちは、桐山さん! いい天気だね!」


 少女は動揺しながらもなんとか会話を試みようと青年に話しかける。


「あ、あのさ、桐山さん。べ、べつに、桐山さんに嫌がらせをしたかった訳じゃないんだよ? ただ、いつもいじられてる私の身にもなって欲しかったというか」


「……」


「きっ、桐山さん! 何で無言で近付いてくるの! 怖いよ!」


 青年は何も喋らずゆっくりと少女に近づき、それに対応するように少女は少しずつ後ろに下がっていく。


「……」


「ちょ、まって、私が悪かったから、謝るから近付かないで! なんか言ってよ!」


 しかし、少女の説得は空しくも失敗に終わり、ついには部室の端まで追いつめられてしまう。


 そして、青年は少しだけ腰を落とし、






「そいや」






 少女のスカートをたくし上げた。


「きっ、きゃあああ! な、何するんですか!」


 少女は熟れたリンゴのように顔を真っ赤に染めながら青年の行動を糾弾した。


「黒のレースか、以外と派手だな」


「何見てんですか! 忘れてください!」


「黒のレース、黒のレースか……」


「何度も言わないでください! お嫁に行けなくなります!」


 そう何度か呟くと、何か閃いた顔をして青年は窓に向かって歩きだした。


「そんな悪い顔して何をするつもりですか!」


「いや、ちょっとした復讐をしようとね」


 青年はそう言って窓を開けると






「黒のレース! 本日は黒のレースです!」


「ぎゃああああ、なにいってんですか! やめてください! 本当にお嫁に行けなくなります!」


「大丈夫だよ、夕夏ちゃん。 きっと、この声を聞いた誰かが夕夏ちゃんをお嫁にもらってくれるはずさ」


「そう言う問題じゃないです、本当に何してくれるんですか!」


「なに? もう一回やって欲しいって?」


「そんなこと誰も言ってないです!」


「黒のレー「ちょ、ちょっと、ほんとやめてください! 私が悪かったです、調子に乗りました! もう勘弁してください!」


「え、なんて? 聞こえないなー」


「こ、こいつ……」


「何を言ったか、ぜんぜん聞こえないなー」


「私が悪かったっていったの!」


 少女が羞恥の赤面から怒りの赤面に変わったのを見て青年は満足そうに頷いた。そして、鞄から財布を財布をとりだした。


「夕夏ちゃん、のどが渇いちゃったから何か飲み物でも買ってきてくれる?」


「どうして私が「黒のレース」わ、わかったよ! 急いで買ってくるよ!」


 少女は青年の一言で不満げな態度を消し、いかにも、私は飲み物を買ってきたいです!、といった調子で青年に返事をした。


「あ、あと、校舎から出るときは気を付けてね」


「何でですか?」


「このタイミングで外にでたら夕夏ちゃんの下着が黒のレースだってばれちゃうよ」


「……マジですか?」


「マジです」


「ど、どうしましょう?」


「とりあえず、顔を見られないように走っていけばいいんじゃない?」


「全然解決になってないです……」


「いいから、急いで」


「でも……」


「早く行かないと、またやるよ?」


「急いで行ってきます! 風のように速く!」


 そう言って少女は全速力で自販機に走っていった。


 青年は少女の走る姿を窓から見下ろしながら、鞄から取り出したノートに筆を走らせた。




 雑談部観察ノート


 夕夏ちゃんの下着は黒のレース



見てくださって有難うございます。

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