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どうも、緋絽と申します。
久々に短編を書きました。とても短いです。
どうぞ!
あいつと俺は、どこまでも友人だった。と、言っていい。
中学2年生の時に同じクラスになり、学級委員を押し付けられて以降、大学に至るまで同じルートを辿ってきた。そりゃ時にはクラスは別になっていたけど、俺達は、いつも学級委員をすることで繋がってきた。
俺はサッカー部で、あいつは文学部。正直、俺達の関係は、あの学級委員をやらなければ築かれなかったと思う。
だから。俺は、面倒がりながらも学級委員を引き受け続けたのだ。
てっきり大学で別れると思っていたために、同じキャンパス内でその姿を見つけた時は、顎が取れるかと思うほど仰天した。向こうも驚いたらしい。
それ以降、終わると思われた俺達の関係は、切れることなく続いている。
学部も違うのに続く関係は、案外心地よかった。
「もうねーすっごいかっこよかったわけ。そりゃときめきもしますわ」
俺は背中に載せている彼女を無言のまま背負い直す。
飲みに誘われたと思って行ってみればすでに彼女はグデングデンに酔っており、俺が注文しようとすれば、「ねぇ聞いてる?」とことごとく絡み邪魔をした。
おかげで俺は一滴もアルコールを摂取せずに、酔いつぶれた彼女の分の代金を支払い、背負って帰る羽目になった。何だこの仕打ちは。
酔いであっちやこっちに飛んだ話をつなげてみるに、どうやら彼女はバイト先の男に憧れ、それなりにときめいていた所で恋人がいることを知り、玉砕したらしい。
「ねぇ、聞いてるのー?」
強く頭を締め付けられる。目も覆われて前が見えなくなった。
見えねえ!
「ちゃんと聞いてっから手ぇ首に回せ! 歩けねぇだろーが!」
「うっ、何よ、怒らなくったっていいじゃない」
怒鳴ったら彼女が少し泣き声になる。
俺は焦った。ダメだ、こいつ。メンタル弱りまくってる。
「私、今傷ついてるのにー! だからあんた呼んだんじゃんー!」
「もーう面倒くせぇなぁ! 悪かったよ!」
夜にわぁわぁ泣かれたらたまったものではない。俺は急いでこいつの家に向かい、慣れた手つきで鍵を探し出し、中に入った。
ちょっと待て。なんでこんなに慣れてるんだ。
まだシクシク泣いている彼女をベッドに座らせる。そして立とうとした所で、首に回されていた腕が緩まるのではなく、その拘束を強めた。要するに、首を絞められたようになったのである。
「おい、」
「どこにも行かないでよ」
文句を言おうとしていた俺は、思わず口を閉じる。
二人きりでよかった。ある意味。いや、いろんな意味では危ないけども。
俺は熱くなった頬を手で擦り、何とか冷却を試みる。くそ。落ち着け俺。特に意味はない。意味はないんだ!
「……わかったから、手ぇ放せ。寝るまでいるから」
「今日は、ずっといてよ。夜に目が覚めちゃったらどうすんの」
「その時くらいは我慢しろよ……」
「やだ」
よりきつくなった首の締まりに、俺は一つ溜息を零す。
これだからこいつは。こっちの気も知らないで。
「わかった。いるから。ほら……寝ろ」
「うん」
嬉しそうに横になる彼女に布団をかけてやる。その俺の腕を掴み、彼女は顔を摺り寄せて眠りについた。
俺はそっと溜息を吐いて、手を引き抜く。慎重に慎重を重ねて。
こいつの恋が叶わなくてよかったなんて、俺は考えてしまう。そんな俺に、彼女はそれなりに信頼を置いているのだ。おかしな関係に、少しだけ苛立つ。
いつだって慰めてやるし、傍にいてやるから。
だから、少しでもいい、俺の方を向いてくれないか。
目を赤くして眠る彼女の額に、俺はそっと唇を寄せた。
御読了ありがとうございました!