ノート
[存在]
愛しい君は私に振り返り
秋晴れの下で私に振り返り
何も言わず私に駆け寄った
私は夢想の中で
万回も君を愛し
万回も君を傷つけ
万回も君を消した
闇の中で君のシルエットが浮かぶ
千と一の幻想から君はゆっくりと生まれ変わった
幻想の君を殺して私は君の首を投げつけよう
君は君に食われ
君は君を食らう
君は唇から血潮を垂らし
柔らかく私に微笑む
そうして君は私を抱き締めるのだ
君の存在を私は想う
君は私に幻惑を見せた
雨の巷
人は無く
音は無く
ただ自動車の駆動音が響く
灰色の霧
煙草が燃える
雲が崩れる
街角の鋭敏さと思考の鈍麻とが争う
君は駆け寄り
柔らかく私に微笑む
そうして君は私を抱き締めるのだ
君の存在を私は想う
合わせ鏡
永遠の夢
君は何処にでも現れ
何処にもいない
君の吐息を鼻に浴びる時
私は君の存在が希薄になるのを感じる
歳老いた海
無謬な砂浜
君の顔が泡沫に映り込み
何万回も打ち砕かれた
夢から覚めた今この時
私は君の存在を狂おしいまでに意識する
私を支配し私に支配される君よ
君を抱いたその瞬間に君は霧散する
君を失ったその瞬間に君は確立する
そうして私は君を意識し続ける
たとえ君が死のうとも
君は世界の中心にいる
君は世界の周縁にいる
君の冷たい頬に私の手が触れたその時
君は何物よりも美しい存在になるのだ
君は何物からも脱却した存在になるのだ
[疎外]
君が微笑むその先に私はいない
君が見守る人は私ではない
だからこそ私は君に仕えるのだ
一人者の秋
夜長にて
ひたすらに君を想うのだ
君の全てを奪いたいし
君の全てを譲渡したい
女の恋は海に似ていると詩人は唄った
私の想いもそれの同類だ
私は君を飲み込み、打ち砕こうとする
君を排除し、受容しようとする
二つの肯定がせめぎあう
それでもやはり
私は君を愛しているのだ
[私は名誉が欲しいのです]
はい、はい。なんだって申しましょう。なんだって致しましょう。私は貴方の靴だって舐めるでしょう。貴方が死ねと言うのなら、様々な手段で死のうと思います。荒縄を下さるのならアカシヤの樹に首をくくりましょう。短刀を下さるのなら胸を刺しましょう。毒を下さるのなら何杯でも、それが海となろうとも飲み干してみせます。貴方が愛せというのなら親殺しの人非人だって愛してやります。貴方が憎めというのなら親でさえも憎悪の炎で焼きましょう。貴方のために私は働くのです。貴方のために私は動くのです。貴方が戦えというのなら手勢を率い神を地面に落としてやります。貴方が守れというのなら私は命に換えてもそれを守りましょう。
もしも貴方が私に、貴方のことを忘れろというのなら、忘れましょう。貴方は私の支配者なのだから。私は貴方に従いましょう。
けど、もしも貴方が私に、他の男を愛せというのなら、私は誰も知らない街へ行き、私は誰にも知られずに死にましょう。
私は貴方の奴隷なのです。愛している。その愛が喪われたその時、奴隷はどう生きていけばいいのでしょう。私は貴方の奴隷なのです。他の誰でもない、貴方の奴隷なのです。他の誰でもない、私自身の奴隷なのです。
[語呂合わせ]
私は狂人を見た
正真正銘の気狂いだ
彼らは孔雀のように着飾る
彼らは女の服を着る
彼らは媚態を撒き散らす
彼らは腐った言葉を使う
彼らの理性は消え失せている
彼らの感情は裸体を晒す
彼らの精神は固着している
彼らの知性は歪曲し始める
私は狂人を見た
正真正銘の気狂いだ
彼女らは少しでも空に近づく
彼女らは人を道具だと思ってる
彼女らは世界を狭いと考える
彼女らは幻想境を探している
彼女らの夢想は社会を変えた
彼女らの狂気は倫理を溶かした
彼女らの平和は悪魔を震撼させた
彼女らの臆病は世界を停滞させた
[無題]
私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。
人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。人は自由に動く。
全ての人間が気儘に戯れている。全ての人間が好きな神を信じている。全ての人間が嫌いな神を殺していく。全ての人間が科学を信仰する。全ての人間が飢えている。更なる知識を、科学の栄光を!
私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。私は失敗した。
売春婦、梅毒持ちの犬、恥知らず、人間モドキが政治的指導者だ。今となってはチャーチルも形無し、彼は男を漁っている。上院の議長は自らの眼球を取り除き議題の書かれたメモ用紙を虚へ挿入していく。豪壮華麗なるオランウータンはワルツを踊る。女達はオランウータンに夜を誘い、月の下、なべて人々は夢を見る。ルークリースは凌辱された。世界は黴にまみれ朽ちていく。ヴェトナムの子供よ、肥え太れ!
腸チフスの犬の内臓を食らおう。我々は原始に戻るのだ。国家も無い! 宗教も無い! 文明も無い! 共同体も無い! そうして、人類を辞めよう。私達は進化するのだ。
バクテリア、千切れながら夢を見る、あのバクテリアに。
[宣言]
私の言葉に意味は無い。狂人の戯言。1セントの価値もない。街角の主婦達の噂、議会で行われる戦い以上の意味は無い。
私の言葉に社会批判は無い。それなら国家を取り出してくれ。誰も触れられぬ。触れられぬ物にどうして言葉が当たるのか。精神の事象に喜怒哀楽を示す者を、人は気違いと罵る。そうして貴方は僕達と同じ穴の貉なんです。あおーん、あおーん、あおーーーーーん。
私の言葉はDADAではない。DADAは未来を否定する。DADAは意味を否定する。私の言葉は何も否定しない。私の言葉は何も肯定しない。事象は浮遊し言葉は爛れる。世界は一つの生理用ナプキンだ。
私の言葉は啓蒙しない。貴方は貴方の言葉しか持たない。私は私の言葉しか持たない。聾唖者を口説く者は言葉を用いない。盲者に絵画を見せるのは狂気である。そうして私は口笛を吹く。私は人間の言葉を話さない。
私の言葉に美しさは無い。私の言葉は溢れ出る液体だ。とめどもなく、恥ずかしげもなく溢れ出る。生理現象を褒め称えるのなら、貴方は真性の変態だ。全ての意義を打ち崩し、全ての意義を保護する為の言葉には、美しさも、意義も、為す事も存在しない。私の言葉→私の身体→私の虚言→私の妄想。
私は私の言葉だ。しかし私の言葉は私ではない。貴方は私でもなく私の言葉でもない。貴方は、少なくとも今いるここにおいて、貴方の言葉自体だ。行こう。私は貴方に空虚を見せよう。行こう。私は貴方に静寂を聞かせよう。
[子供の歌]
ま
だ
気
が
つ
かないの?
お前は何も
も
た
ら
さ
な
い
し何も消費しない
お前は産み出すが、その子供は誰の子供でもない
勿論、お前の子供でさえない
[冷徹なる火口]
首をもたげ、竜が世界を待っている。多くの淫売がスーツケースで欲情しながら0と1を泳いで渡るなかで。
世界に私が存在して世界も私も存在していないこの世界において君は実に扇情的だ。君の手が私の性器に触れる度に世界中で女の子達が自分の身体を傷つける夢の中に聖母マリアは鳥に内臓を啄まれながらも口に糊する。
おいで。お前の知らない憂鬱が今日も世界に花開いている。
おいで。世界はお前を恐喝している。
お前の行き着く所がゴール地点だなんて僕をバカにしているのかな? お前はお前以上の物であるがその一方で世間並の結婚を強いられている異性愛者達は炎を飲み込んでいた。産業資本家の精神中には国家が勃起しながらも孤独な竜は没落していく。竜は死体になったら何になるのだろう? さすがに電波塔にはならないだろうが。
私の憂鬱の中では希望と幸福とが身体を重ねている。怪物の子供、現代のモーゼ。それがお前だ。