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ガム。

作者: 一柳 紘哉

ガムがとてつもなく好きだと思う。

もう僕はガムなしでは生きていけないのではないかと日々思う。

キシリトールでは無くて、十円で買えるようなガム。それをいつも心から求めている。

キシリトールガムは僕の中ではガムじゃない。ガムとゆうものは口の中がべたべたして、いつまでもしつこくねっとりと味が残るものしか僕は認めない。

十分。口の中にガムが無い状態になると気持ちが悪くなってしまう。

そう。僕はガムがとてつもなく好きなのだ。

きずけばいつもガムのことを考えてる。

地下鉄の中でガムのことを考え。

夕食のときにガムのことを考え。

セックスのときにガムのことを考えている。

特に、セックスのときにガムをかみながらしないと気が狂いそうになる。


「もう我慢できない。ガム噛んでもいい?」


僕は恋人に尋ねる。


「馬鹿な事言わないで集中してよ」


「集中したいから言ってるんだけど」


「ねぇお願いだから馬鹿な事言わないで」


「……ガム噛んでいい?」


「いい加減にして!」


ループ。

僕はガムを噛みたいのにいつも彼女は反対する。

ベルリンの壁より強固な壁を、僕等はつくって崩そうとしない。歩み寄ることもしない。

だからいい加減彼女の事がうざったく感じてきた。

問題は僕のほうにあるのだろうか?

いいや違う。僕のことを認めてくれない彼女のほうに大体の問題はあるはずだ。

ただ僕は少々人よりガムのことを愛しているだけだ。

僕より変わった人なんていくらでもいる。人はみんな変わった所があってそれに折り合いをつけて生きてるものだ。

僕は異常じゃない。

今日も僕はガムを噛みながら地下鉄に乗り、バスに乗り大学に来た。

空はソーダガムのように綺麗な着色料色の空だ。

授業が始まるまでまだ十分もあったから、僕はコークガムを噛みながら喫煙場に向かった。

コークガムを灰皿に捨てて、ブルーベリーガムを噛む。煙草を吸う時にはいつもブルーベリーガムだと決めているのだ。

クチャクチャ。スー。フー。クチャクチャ。

美味いとか不味いとかをすでに超越した心地よさが僕の体の中を走ってく。

右ポケットに入れておいた携帯が鳴った。

取り出してディスプレイ画面を見た。

僕の恋人からの電話だ。


「もしもし」


「いいかい?三秒以内にガムを口から出しなさい。そうしなければ私はあなたを許さない」


「あなた誰ですか」


「そんな事は関係は無いのだよ、いいから早く口から出しなさい」


「そんな権利はあなたには無いはずだ」


「権利!?権利と言ったのかい君は!おかしな事を言う人だ、犬が逆立ちするより面白い事言うね!権利なんてあってないものだ、そんなもの何の価値があるとゆうんだい?目に見えないものの話は私は好きじゃない。」


「あなたの好き嫌いは関係ない」


「いいからカウントダウンだ・・・3・・2・1」


「クチャクチャ」


「それが君の意思か……よかろう私は君を許さないからな」


プツン。

電話は切れた。

僕は煙草を口に含みガムとの味の共演を楽しもうとした。が、煙草の苦みばしった味しかしない。

僕は動転して咽ながら煙を吐いた。

ガムの味を確かめる。しかしいくら噛んでも味がしない。

他のガムを確かめる。

コーク、ソーダ、ブルーベリー、青りんご、アップル。

全部の味が消えていた。

すべてのガムを地面にぶちまけて、口に運んでは吐き出し、味があるガムを探す。

目からこぼれた水が僕の口に入っていく。

空を見上げる。

ソーダガムのような空だけが塩味があった。



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