しばらくして。
今回から書き方を他の作家さん方のを参考に変えてみました。前よりは少し読みやすくなったのでは……と思いたいですね。
ああ、文才が欲しい。
樹君がユーレイ化してから早くも一カ月がたった。
昔はあんなに荒っぽかった私も今では、
「樹君、今日は学校へ行かれないんですか? 遅刻しますよ」
「いや、行くよ。行くけどね、遥ちゃん、キャラ変わりすぎ……」
こんな言葉遣いが板についてしまった。
自分からこうなれと言いながらちょっと落ち込んでいる樹君は放っておいて、私はこの言葉遣いを叩き込んでくれたクラスの女の子たちを思い出していた。
――――――3週間前。
「え!? 遠藤さんが女の子らしい言葉づかいを覚えたい!?」
「これは一大事よ! きっとあの遠藤さんに好きな人でもできたに違いないわ!」
「みんな、心して叩き込むわよ」
以上にテンションが高い女子の皆さんには正直引いたけど、今では感謝だ。本当に一カ月でよくここまで直してくれたと思う。
「……前は僕が朝起こしてたんだけどな。言葉遣いひとつでこんなに変るもんなんだ」
樹君が何やら遠い目をしているが、そんなことはお構いなし。未だに男心というものだけは理解できない。
「早く行かないと本当に遅刻しますよ。私、置いていきますから!」
あ、ツンツンしてるところは変わらないんだ、と訳の分からないことをつぶやいて復活した樹君のことは本気でスルーして玄関をとびだす。今回は少し走らないと本当に走らないと遅刻してしまうかもしれない。
「樹君、私、少し本気で走りますけど、大丈夫ですよね?」
それだけ言って返事も聞かずに走りだす。まあ、樹君はユーレイだし、本気で走ろう(飛ぼう?)と思ったら私よりも速いだろう。
「……フゥ、さすがにちょっと疲れたわね」
「は、遥ちゃん、速すぎ……」
ユーレイなのに樹君が軽く息を乱している。ユーレイでも走れば息が上がって疲れも感じるのだろうか。
……まぁ、浩紀さんが樹君にあんなこと出来たんだから、疲れも感じて当然か。
「とりあえず、私は先に教室に入ります。樹君はそのみっともなく乱れた息を整えてから来てください」
遥ちゃんヒドイっ、とか言いながら空中で丸くなった樹君を軽く無視して昇降口へと向かう。結構ギリギリの時間なので、周りにいる人は少ない。
その数少ない人たちに愛想笑いをふりまきながら、私は自分のクラスへと向かった。
……そういえば最近、やけに男子から熱い視線を感じるのは気のせいか?
教室に入って一番に話しかけてきたのは、西島君だった。
こいつは主に私と樹君が別々に教室に入ってきたときに私に話しかける。
「遠藤さん、おはよう。今日井上先輩は?」
「まだ外だ。それにしても何で樹君が俺のそばにいないときだけ俺に話しかけるんだ?」
「俺が相手の時は前に戻るんだ!? ……いや、だって井上先輩がいたら」
「僕がいたら何だって?」
「!?」
いつの間にか樹君が西島の後ろにいた。私は樹君が近づいてきたのが見えていたけど、なんか面白そうだから黙ってた。
西島が樹君を前にわたわたと慌てているのを横目に、私は自分の席に着いた。もうそろそろ担任が来るころだろう。
荷物を一通り片付けて、樹君がいるほうへ視線をやる。終始にっこり笑っている樹君に対し、西島は可哀想なほど冷や汗をかいているのが分かる。
面白いので、先生が来るまでの間、しばらく観察することにした。
しばらくして、樹君が私の視線に気がついたのか、振り向いて……一瞬消えた。
と思ったらそこには機嫌よく笑う樹君がいた。
西島は何も気がつかなかったようだし、目の錯覚か?
それから数分後、いつもよりちょっと遅めの時間に担任が入ってきた。
走る必要無かったじゃん!!