こうはい。
やっと二人は学校へ行きました。この不良学生めっっ
そんなこんなで次の日、俺は自分のクラス、2年3組にいた。
「お前、学校にまで付いてくるのかよ」
「だって、遥ちゃんいないと僕暇だし。ついてきちゃだめだったかな」
「ダメに決まってんだろ! だいたい、他の奴らに見えないんだから俺がお前としゃべると俺が変な人に思われる!」
そこまで言い切って俺は慌てて自分の口を押さえる。恐る恐る周りを見渡すと、俺を変人でも見るような目で見るクラス一同。まだ朝早くて教室にいる人数が少ないのがせめてもの救いか。……睨むよりも愛想笑いしたほうが変な噂になりにくいか? なんてことを考えながら一応笑ってみる。自分でも顔が引きつっているのが分かる。くそっ、これも全部樹のせいだ。
「……今のは遥ちゃんが悪いんだからね」
「(お前は俺の授業が終わるまでどっか違うとこ行ってろよ。自分のクラスとか)」
一応反省して今度は小声で言ってみる。後から気がついたんだが、一人でこそこそ独り言いってるほうが怪しい。
「だってな~。自分の教室行って花とか飾ってあったら虚しいし。僕は遥ちゃんといるほうがいい~」
「(駄々こねても駄目なものはダメ。さっさとどっか行け)」
ぶ~、とか気色の悪いことを言いながらやっと樹が教室を出て行った。律儀に開いたドアから。別にそのまま壁通り抜けて行ってもいいのに。そんなことを考えながら樹が出て行ったドアを見ていると、ふと影が差した。
「今の、三年の井上樹先輩だよな」
「え!? あいつのこと、見えんの?」
目の前に立っていたのは、確か同じクラスの……、
「西島拓也君だっけ」
「そう。覚えてくれてたんだ。俺、井上先輩の後輩なんだ」
道理で樹のことを知ってるわけだ。あいつは身長も高いし、何気に運動神経もいい。というわけでバスケ部に入っていた。そこそこ強かったらしい。樹がバスケやってるとこ一回も見たことがないが。
「俺、井上先輩が亡くなったって聞いてすっげぇショック受けてさ。でもあれ、井上先輩だよな」
「んー、まあ、そうだね。ユーレイだけど」
「井上先輩と遠藤さんって、どういう関係なの? 井上先輩があんなにべったりくっついてるなんて」
「幼馴染。家近いんだ。それだけ。つかやっぱりあれってべったり憑いてんだ」
俺が真剣にどうやって樹を離そうかと考えていると、西島君が身を乗り出して話し始めた。近いから(怒)。
「俺、井上先輩のこと尊敬してるし、先輩には早く成仏してほしんだけど」
「別に俺は樹のこと尊敬もしてないし好きでもないけど、早く成仏してほしいな」
俺が樹のことを尊敬してないということを聞いて、若干信じられないという顔をした西島君が何かを言おうと口を開いたが、思いとどまったのか何も言わなかった。男のくせに、言いたいことぐらいはっきり言え。まったく。
「まあ、とにかく井上先輩が成仏する方法、探そうぜ」
「そうだな。困るのは俺だし。で、何か考えがあるのか?」
「べたかもしんないけどさ、普通ユーレイがこの世に残るのってさ、何か未練があるからじゃないのか」
「なるほど。けどあいつにこの世に残るほどの未練があるとは思えねーんだが」
あいつがこの世に残るほどの未練。何か思い当ることがないか、樹が落ちた時から順に記憶を遡ってみる。
「あ……」
「何か思いついたのか!」
「……プリン」
「……………」
あいつんちに行った時、樹のお母さんが出してくれたプリン、あいつのお気に入りだったんだよな。しかもあいつが一つだけ大事に残しといたやつ。
「まだ怒ってんのかな」
次回は井上先輩と西島君の感動の再会(予定)です。
そして少しずつユーレイの謎が解けて行きます。樹君にはまだもう少し成仏してほしくないですね。作者的には。物語が終わってしまいますから。