かぞく。
今回は樹が可哀想なことになっています。
「おーい、遥ちゃん?」
意識を前に戻すといつの間にか樹が俺の目の前に移動していた。
「樹近い……(この変態め)」
俺が樹から離れながら言うと、少し傷ついた顔をした樹が反論してきた。俺の心の声が分かったわけでもあるまいに。
「だって遥ちゃん、僕がいくら声かけても反応してくれないんだもん」
「だからって、近づくな! お前が近寄るとなんだか寒いんだよ!」
樹が頬を膨らませてやっと離れた。こんな幼稚園児みたいな事をするところは変わってない。つかなんでそんなところで拗ねるんだ。
「僕が近づくとそんなに寒い? それとも近づかれるのがそんなに嫌?」
「だからほんとに寒いんだよ。……分かったからそんな泣きそうな顔すんなよ。俺よりでかいくせに」
そうなのだ。樹は俺と並ぶと俺より10cmくらい高い。俺も157、8cmくらいはあるから、クラスでもわりと高いほうだろう。それなのにどうしてこんな性格になっちまったんだか……。ぶっちゃけこのサイズが泣きそうな顔してると……
「(……キモイ)」
「遥ちゃん……」
あ、口から出たか? 激しく樹が落ち込んでいるが、まあいいか。部屋の隅で丸くなってる樹は無視して俺は一人考え事を始めた。
「しっかし何で樹はこんなモノになっちまったんだ?」
「んー、それはね、僕もよく分かんない」
急に樹が復活した。つくづくよく分からないやつだ。しかし、樹まで原因が分からないとしたら一体どうしたらいいんだ? もし、樹がこのまま成仏しなかったら俺は一生付きまとわれることになるのか?
「……嫌すぎる」
「遥ちゃん……、一応何がと聞いてもいいかな」
「え、そりゃ勿論お前に付きまとわれるのが嫌に決まってんだろ」
また樹が部屋の隅で丸まってる。そんなに落ち込むんだったらここにいなきゃいいのに。馬鹿な奴だ。
「ところで樹、お前自分の家には行ってみたのか」
「……行ってない」
「行って来い」
俺の有無を言わせない声に樹が泣きながら部屋を飛び出していった。へー、ユーレイでも涙出せるんだ。つか今あいつ壁通り抜けて行かなかったか!? これからどうやって気をつければいいんだよ……。
「行ってきた!!」
「もう!? まだ30秒くらいしか経ってないよ!?」
樹の家は俺の家からだいたい5分くらい歩いたとこにある。確かに近い。でも30秒で行ける距離ではない。
「お前、どうやって行ってきたんだよ……」
「んー、直線で?」
「(なぜに疑問形!?)で、誰かお前に気づいた人いた?」
「兄さんが気づいた、と思う。声はかけてはこなかったけど、俺のことじっと見てたし」
「浩紀さんか。で、話しかけてみた?」
「声をかけようと思ったら、目そらされた」
「……………」
俺はそっと樹から目をそらした。
ごめんなさい。まだ学校へ行ってません。次回は行きます。コメント等いただけると嬉しいです。