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おわりとはじまり。

キャラ崩壊パート2。

これにてこの物語は終了となります。この物語は。

「何か、あっという間でしたね」

「そうだね」


 その日、私と樹君は二か月前と同じように並んで屋上の上に寝転んで空を見上げていた。

 違うのは、私の髪が少し伸びたこと。そして、樹君が今にも消えてしまいそうなほど透き通っていること。


「あのさ、遥ちゃん。すーっごく今更だけど、言ってもいい?」

「何ですか?」


 私は樹君の声で、隣に顔を向けた。樹君は自分から声をかけてきたくせに、空に視線を向けたままだ。


「あのね、僕、遥ちゃんのこと、大好きだったんだよ」

「……すっごく今更ですね」


 私の言葉に苦笑する樹君。そして苦笑いを浮かべたまま私に顔を向けた。


「そうだね。でも、言いたかったんだ。楽しかったよ。ユーレイになる前も、なった後も。だからね、ありがとう、遥ちゃん」

「………………」

「遥ちゃん?」


 私はふいっと顔を背けた。こんなの樹君らしくない。


「もう、最後くらい好きな子の笑った顔見ていきたいんだけどな」

「……じゃあ、行かなきゃいい」


 自分が子供っぽいことを言っているのは分かっている。樹君が困った顔をしているであろうことも。

 でも、受け入れられないこともある。


「樹君はね、いつも私のそばにいるから樹君なんです」

「何だよ、その理屈。いつまでも僕が傍にいるわけじゃないだろ。いくら幼馴染とはいえ」

「でも、樹君ならずっと傍にいてくれます。困った奴だな、って苦笑しながら」

「まあ、だろうな。……そうだ、遥ちゃん、いいこと教えてあげようか」


 樹君が上半身を起こして私を見下ろしながら言った。残り時間はもうない。

 彼の姿がどんどん曖昧になっていく。もうほとんど微かにしか見えない手を私に伸ばして、樹君が最後の言葉を言った。


「大丈夫。僕は平気だよ。……遥ちゃんもね」


 最後に一言加わったけど、あの日と同じ言葉。同じように遠ざかっていく姿。そこまで再現しなくてもいいのに。

 私の笑顔は間に合ったのだろうか。


「遠藤さん……」


 気をきかせて屋上の外で待っていた西島が近づいてきた。


「樹君はもう行ってしまいました。でも、まだここにいますよ」


 西島が私が指差すところを見て笑った。


 樹君はいつまでも、私の心の中に。




 ――――「彼がユーレイになってちょうど二カ月後、今まで恐ろしい顔をして校内をうろついていたのが嘘みたいに穏やかな顔で僕に言ったんだ。『ありがとう』って。そして消えていった」


 2週間前、彼のお兄さんはそう言っていた。ユーレイの姿は二カ月しかもたないらしい。

 他のユーレイは知らないけど、彼のお兄さんの親友は狂った。でも彼は最後まで穏やかだった。


「その差は何だったんでしょうか?」

「それはたぶんね、そばにいる人の違いだよ。きっと」


 僕はちょっと頼りなかったらしい、と言って彼のお兄さんは笑っていた。


 樹君、傍にいるのが私でよかったの? 今となってはもう聞けないけど。

 そしてもし聞いたら、樹君はちょっと怒った顔をして当たり前だと言うだろう。


 その日、私は夢を見た。樹君と並んで座っている夢。


「遥ちゃん、僕から寂しがり屋の遥ちゃんへプレゼントだよ」

「誰が寂しがり屋だ!」


 昔の言葉遣いが少し出てしまった……。でも、夢の中だからいいよね。

 でもこれでも、前よりは丸くなったよね?




 ――――――2年後。


「遠藤遥」

「はい」


 私は隣の県の高校を受けた。あれから勉強も頑張ったから、そこそこの進学校に入れた。

 浩紀さんに隣の県のを受けるって言ったら、そうか、と一言だけ言った。樹君がもし生きてたらそこの高校に行きたいって言ってたこと、知ってたのかな。


「…………井上陽平」

「はい」

「!?」


 思わず声のしたほうに視線をやる。

 そこには樹君よりもずっと小さい、でも気の強そうな男の子が居た。


「一緒なの、苗字だけじゃないですか……」


 樹君が最後にくれた私へのプレゼント。

 これからの3年間が、少しだけ楽しみになった。

気づいた方もいると思いますが、実はこの物語、私が個人的に書いていたのものの番外編だったりします。

なので、元ネタのほうもそのうち上げようかな~、とか思ったり思わなかったり。主人公違うんですけどね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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