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あのひとおなじそら。

サブタイトルは"あの日と同じ空。"です。分かりにくくてごめんなさい。

 ――――――キーンコーンカーンコーン

 どこか遠くで鳴るチャイムの音で、


「遠藤さん、終わりましたから早く起きてくださいね。そんなに私の授業は退屈でしたか?」


 目が覚めた私の前に、こめかみに青筋を浮かべた先生が立っていた。いくら言葉遣いが綺麗になったからといって、午後最後の授業を全部起きて受けられるようになっているわけがない。

 ……まぁ、前は一日中お昼寝だったからましにはなっていると思うけどね。


「明日は一番で当てますからね。ちゃんと予習してきてください」


 ハハハ、先生、顔は笑っているのに目が笑っていません……。

 確かに悪いのは私だけど、次からはちゃんと受けるから。……分かったからその目で私を見ないで!!


「災難だったな、遠藤さん。今日は俺も寝てたのになー」


 先生が教室から出ていった後、西島が話しかけてきた。あれ? 西島は樹君が居るときは私に話しかけてこないんじゃなかったっけ?


「井上先輩なら今日はいないよ。いつもならこの時間いるのにな」


 私がきょろきょろしているのに気がついたのか、西島が言ってきた。


「……先に屋上行ったのかな? じゃ、俺も屋上行ってみるわ」

「……相変わらず俺の前では素のままなのな」


 西島が何か激しく凹んでいるけど、ま、無視。

 教室を出て階段を一番上まで上りきる。その先にある少々重たげなドアの先が屋上だ。樹君がユーレイ化してからすっかり屋上に行く習慣ができてしまった。校内で人が少ない場所ってなかなか無いからね。


「樹君、もう来てますか?」


 声をかけながらドアを開ける。けど目の前には誰もいなかった。屋上の真ん中あたりに立って、辺りをぐるっと見回す。……ちょうど来た西島と目があった。


「……ッチ」

「今舌打ちしたよね!? 何、僕何か気に触るようなことした!?」

「はい。あなたの存在自体が気に触ります☆」

「何でそんなときだけ敬語!?」


 西島が屋上の隅で丸くなった。……つまんないの。樹君からかったほうが面白いや。樹君早く来ないかな。

 屋上の真ん中でごろんと仰向けに寝っ転がって空を眺める。もうすぐ梅雨に入るこの時期には珍しく綺麗な青空で、風も優しかった。


「あー、こんなところにいたの、遥ちゃん。探したよ」

「樹君、もう屋上に来てるのかと思って先に一人で来たんですけど。誰もいなくてびっくりしました」


 しばらくすると樹君がやってきて、私の顔を上から覗き込みながら言った。西島の存在は無視することにしたらしい。後輩なのに。

 樹君越しに空がはっきりと見える。この人、もうユーレイなんだよな。樹君も私が樹君越しに見ているものに気がついたらしく、空を見上げた。眩しそうに空を見上げながら、しみじみと口を開いた。


「そういえば、僕が落ちたのもこんな空がきれいな日だったな。もう一カ月も前になるのか」

「樹君?」


 また、また樹君の体がまるで空気に解けるように消えかけた。私が声をかけると、元通りに戻って私に笑いかけながら言った。


「どうしたの? 遥ちゃん」

「樹君、私が女の子っぽくなったらホントにいなくなっちゃうのかな……」

「遥ちゃん、それって……」


 樹君に突っ込まれて私は自分が何を言ったのか気がついた。これじゃまるで樹君にいつまでもいてほしいって思ってるみたいじゃん!! 私は樹君を成仏させるために女の子っぽい言葉遣いに直したのに!


「あ、わ、い、今の無し!!」

「そんな、全力で否定しなくてもいいのに」


 樹君が私の背後に回って後ろから抱き締めるみたいな格好になった。私の耳元に顔を寄せると、内緒話をするみたいに小さい声で話しかけてきた。


「そんなに僕と離れるのが寂しい?」

「う、うわ! 何言ってるの!? そんなわけないじゃない! 樹君最近浩紀さんに似てきましたよ!?」

「え、兄貴に!? やべ、自重しなきゃ」


 あ、そこはちゃんと反応するんだ。いつもどおりにの樹君に戻って安堵する。うん。色も性格も元通りだ。


「ほら、樹君、今日はどれ試してみますか? これ、浩紀さんが護身用にってくれたんです」


 私がとりだしたのは、いつかの(樹君にとっては悪夢の)本だ。


「いや、待って遥ちゃん。それはまずい。ホントに、いやマジでやばいから! 頼むから近づかないでー!!」


 真っ青になった樹君がものすごい勢いで私から離れていく。なるほど、これは確かに護身用に便利だ。


「おーい、俺の存在は無視ですかー?」


 どこかから誰かの声が聞こえてきたような気がするが、気のせいだろう。久々に樹君と遊んでやろうと思い、私は(本を片手に)樹君を追って走りだした。

 ……それから私の体力が尽きるまで延々と鬼ごっこが続いたことは言うまでもない。


「……おーい、ホントに俺の存在忘れちゃったの?」

本編そろそろ終了です。……あと2、3話くらいかな? でもあいつら勝手に動き出すからな……。もうちょっと長くなるかもしれないです。


本編終了し次第、こちらも番外編を書いていく予定です。リクエストある方はお気軽にどうぞ~♪ 

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