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観測者は猫を殺す

作者: 武倉悠樹

我輩は猫である。名前はまだ無い。


嘘。ホントはある。正確には名前じゃなくて、あだ名、的な、そんな感じ。


我輩は猫である。名前はシュレディンガーの猫。


嘘。いやわかんない。シュレーディンガーかも。いやわかんない。


まぁどっちでもいい。とにかく吾輩は猫であるんだよ、うん。ニャーン、なんちゃって。


にゃんちゃって。


うん。




さて、ところで、皆さんコレはなんでしょう。


そう、そこの君正解。これは箱。ね、うん。箱。


この箱ね。めっちゃ危険。中に青酸ガスとか入ってる。そう、アーモンド臭の。


いや、わかんない、我輩青酸ガス、匂ったことないし。


とにかく青酸ガス。吸うと死ぬ。アーモンド臭した瞬間死ぬ。怖い。アーモンド怖い。


いや、違う。アーモンドは怖くない。食べ過ぎるとにきびできるけど、アーモンドは怖くない。そこ注意。




そっちの隅の奴は。


うん、我輩わかんない。多分アルファ波を出すラジウムの箱。らしい。


で、何が言いたいかって言うと、我輩、いわゆる波動関数系。今流行の。


ごめん嘘ついた。流行ってるかどうかは知らない。その辺の裏原事情我輩詳しくない。なにせ、箱の中住まいですから。


とにかく我輩メッチャ揺らいでる訳。現在進行形で。


その揺らぎたるや、もう生きるか死ぬかな訳。実際問題。切実。我輩的に死活問題。


でも、本当はそこじゃない。わけ。問題は。




我輩、今自由なわけ。


箱の中、もう生も死もどっちもありうるわけ。デンジャラスなわけ。我輩どっちでもあるわけ。


なんでかって、君アホですか。


要は波動関数が生か死かに眼が行ってないわけだけど、箱の中を満たすすべての物質の運動と位置と状態って言うのも不確定なわけで、だから我輩自由なわけ。


え。いや。それはわかんねぇよ。


うん。いや、でも。


ああ、もう。とにかく我輩自由なわけ。あの蓋開くまでは。


何物も我輩を縛れないわけ。




だから我輩、発情期張りにこの箱に向かって腰とか振っちゃっても大丈夫なわけ。自由だから。


興味本意で鏡で自分の肛門眺めてみても大丈夫なわけ。我輩自由だから。


気になるあのメスに向かって大きな声で告白してみたあと、メス声で「うん、いいよ」とか言ってみても大丈夫なわけ。


そのあとメッチャ死にたくなるけど、でも青酸ガスでしか我輩死なないから。大丈夫なわけ。自由だから。大丈夫じゃないけど。


で、一連の行動のあと、箱の隅に向かって「なんてな。全部聞いてるんだろう」とか盗聴器を前提にした台詞とか行ってみてもいいわけ。


波動関数的に盗聴器はありえないけど。


拙者が言いたいの。あ、拙者じゃねぇや。えー。だから我輩が言いたいのは、まさか、生と死の二択を迫られてる猫がメス声出しながらメッチャ腰振ってるかもなんて、


あ、蓋、開、うっ。




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にゃんちゃって。


今回生きてるパターンでした。


ドッキリ大せ…………え。うっそ。まじで。


見てたの。


え。うっそ。


まじで。いつから。


……。我輩は猫であるから。


それアレじゃん。最初っからじゃん。


うっそ。腰振るとこも。


あー。それあれじゃん。まじで。


死ぬしか無いじゃん。


もうこの箱開けるわ。う。アーモンド臭が。


うぐっ。




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