桜の木の天使
俺の名前は御手洗 英介。
今、俺は学校の桜の木の下でおもちゃのピアノでいつものように曲を作っていた。
おもちゃのピアノのなのであまりいい音ではないが、これが楽しくてたまらない。
いつものように俺はそのおもちゃのピアノで弾いていると、どこからか声がした。
「素敵な曲だね」
俺は声がした方へと向く。
そこには桜の木があるだけで誰もいない……。
「あれ?確か声がしたような気がしたんだけどな……」
「上見て」
「上?」
俺は上を見る。
そこには桜の木の枝に座っている、天使の羽根が生えた少女がいた。
「こんにちは」
その少女はふわっと羽根を羽ばたき、俺の近くまでやってきた。
俺はあんぐりと口を開けて少女を見ていた。
「聞いてる?」
そう聞かれハッとして目を瞑り深呼吸を一つして改めて少女を見るが、やはり背中には天使の羽根が生えていた。
コスプレとかではなく、生えているのだ。
どう見ても天使にしか見えない。
「君、天使?」
気づいたら俺はそう聞いていた。
「天使以外に何に見えるの?」
少女はそう答え、あぁ確かに天使にしか見えないので天使だと確信した。
「そうか、天使か。うん、天使にし見えないもんな……」
うん、確かにそうだ……天使にしか見えないからな……と考えていたら天使って実在したっけ?と思い、少女を見て驚く。
「天使!?」
「うん、天使よ」
「天使ってあれだよな?あの天使だよな?え?なんで俺天使みえてるの!?」
なんで!?え、もしかして俺死期近い?え、死ぬの?嫌だ、死にたくない!!
そんなことをグルグルと考えてしまった俺に少女は何故か笑っていた。
「笑い事じゃないよ!俺、死ぬのか?」
「ふふっ死なないわよ。私がこうやって現れたのはあなたのピアノのに惹かれたからよ」
「ピアノ?あぁこれのことか」
俺は先ほど末まで弾いていたおもちゃのピアノを見る。
俺は適当におもちゃのピアノを鳴らすとポーンと音がおもちゃのピアノから流れる。
「そうよ。ねぇさっき弾いていた曲って何ていう曲なの?」
「さっき?……あぁアレか。あれは俺が作った曲だよ」
「あなたが作った曲だったの?」
少女は驚いた顔で俺を見ている。
俺は先ほど弾いていた曲を弾いてみると少女は目を瞑り聞いていた。
曲が終わると少女が拍手していた。
「ねぇ、他にもこのピアノで弾ける曲ってあるの?」
「あぁ、あるよ」
「もっと聞かせてくれる?」
少女がそう言ってきたので俺は今まで作ってきた曲を弾いた。
俺達の周りに俺がおもちゃのピアノで奏でる曲が流れ、全て弾き終わると少女の拍手が鳴り響く。
「素敵!!もっともっとあなたの曲が聴きたいわ」
「ありがとう」
そう言われ、俺はもっともっと聞かせたい、弾きたいと思った。
やはり人に聞いてもうのは悪い気はしない。
「あ、名前言ってなかったね。私は恵美、よろしくね」
少女は恵美と名乗った。
そういえば、名前言ってなかったなと俺も思い出した。
「俺は英介。よろしくな」
「そうだ!あなたにこれをあげる」
恵美が渡して来たのはクマのストラップだった。
「これってツキノワグマか?なんでこれを?」
「お守り!」
「お守り……?」
このツキノワグマが?と俺は思ってしまった。
恵美は俺にそのクマのストラップを渡してきたので俺は受け取る。
「ねぇ、思ったけど……どうしてピアノで弾かないの?」
「家、母子家庭でピアノ買う余裕なくて……学校のピアノも自由に弾けないし……だから子供の頃、買って貰ったこのおもちゃのピアノで弾いてる」
「そうだったのね……あ、そろそろ日が落ちるわね」
時間が経つのは早い。
そろそろ確かに日が落ちる時間だ……辺りが少し暗くなってきていた。
「また、明日あなたの曲聴かせてくれる?」
「あぁ、もちろん!また明日、学校が終わったら来るよ」
「待ってるね」
恵美と俺は明日また会う約束をして、俺は家へと帰る。
「ただいまー」
「おかえり、英介。ご飯出来てるわよ」
「分かった」
俺は一旦自分の部屋にカバンを置き、手を洗いに洗面所まで行き、手を洗い、リビングへと向かう。
「あら?何かいい事あったの?」
「え!?……あぁ、まぁな。なんでわかったの?」
「顔に出てるわよ」
そんなに顔に出ていたのか……恥ずかしいな……と俺は思いながら夕飯を食べる。
食べて、しばらくテレビを見て、お風呂に入り、歯を磨き、寝る準備へと入る。
俺は明日が楽しみで仕方なかった。
明日はどんな曲を作ろうか……そんなこと考えながら俺は眠りについた。
朝、俺は目を覚ます。
清々しい朝だった。
「おはよう、母さん」
「おはよう、珍しく早起きね」
「まぁね」
俺は朝ごはんを食べ、学校へと向かう。
なんだかんだで学校に行ってる間でも、恵美に聞かせる曲を頭の中で作っていた。
やっと放課後になり、俺は急いで帰り、いつものカバンを持ち、恵美のいる桜へと向かうがその前にコンビニである物を2人分買っていく。
「恵美、来たぞ」
「本当に来てくれたのね!」
恵美は桜の枝からふわりと飛び降りる。
昨日見たばかりだが、やっぱり天使なんだなと改めて思った。
「恵美のために作った曲があるんだが……聴いてくれるか?」
「もちろん!聴かせて!」
「その前に……」
俺は先程コンビニで買ったある物を出す。
甘酒だった。
恵美はクエスチョンマークが着いたかのような顔をしていた。
「なんで甘酒?」
「あーほら、花見といえば甘酒?みたいな?感じしない?」
「まぁ、そうかもね」
さっそく甘酒を開けて恵美と乾杯する。
「美味しい」
「あぁ、そうだな」
「じゃあさっそく私の為に作ってくれた曲聴かせてくれる?」
俺は甘酒を置くと、カバンからおもちゃのピアノを出し、弾き始める。
俺と恵美の周りにおもちゃのピアノの音が流れる。
時間にして1分ほどで俺は弾き終わる。
「凄い!これが私の曲なのね!」
「気に入ってくれた?」
「えぇ、ありがとう!」
それから俺はその日から毎日この桜の木の下でおもちゃのピアノで曲を弾いていた。
これが楽しくて仕方ない。
特に恵美がいてくれて、更に楽しかった。
そんなこんなで1週間がすぎた。
桜ももう葉桜になっていた。
「桜も、もう終わりか……」
「そうね……」
「なぁ……恵美……」
俺は恵美のいる方へと向き、驚いた。
恵美が消えかけていたからだ。
「恵美!?なんで消えかけて……!?」
「もう、時間なのね……」
「時間……?」
「私がこうやってあなたの前にいれたのはこの桜のおかげ……でも、もう桜も終わり。ここでお別れね」
俺はいきなり恵美に言われ、困惑した。
恵美が消える?嫌だ!まだまだたくさん恵美に聴かせたい曲があるのに!
「まだ君に聴いて欲しかったよ……」
「うん……ごめんね。でも楽しかったよ……ありがとう!」
そう言って恵美は消えていった。
なんだか、呆気ない感じがしたが俺の中の1週間は楽しくて聴いてくれて嬉しくて充実した1週間だった。
俺は葉桜になった木を見つめ呟いた。
「恵美……ありがとう。また会えるよな……」
俺はそう呟くとどこからか風が吹き、恵美から貰ったクマのストラップが揺れ、声がした。
(またね。そしたらまたあなたの曲聴かせてね)




