第二十二話 反撃の矢、冷徹の一手 ダイロンの奥の手
ネオイクリプス総統ダイロンの魔力は、ただ強いだけではない。
戦場そのものをねじ曲げ、仲間の心を揺らし、
パレットバトラーズを確実に“劣勢”へ追い込んでいく。
それでも、彼らは折れない。
この回で描かれるのは、
圧倒的な力に押し潰されそうになりながらも、
仲間の連携で一筋の突破口をこじ開けようとする瞬間。
そして鍵を握るのは――イリス。
彼女が放つ七色の矢が届くかどうか。
そのために、ヴァルカとアレサは
言葉より速い“阿吽の呼吸”でバトンを繋げる必要がある。
ふたりの一撃が、イリスへと道を開けるのか。
それとも、ダイロンの魔力がすべてを呑み込むのか。
戦況が静かに、しかし確実に動き始める――
【アレサ、息を合わせて大技】
ダイロン「……!?」
ヴァルカが走り出したのを見て、アレサはすぐに理解した。
アレサ(……そういうことか……ダイロンの注意を“こっち”に向ける……!)
アレサは地面を蹴り、全身の力を戦斧へ込める。
アレサ「うおおおおおおッ!!豪烈ブレイカー!!」
ドガァァァァン!!
アレサの大技がダイロンへ迫る。
ヴァルカも同時に突撃し、二人の攻撃が“同時に”ダイロンへ向かう。
【ジコーズ、ヴァルカへ反応】
ジコーズは胸部を斬られた衝撃で、本能的にヴァルカへ向き直る。
黒い霧が渦を巻き、巨体がヴァルカへ大鎌を構える。
ジコーズ「――――ッ!!」
ヴァルカ(……来る……!)
ヴァルカは振り返らず、そのままダイロンへ突き進む。
【ダイロン、全員の動きを察知】
ダイロンは一瞬で状況を把握した。
ヴァルカがジコーズを離れ、こちらへ突撃
アレサが大技を叩き込むために接近
ジコーズがヴァルカへ攻撃態勢
イリスは負傷して動けないように見える
ダイロン(……なるほど。ヴァルカはジコーズを利用して私の防御を乱すつもりか……)
ダイロン「くだらん……そんな小細工が通じると思っているのか……元最強戦士も老いたな!!」
ダイロンは両手を広げ、魔力を最大まで展開する。
【ダイロン、最大防御へ】
ダイロン「――“フル・バリア”」
バチィィィィィン!!
巨大な魔力膜が展開され、
ダイロンを中心に半球状の防御が広がる。
床の紋様が光り、空気が震える。
アレサ「くっ……! 固ぇ……!」
間髪入れず、ヴァルカも大技をくりだした………
ヴァルカ「まだだ!! 押し込め!!熊崩!!」
アレサ「く……ジコーズのでっけー攻撃が来るぞ!!」
二人の大技が同時に防御膜へ叩き込まれる。
ガガガガガガガガッ!!
衝撃が戦場全体を揺らす。
ダイロンは余裕すら見せ、
ダイロン「……無駄だ。この防御は破れない」
ジコーズの大鎌波動攻撃が放たれようとしている。
ヴァルカ「頼むぜダイロン!あれから俺たちも守ってくれよな!?」
アレサ「えぇぇい!あとは知らん!」
ダイロン「ジコーズの波動をこのバリアで防ぎつつ、ダメージも与えようと……愚かな…」
ヴァルカ「まぁ見てな!」
【本当の狙いに気づくダイロン】
ダイロン「……まさか……!」
視線を横へ走らせる。
そこには――
弓を構え、すでに狙いを定め終えたイリスがいた。
肩から血を流しながら、
震える腕で、それでも真っ直ぐに。
イリス「……真っ直ぐっ……!!」
七色の光が矢に宿り、
空気が震える。
ダイロン「やめろッ!!」
【七色の軌道、放たれる】
イリスは息を吸い、痛みを押し殺し、
ただ一言だけ呟いた。
イリス「――これで終わりだ!」
シュッ!!
その矢は真っ直ぐにジコーズのコアへと七色の軌道を描く。
ダイロン「貴様アアアアァァァァ!!」
ダイロンは慌てて魔力を解除し、矢の軌道を変えようと魔法を放つが間に合わない。
ヴァルカ「真っ直ぐ!!」
アレサ「真っ直ぐ!!」
イリス「――いっけぇぇぇぇ!!」
【ジコーズの消失】
ダイロンの妨害魔法は空を切り、
七色の矢は、黒い霧を裂きながらジコーズの胸部へ突き刺さる。
ズガァァァァァン!!
ジコーズの巨体が大きく仰け反り、黒い霧が爆発するように散った。
コアが砕け、内部から光が溢れ出す。
ジコーズ「グオォォォォッ!!」
その叫びは、
怒りでも、苦痛でもない。
“存在そのものが崩壊する音” だった。
【ジコーズ、消滅】
黒い霧が逆流し、巨体が崩れ始める。
腕が砕け、脚が崩れ、胸部が光に飲まれていく。
ヴァルカ「……やった……!」
アレサ「イリス!! お前……!」
イリスは弓を下ろし、その場に膝をつく。
イリス「……はぁ……はぁ……残念だったな……ダイロン……」
イリスはそのまま倒れこんだ。
ヴァルカ「(イリス…良くやった…)」
ジコーズの巨体は完全に崩壊し、黒い霧は光に溶けるように消えていった。
ジコーズ――消滅。
【ダイロンの絶望】
ダイロンは震える声で呟く。
ダイロン「……ようやく復活させたのに……何故だ……?この私が……許さん……許さんぞ……!!」
ヴァルカは剣を構え直し、アレサは斧を担ぐ。
アレサ「何故かって?ただ“俺たちを舐めすぎた”んだよ、ダイロン」
ヴァルカ「しっかりシバいてやる。覚悟しな…ダイロン」
ダイロンの表情から、初めて“余裕”が消えた。
【ダイロン、レオンを呼び戻す】
ダイロンは片手を天へ掲げ、
空間を裂くように魔力を放つ。
ダイロン「レオン!! 戻れ!! 今すぐだ!!」
その声は、
命令でも、呼びかけでもない。
“強制”だった。
【レオンの必殺技:アルトを吹き飛ばす】
遠くの階層で戦っていたアルトとレオン。
アルト「ハァ……ハァ…… レオン……やめるんだ――」
レオンの瞳が、突然“黒い光”に染まる。
アルト「……ッ!? レオン……?」
レオンは答えない。
ただ、剣を構え――
今までとは比べ物にならない速度で踏み込んだ。
バシュッ!!!
黒い斬撃がアルトの胸部を直撃した。
アルト「ぐっ……!!」
次の瞬間、
アルトの身体は吹き飛ばされ、
床を突き破り――
下の階層へ落下した。
【レオン、戦場へ急行】
レオンはアルトを追わず、
ただ、ダイロンの呼び声に従って一直線に走り出した。
【ヴァルカとアレサ、レオンの気配に気づく】
ヴァルカはジコーズの残滓を払いながら、
背後から迫る“殺気”に気づいた。
ヴァルカ「……来るぞ……!」
アレサ「この気配……まさか……!」
次の瞬間――
黒い閃光が二人の間を駆け抜けた。
ドンッ!!
風圧だけで瓦礫が吹き飛ぶ。
ヴァルカ「……レオン……!」
アレサ「おいおい……マジかよ……」
【レオン、ダイロンの前に立つ】
レオンはダイロンの前で静止し、
無言で剣を構える。
その姿は、
かつて仲間だった“レオン”ではない。
完全に、ダイロンの剣 だった。
ダイロンは満足げに笑う。
ダイロン「よく戻った、レオン…」
ヴァルカとアレサは、苦い顔で構え直す。
ヴァルカ「……最悪のタイミングだな……」
アレサ「ジコーズ倒した直後にこれかよ……!」
ヴァルカ「アレサ……気ぃ抜くなよ。」
アレサ「アルトはどうなってるんだ…!負けたのか!?」
レオンは無言のまま、
二人へゆっくりと歩み出す。
その一歩一歩が、
戦場の空気を凍らせた。
その瞬間だった。
レオンの身体が、
ふっと力を失ったように揺れ――
ドサッ
その場に崩れ落ちた。
ヴァルカ「……え?」
アレサ「お、おい……レオン……?」
レオンは動かない。
呼吸はあるが、意識がない。
まるで――
“魂を抜かれた”ように。
【ダイロンの手には――キューブ】
ダイロンはゆっくりと手を掲げた。
その掌には、
黒く輝く“キューブ”があった。
アレサ「……っ!!」
ヴァルカ「まさか……!」
ダイロンは笑う。
ダイロン「そうだ。レオンのキューブは――私のものだ」
ヴァルカ「てめぇ……!!」
アレサ「レオンを……利用するだけ利用して……!」
ダイロンはキューブを胸元へ押し当てる。
【ダイロン、超強化】
ゴォォォォォッ!!
魔力が爆発し、
床の紋様が赤黒く光り、
空気が震える。
ダイロンの身体が一瞬で膨れ上がり、
瞳が異様な光を放つ。
ヴァルカ「セイレン化は2段階あるのか!?いや、違うな……」
ダイロン「……素晴らしい……これがレオンの“力”か……!」
魔力だけではない。
身体能力
反応速度
魔力制御
耐久力
すべてが跳ね上がっていた。
ヴァルカ「なんてことだ……!」
アレサ「最悪だ……!」
【ヴァルカ、即座に判断】
ヴァルカは歯を食いしばり、アレサへ指示する
ヴァルカ「アレサ!!レオンを担いで離れろ!!」
アレサ「は!? 今!?」
ヴァルカ「今だ!!
あいつはレオンを“もう用済み”だと思ってる!!
狙われる前に離せ!!」
アレサ「……わかった!!」
アレサは急いでレオンを担ぎ上げる。
レオンはぐったりしていて、
抵抗は一切ない。
アレサ「イリスのところまで下がる!!」
ヴァルカ「行け!!」
【アレサ、イリスの元へ】
アレサはレオンを担いだまま、
瓦礫を飛び越え、
イリスの元へ走る。
イリスは肩を押さえながら、
その光景を見て目を見開く。
イリス「レオン……!?どうして……!」
アレサ「後で説明する…
ヴァルカでも時間稼ぎくらいしかできないだろう…」
イリス「……っ!!」
ダイロンはゆっくりとヴァルカへ向き直る。
その気配は、
先ほどまでとは“別物”だった。
ダイロン「さあ……ヴァルカ。ここからが――“本当の戦い”だ」
ヴァルカは剣を構え、苦い顔で呟く。
ヴァルカ「……最悪の中の最悪だな……」
【ダイロン VS ヴァルカ:圧倒的な差】
レオンのキューブを吸収したダイロンは、もはや“別次元”の存在になっていた。
魔力の奔流が身体から漏れ、床の紋様が赤黒く脈動する。
ヴァルカは剣を構え、真正面から突っ込む。
ヴァルカ「うおおおおおッ!!」
剣が閃き、大地を割るほどの一撃がダイロンへ迫る。
だが――
パシッ
ダイロンは指二本で受け止めた。
ヴァルカ「……ッ!?」
ダイロン「遅い。軽い。弱い」
次の瞬間、ダイロンがスイカスピアーを一振りする…
ドガァッ!!
ヴァルカ「ぐっ……!!」
ヴァルカの身体が吹き飛び、瓦礫を何枚も砕いて転がる。
既にヴァルカとダイロンには、絶望的な力量さがある事を告げていた……
ヴァルカ「クソボウズめ……」
形勢は確かに傾いた。
ダイロンの計略を打ち破り、仲間の連携がひとつの光となって戦場を照らした。
だが、その光は長くは続かなかった。
ダイロンは揺れない。
どれほど状況が変わろうと、彼の冷徹さは一度も乱れない。
その静かな一手が、すべてをひっくり返す。
パレットバトラーズが掴みかけた逆転は、
ほんの一瞬で崩れ落ちた。
そして――
希望だったアルトの姿は、戦場のどこにも見えない。
勝利の兆しと、深い絶望が同時に胸へ落ちてくる。
この回は、そんな“やってやられて”の揺れが最も強く響く瞬間だ。
次に動くのは誰なのか。
そして、アルトはどうなったのか。
次回もお楽しみください。




