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19/23

第十九話 孤高の牙ここに散る!燃え上がる白光 アルト覚醒

今回はシリアス寄りの回です。

ファングとアルト、そしてレオンの戦いが大きく動きます。

物語の転換点になるので、ぜひ最後まで読んでください。

「……クソッ、なんだよこの“負け確定ゲーム”は……!」


怒りが喉の奥で煮え立つ。

だがその怒りは、レオンだけに向いているわけではなかった。


本来なら――

アルトは“倒すべきライバル”だった。


だが今は違う。


まるで――

仲間のように。


アルトの動きは自分と噛み合い、

自分の攻撃はアルトの隙を作り、

アルトの読みは自分の生存を支えている。


その事実が、

ファングの誇りを強烈に刺激した。


「なんでだよ……なんで俺がコイツと肩並べてんだ……!」


苛立ちが胸を焼く。

だが同時に、

アルトの存在が“生き残るための唯一の支え”であることも理解していた。


レオンの斬撃が迫る。

アルトが受け流し、ファングが強打で押し返す。


その連携は、

言葉も合図もないのに自然に成立していた。


それがまた、

ファングの苛立ちを加速させる。


「クソッ……! マジでうぜぇ……!」


だが、止まれば死ぬ。

苛立ちも、誇りも、感情も、

今は全部飲み込むしかない。


ファングは血の滲む肩を押さえながら、

二刀を握り直す。


アルトもまた、

レオンの殺意を真正面から受け止めながら構えを整える。


二人の呼吸が揃う。

その瞬間だけは、

まるで長年の相棒のようだった。


レオンの必殺の軌道を、

アルトは紙一重で回避した。


その動きは完璧だった。

だが――完璧だからこそ、

ほんの一瞬だけ“気の緩み”が生まれた。


避け切ったという安堵。

それは戦場では致命的な隙。


レオンはその一瞬を、

悠々と拾っていく。


無表情のまま、

音もなく踏み込み、

アルトの懐へ滑り込む。


ザシュッ――!


鋭い斬撃がアルトの脇腹をかすめ、

鮮血が弧を描く。


「ッ……!」


アルトはすぐに後退し、

体勢を立て直す。


ただ、レオンにとってアルトへとどめを刺すには十分な隙だ。


だがそれはファングにとっても同じ。


ファングはその“わずかな予備動作”を見逃さない。


胸の奥で何かが弾ける。


(今だ……! このタイミングを逃したら、もう二度と使えねぇ……!)


ファングは歯を食いしばり、

二刀を逆手に構え直す。


それは、

彼が最後まで温存していた 奥の手。

強力な威力と引き換えに、

体力を一気に削り取る危険な技。


だが――

アルトが作ったこの“わずかな隙”を逃せば、

もう二度と撃つ機会は訪れない。


それほどまでに、レオンは強かった。


ファングは地面を砕く勢いで踏み込み、

二刀を交差させながら叫ぶ。


「オオオオオッ!!!」


その一撃は、

まるで獣が全身で噛みつくような、

荒々しくも鋭い必殺の突進。


レオンの殺意がアルトへ向いた瞬間、

ファングの影が死角から襲いかかる。


アルトは脇腹を押さえながらも、

その動きを見て理解する。

それがアルトを巻き込む迄に研ぎ澄まされた威力であることも。


アルト「(行け……ファング……!この一撃に賭けるしかない……!)」


レオンの目が、わずかにファングの方向へ動いた。


ファング「(恨むなよ…)」



【ダイロンの動き:最悪の準備】

スプロットの群れが、

倒れた幹部たちの亡骸からキューブを回収していく。


赤、青、紫、黒――

高濃度のエネルギーが詰まったキューブが

次々とダイロンの足元へ集まっていく。


その光景は、

まるで“死者の力を吸い上げる儀式”のようだった。


ダイロンは無表情のまま、

そのキューブを一つずつ手に取り、

淡々と確認する。


「使えない奴らだ……」


冷たい声が、

暗い空間に響く。


「だが、それも想定内……」


ダイロンの手の中で、

キューブが妖しく輝く。


「こちらには最強の手駒、 レオンがいる……」


その言葉には、

かつて仲間だった者への情など一切ない。


「幹部どもの高濃度なキューブも集まった。

 ジコーズを蘇らせ、テラを火の海に……」


ダイロンの無表情な顔を、

集められたキューブの光が怪しく照らす。


赤い光が頬をなぞり、

青い光が瞳に反射し、

紫の光が影を歪ませる。


その姿は、皆が知る“ノヴァ”ではなかった。


「さあ……始めようか」


ダイロンの足元で、

キューブが低く唸りを上げる。



【ファングの不覚】

ファングの奥の手が炸裂した瞬間、地面が爆ぜ、土が激しく舞い上がった。


轟音とともに粉塵が視界を覆い、世界が一瞬、白く霞む。


ファングは確かな“手応え”を感じていた。


(やった……! 今のは……!)


二刀に伝わった衝撃は、間違いなく“何か”を捉えていた。


それはただの空振りではない。


確かに、確かに届いたはずだった。


だが――


粉塵が濃すぎて、レオンの姿が見えない。


アルトも見えない。


(……アルト……? レオン……? どっちだ……?)


胸の鼓動が、

戦場の静寂にやけに大きく響く。


土煙がゆっくりと晴れていく。


ファングは息を呑んだ。


そこに立っていたのは――


レオンだった。


無表情のまま。

姿勢も崩さず。

呼吸すら乱れていない。


まるで、何もなかったかの様に。


ファングの背筋が凍りつく。


(……嘘だろ…… 今のが……効いてねぇ……?)


手応えは確かにあった。

だが、レオンの身体には傷一つ見えない。


粉塵の中で、アルトが叫ぶ……


アルト「ファング止まるな!!」


目の前にいたはずのレオンが――消えていた。


ファング「……ッ!?」


恐怖が背骨を駆け上がる。

ほんの一瞬、気遅れした。

その一瞬が、致命的だった。


レオンの気配が――

真横に現れた。


アルト「ファング!!」


アルトが叫び、

脇腹の痛みを押し殺してカバーに飛び込む。


だが、それは“間に合った”とは言えなかった。


アルトの剣はレオンの軌道をわずかに逸らしただけ。

有効打にはならない。


次の瞬間――


ズブッ……!


鈍い音とともに、

レオンのロングソードが

ファングの固い装甲をまとった胸部を貫通していた。


ファングの身体が大きくのけぞる。


ファング「……あ?」


何が起きたのか、

一瞬だけ理解が追いつかない。


だが、

自分が“ここで退場する”という事だけは

戦士として瞬時に悟った。


血が喉に逆流し、

口元から溢れる。


アルト「ファング!!」


ファングは苦笑し、

血を吐きながらアルトを見る。


ファング「……ここまでか……、わりぃな……」


ファング「柄でもねぇが……最後は……仲間が出来たみたいでよぉ……。この俺がなんかほっこりしちまったぜ……」


アルトの胸が締めつけられる。


ファングのことは、別に好きでもなかった。

むしろ、ずっとライバルで、ぶつかり合う相手だった。


だが――


今の言葉は、まったくの同感だった。


アルトの脳裏に、ファングと戦った日々が一瞬でよぎる。


何度も剣を交え、何度もぶつかり合い、何度も互いを認めなかった


だが、今は――確かに“仲間”だった


ファングは最後の力で笑う。


ファング「…… 先に逝くぜ……どっちが強えぇのか、地獄で……ぐふっ……」


胸から剣が抜かれる感覚とともに、

膝が崩れ落ちる。


ファングの身体が地面に倒れ込む。


その瞬間、

戦場の空気が凍りついた。


レオンは無表情のまま、

血のついた剣を静かに構え直す。


アルトは拳を握りしめた。


ファングの死。

レオンの殺意。

自分の無力さ。


怒り。

悲しみ。

悔しさ。


今までアルトに欠けていた、


世界の平和・希望への責任感


それが、ファングの最期の言葉で一気に形を持った。


心臓が熱くなる。


血が沸騰するように脈打つ。


レオンが無表情で剣を構え直す。


その瞬間――


アルトの身体から、白い光が噴き上がった。


空気が震え、地面が軋む。


アルトの黒鉄のボディが大気を飲み込む。


アルトにとっての最後のピースが揃った瞬間だった。


……アルト、セイレン化………



ここまで読んでいただきありがとうございます。

ファングという“孤高の牙”の生き様と最期を、

アルトの覚醒に繋げる形で描きました。

彼の死は終わりではなく、物語の大きな火種になります。

次回、覚醒したアルトとレオンの激突が始まります。

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