第七話: 初めまして
チーム全員の接続が完了し辺りを見渡す。
そこはクロスリンク内の都市型フィールド。
遠くでは上位ランク隊員が戦闘対応中のようだが、該当地域は遠いのかここはまだ静かだった。
AIオペレーターの女性音声が響く。
『現状確認とサポート準備を開始してください。上位ランク隊員は現場で対応中です。各自、状況に応じて行動してください』
颯真はチームを見渡す。桐生、二瓶、山口、久保――まだお互い顔を合わせたばかりだ。
桐生が口を開く。
「上位ランク隊員が対応中の地域はここから5キロ先です。ヘリックスが集中している為、周辺に直接的な影響は薄いですが油断は出来ません」
それを聞いた二瓶は端末も見ずに無言で歩き出そうとする。それを颯真が慌てて引き止めた。
「ちょ、二瓶! 勝手に行動しちゃダメだ」
二瓶は冷たい目で振り返る。
「構わない。チームなんてどうでもいい。俺は早く動きたいだけだ」
颯真は一歩踏み込み、真剣な顔で言った。
「分かってるだろ?お前もBランクなら試験経験者だ。単独行動の危険性だって、嫌でも分かってるはずだ」
二瓶は無表情のまま短く答える。
「分かっている。だが関係ない。俺は俺のやり方で行く」
颯真は引き止める為に肩に置いた手に力を込めた。僅かに無表情だった二瓶の片眉が上がる。
険悪な空気が漂い始めたところで、桐生が颯真の横に立ち、力強く声を張った。
「いい加減にしてください!二瓶さん、Bランクなら危険性を理解しているはずでしょう!勝手な行動は命令違反です!チームで動くことの重要性が分かっているなら、独断はしない!神谷さんも!ここは既にクロスリンク内です!リンクが作動する可能性がある中で無闇に力を込めないでください!端末データですぐ分かるんですよ! 分かりましたか!!」
二瓶は一瞬黙り込む。
颯真も言葉を失ったまま口をぽかんとあけている。
シンとした空気の中、
『Level Up!!』
久保のゲーム音が響いた。音を鳴らした本人はまるで他人事のようにゲームを続けている。
どうやら二瓶と颯真が揉めている間もゲームをしていたようだ。
「久保さん!!!!」
桐生の怒号が響いた。
そんな中、注意されていない山口が小さく震える声で何故か返事をした。
「は、はい……」
*
桐生は深呼吸してから、チームに向き直る。
「皆さん、私がこのチームのオペレーターです。全員の適合DNAや戦闘情報は私が管理しています。今後の作戦は私が立てますので、指示には従ってください」
颯真たちはまだぎこちないまま頷く。
――こうして、チームとしての初動準備が整った。
クロスリンクの穏やかな端で、次の行動のために桐生が静かにデータを確認していた。




