漆
「えっ、どういうことですか?」警察が来た後、店長に呼び出された。
「うん、実はうちダブルワークは大丈夫なんだけど
水商売ってのが前例が無くってね〜
で今日、警察も来たし。」変な沈黙が流れる。
「でね、本部としてはちょっと制度を見直そうと言う事で、杏さんには申し訳ないけど制度が決まるまで
会社を休んで貰えるかな?」店長が済まなそうに話す。
「エッ、でもお給料いただかないと!」杏が思わず席を立つ。
「それは会社の方からのお願いだから基本給は出すよ。
ただ、改正で水商売がダメになったら…その時はね?」暗に面倒な人は辞めてもらいたいと言う感じだ。
「お客さんが水商売とか飲食多いのに?」杏がにらむ。
だんだん性格がキツくなって、すぐ脅すようになってしまった。
「それはそう!ただ、ウチは卸が母体でそんなスーパーとして全国展開してる訳じゃないからね!
労働基準局とか行きそうだから怖いわ〜杏さんは。」
店長も警戒している。が、それくらいで良いのだ、シンママは。
1人で家庭を守っていかなくてはいけないのだから。
早々にスタッフ控室から追い出された。
「ハア〜ッ」溜め息をつきながら夕飯の買い物とスナックのママに頼まれた物を買う。
「煙がない所に煙は立たないからね〜」すれ違いざまパートさんが嫌味を言う。
「ハッ、嫌疑は晴れましたけど?
それに煙に煙じゃないでしよ?
火の無い所に!ですよ。大丈夫?お子さんの学力?」口の端で笑って去った。
「こんな性格じゃ無かったのになあ〜」自分の変化が怖い。
「どうしょ?ママに時間増やして貰おうかな?
いや、次の仕事探す方が先決か?」悩みながら店に向かう。
途中、ゲーム会社のビルの裏側を通る。
ビル全体が禁煙みたいでビルに入ってる会社の人は、皆ビル裏のしまむ◯の業者出入口でモクモクしてる。
そこにあの天パの眼鏡のアル中も居た。
「あっ…」しまった。目が会ってしまった。
走って来た。
「そんな格好してたら、もう全然主婦だね。分かんなかった!」なぜか少し明るい。
「谷川さんでしたっけ?」うろ覚えで聞く。
「いや、大谷だよ。まっ、いいや。それよりおかげでシナリオの突破口見えてきたよ!」
大谷が明るくなった。よかった。これでアル中からは
脱出できそうだ。
「青少年向けだから〜スナックアクアを喫茶店設定に変えて、ママもマスターに変えて、
そこに保護観察中の男子高校生がお世話になるんだよ♪」大谷がウインクする。
『うん?ママがマスター?で保護観察中の男子高校生は…私?』思わず、自分を指さす。
大谷が頷く。
「ちょっと!私の濡れ衣はもう晴れましたから!
犯行時刻、私がスーパー内で働いてるのが確認されました!」杏がきつめに言う。
「でも…なんか早くない?スーパー?」大谷がニヤニヤしてる。
本当に人の不幸を!
「…会社からしばらく休んでくれと言われたんですよ。」杏が肩を落とす。
「ヤッパリ!テレビですごい騒ぎだから店に見物人が来たら嫌だからだね!」天パアル中改め大谷が当然と言う顔をする。
「そうなんですか?知らなかった…」本当に夫が亡くなってから全然テレビを見なくなった。
それどころじゃ無いのだ。
「顔は出てないけど、謎の美女の保険金殺人みたいになってるよ。」
杏が気色ばむ。子供達とか大丈夫だろうか?
「白いワンピースと麦わら帽子って言うのが、くすぐるんだろうね。」大谷が楽しそうだ。
「本当に私関係ないんですけど…」杏が途方に暮れる。
「主人公も濡れ衣なんだよ。襲われてる女性を助けたせいで、犯人にされるんだ。」もう大谷はゲームの世界に入ってる。
こっちは、それどころじゃない!どうしょう?
仕事探しに行くのも無理なんじゃないか?