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三茶浪漫  作者: たま
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「ママ〜これで良かったですか?」スナック『アクア』の昭和感タップリの扉をチリンチリンと鳴らして(あん)はスーパーの大きな袋をスナックママに渡す。

「ありがと、杏。アンタが昼職スーパーで助かるわ。」タバコをふかしてたママがタバコを消して腕まくりする。

「いえいえ、ママのおかげで助かりました。

夫が亡くなった時は、子供3人抱えてどうしょうかと思いました。」

杏の夫は三軒茶屋で役者をやっていた。テレビで脇役をコツコツとこなしていた。

おかげで子煩悩な夫との間に3人も子供が出来たが、子育てに忙殺されながらも専業主婦にどっぷり染ってた。

3階建の建売りを買い、これからローン返すぞ〜って時に!朝まで劇団員と飲んでた夫は、道路で泥酔して車にひかれて亡くなった。

団体保険に入っていたので家のローンは消えたが、葬儀後

夫の両親に任せていた香典は消えていた。

田舎に持って帰ってしまったらしい。

子供3人抱えて途方に暮れていたが、何とかいつも食べ盛りの子供3人の食料買っていた卸も兼ねたスーパーに正社員で雇って貰える事に。

しかし、これから教育費も掛かる年頃。

ご両親にも電話で返してくれと言ってるが、「本当に居る時までこちらで保管するからと」

今要るのに…

それまでは仲良くしてくれていたと思ったが、夫が亡くなれば縁は切れる。

このお盆の時期、夫の実家で気を使う奥さんは程々に。

夫が亡くなれば平気で切られるから、孫がいても。

それを踏まえて程々に。

共働きで疲れた身体で気に入られようと働く必要はありません!

それより結婚前から絶対生命保険に入ってる。名前を貸して親が払ってるのがあるはずなので、生きてる内に受取人を奥様に変えておくように!

水商売もしょうかと昼の飲み屋街を当てもなく歩いてると急に男に肩を抱かれた。

「ね〜ちゃん、金 困ってんのか?稼げるとこ紹介しよか?」顔の前に手で輪っかを作り上下させて、男が路地に引きずり込もうとする。

「ヤメて!ヤメて下さい!」杏は抵抗する。

つい最近まで専業主婦で全くの世間知らずだ。

この男が何者かも分かっていない。

「姉ちゃん〜ええ年なんやから分かるやろ?

やる事やらなあ金にならんで!」本能的にとにかく振りほどこうと抵抗する。

「アンタ〜?人の店の前でスカウトやめて!真っ昼間から!」ほうきを持ったマダムが仁王立ちで男の前に立ちはだかる。

「ゲッ、アクアのババアかよ!」男がやっと杏から離れた。

「シッシッ!」とマダムはほうきで男を払う。

杏はマダムに駆け寄る。

「ありがとうございました!」言った同時に涙がこぼれた。

「どうしたの?普通の奥さんが、こんな場所ウロウロするから。危ないよ。」強くて優しい声。

思わずその小柄な肩に泣きついてしまった。


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