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作者: 人参大根

 僕の余命は3か月らしい。現実感なんてない。


 「佐藤大河さん、非常に言いにくいことですが、貴方の余命は3か月です。」

 「は?」

 

 意味が分からなかった。そもそも、これはただの健康診断的なやつの再検査だったはず。今だって、体はピンピンしている。


 「混乱されているのもわかります。しかし、この診断はほぼ確実です。」

 「ど、どうしてですか。僕、今だってこんな元気なのに。」

 「残念ですが…。」

 

 先生の説明によると、僕の心臓は3か月後にはほぼ確実に停止するらしい。この病気は一世紀に一人いるかいないか、くらいの病気で心臓拡大症(※架空の病気です)というらしい。劣性遺伝性のもので、病気自体は古代ギリシアの頃から知られていた。心臓が拡大していき最後には肋骨に圧迫されて拍動できなくなり死ぬらしい。


 「そんなの…。治せないんですか?」

 「症例の少ない病気なので…。何とも言えないというのが正直のところです。」

 「方法が絶対にないってわけではないんですね?」

 「いえ…。手術をして死期を早める確率のほうが高いです。」

 「…。」

 「今日のところは帰ります…。」

 「はい…。力及ばず申し訳ありません。」



 家に帰ると、両親が暗い顔でリビングに座っていた。話はもう聞いていたのだろう。


 「お母さん、どうしよう…。僕、死ぬってさ。」

 「あんた!そんなこと言うんじゃないよ!」

 

 お母さんもお父さんも泣いていた。泣きたいのはこっちだといういらだちと、愛されていることへの感謝とが入り混じった何とも言えない感情に僕の口をつぐんだ。


 「これから、どうしよっか…。」

 「大河はなにをしたい?」

 「…。わかんないよ…。」


 この一言を最後に僕は自室に戻った。


 死んだらどうなるんだろう。これは、人類の永遠の謎であり、僕の今の最大の恐怖であった。明日はなにをしよう。学校に行こうか。いや、行く意味なんてない。勉強なんて、暇な奴がすることだ。明日があることを当たり前と思っている馬鹿が行くところだ。じゃぁ、僕はどうしよう。



 無情にも時間は僕を明日へと運び、月は沈み、太陽が昇った。やることは決めた。旅に出よう。1か月ほど。自分のことを知ろう。今まで生きていてずっと、共に生きてきた自分について知りたいと思った。旅が終わったら、最後は両親とゆっくり過ごそう。

 

 親にそう伝えると、ぼくの意見を尊重すると賛成してくれて多額のお金をくれた。1年は生きていけるのではと思う。改めて、両親の僕への愛を感じる。


 さぁ、どこへ行こう。そう思い、駅のベンチに座るといろんな人がいることに気づいた。スーツを着ている人、制服を着ている人、イヤホンをつけている人、妊娠している人、杖をついている人。彼らがすべて、僕ではない人で、それぞれに人生がある。もちろん、彼らの人生にきっと僕は含まれていないし、僕の人生にも彼らの影響なんてない。僕が死んでも彼らは驚かないし、悲しまないだろう。


 そう考えると、少し悲しいような、少しつまらないような気もする。もっと、僕を知る人たちを大切にしないといけないんだと思った。


 物思いにふけっていると、同い年くらいの女の子に話しかけられた。


 「こんな時間にどうしたの?学校なんじゃないの?」

 「それは、君だってそうなんじゃないか?」


 急に話しかけられて、驚いたが普通に話すことができた。


 「うふふん。さぼりです!あなたもそうなんでしょ?」

 「まぁね。」

 「ふぅん。それで何してるの?」

 「人間観察。」

 「ええー、気持ち悪いね。」


 初対面の名前も知らない人に急に話かけられて、なおかつ気持ち悪いと罵倒されたことがある人がこの国に何人いるんだろうか。


 「君はどうしてさぼったんだ?」

 「えへっ、私いじめられてて。いやっ、そんな重たい話じゃないよ?」

 「そうなの?」

 「うん。ほらっ、私って顔かわいいでしょ?それで、空気も読めないらしくって。」

 

 確かに彼女の容姿は整っていた。急に話しかけられて、それどころではなく容姿にまで注意をやっていなかったから気づかなかった。しかし、たしかに、空気は読めないだろう。それは、最初の一言目からわかっていた。


 「それだから、嫉妬とかでいじめられたりするんだよね-」

 「そうなんだ。」

 「君は?」

 「ん?」

 「どうしてさぼったのかって。」

 「あぁ、僕3カ月後に死ぬんだよね。それで、自分探しの旅やってるんだよ。」


 流石に彼女も驚いたようで、数秒言葉を探すように空を見つめて、急に決意した顔をして


 「分かった!私ついていくよ!」

 「え?」

 「だから!一緒にあなたを探してあげるってこと。」

 「い、いや大丈夫だけど。」

 「いいから、いいから。ついていきます!これはもう決定事項です!」


 どうしたものかと、悩んだがすぐに彼女も飽きるだろうと思ったのと、人から見える自分というのも大事かもしれないと思い、


 「わかった。いいよ。」

 「うんうん。正直でいいね!」

 「あ、そうだ名前なに?」

 「あ、言ってなかったね。私は大塚華だよ。はなって呼んでもいいよ!」

 「おう、はなよろしく。僕は佐藤大河だ。」

 「よろしく、たいが!」


 

 




                                      To Be Continued

文字数多く書くのは難しい…。

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