クリスマスお約束叙述トリック
※この小説には、ある叙述トリック(?)が仕掛けられています
サンタのおじいさんは赤い服を身にまとった。
蓄えている白い髭を軽くなでて帽子をかぶる。
今日はクリスマスだ。
さあ。今年も頑張ってクリスマスプレゼントを配ろう。
サンタのおじいさんの脳裏に、これまでのクリスマスの記憶がよみがえってきた。
プレゼントを配ったときの、子供たちの可愛い寝顔。
わくわくして眠れないでいる子は仕方なく後回し。再度訪れて、しゃぎつかれた子供の枕元にプレゼントを置いたときは、笑みがこぼれた。
良い子とは言い難い子の夢の中に入り込んで、「悪い子のままだったら来年はナシだぞ」と警告してプレゼントを置いたけど、良い子になってくれたかな?
親御さんたちがメイクラブ中だったときは困ったなあ。
そういえば美人シングルマザーからの、『サンタのおじいさま。連絡を待ってるわ♡』という電話番号つきの書き置きが、子供の枕元に置かれていたこともあったっけ。
楽しいハプニングばかりではない。
ソリを引いていたトナカイたちが、自分たちにもクリスマスを楽しませろと、ストライキしたときはピンチに陥ったものだ。
最近はスマホや暗視カメラでサンタを撮影しようとする輩が増えてまいってもいる。
そして子供たちの敵、ブラックサンタとの死闘。
聖なる夜の力を吸収しての天翔トナカイアタックさえ通用しなかったときは――。
「おじいちゃん」
孫娘からあきれ気味に言われて、サンタのおじいさんは我に返った。
「私の仕事用の服を勝手に着ないで! 毎年言ってるでしょ!」
孫娘はぷんぷんだ。
「またそれを着て、嘘回想で悦に入っていたの?」
「いいじゃないか。妄想の自由――」
「いいからさっさと脱いでよ! 子供たちにプレゼントを配れないじゃない! サンタの私の身にもなって!」
そう。
彼にサンタとしてプレゼントを配った経験は、実際のところ皆無。
なぜなら、サンタの『おじいさん』だから。
サンタの『祖父』であって、サンタではない。
叙述トリック(?)、いかがでしたでしょうか?
それではメリークリスマス☆