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事件


「印刷物ばっかり回される……絶対要らないよ電子化してるもの」


 私の思いとは裏腹に任されるのは簡単な作業とか何かの準備の手伝い。

まさかのお掃除とか。よくて今みたいな会議で使う冊子の印刷。

 それも何百頁とあるからだんだん憂鬱になってくる。


 次々と出てくる紙を眺めながらこのまま逃げ出してしまいたい気分。


 だけどここで負けるものかと言われた通りの部数を印刷しまとめて

指定された階層のそれも幾つかある中でも一番歩く会議室へ運ぶ。


 本日は幹部役員だけなく社長も出席する大きな会議。

 

「おい飲み物の手配はまだか?もう社長が来るから急いで」

「私は印刷を」

「言われたことしかできない訳じゃないよな?ちゃんと場を読んで」

「はいっ」


 部屋に入ろうとしたらベテラン社員さんに印刷物を掻っ攫われて追い出された。

飲み物っていうと会議用に小さいペットボトルのお茶がストックされていたはず。

 それはさっきまで居た印刷してた場所よりも更に遠い倉庫ときた。


 誰も教えてくれなかったけど見て覚えろって事かな?

 いや、落ち込むのは後でいい。


 今は先に考えて行動しないと余計に沼に嵌る。

 気合を入れて汗だくになりながらお茶の入った箱を運んで歩いていると。


 わあああああ!


「え。なに?なに?」


 会議室の方から悲鳴が聞こえた?


そう思ったらさっき居た会場からバタバタと人が出てきて去っていく。

 ぽつんと残る私は恐る恐る部屋を見る。


「ええ、はい。至急お願いします」


 そこには嘔吐して倒れている女性と何処かへ電話している社長。

 と、他僅かな社員。


「……え」


 私はどうしたらいいのでしょうか。と、聞くわけにはいかないので。

 その辺に箱を置いてそっと立ち去ることにした。


「居たのか」

「あの」


 ドスンと置いた所で社長に気づかれ視線がパチっと合う。


「あのお茶を用意したのは君?」

「え?」


 指差した方向を見ると確かに銘柄は私が今はこんできたお茶と一緒。


「どうなんだ?」

「違います!私は今これをはこんできたんです!そうですよね!」

「え?あ、ああ。そう、そうだな」


 何だか疑われたような厳しい言い方で聞くから焦ってテンパって。

上司なのに先輩なのにベテラン社員に食って掛かるような言い方をして。

 ハッと我に返って「失礼します」とその場から走り去る。


 入れ替わりに救急隊員が入ってきて倒れた彼女を運んでいった。

 

 混乱する職場。


 皆が興奮気味でいろんな話が行き交って落ち着くのに時間がかかった。

倒れていた女性がお茶を飲んで苦しそうに倒れた時に咄嗟に社長が吐かせて

 処置をしたそうで。通報も冷静にしていた。


  警察が来るような事件が起こるなんて初めてだと先輩も言ってた。

 


「……お疲れ様でした」

「おつかれ」


 ああ、気分がどんよりして何時もなら軽い家に帰る足が重たい。

 こんなに重いのはあんなテンパった自分を見せたせい?


「帰るのはまだ早い。警察に呼ばれたんだ。君もね」


 会社の玄関くらいまでトボトボと歩いて来た所で社長に呼び止められた。


「私が犯人だと?」

「君ではないが確実に存在はするだろう。協力するべきじゃないか?」


 呼んでいるのは警察で疚しいこともないし断る意味もない。

社長の車で警察署まで向かってそこから別個で話をした。


 テレビで見るような取調室に行くかと思ったら普通の部屋。


私は倒れた後に入ってきたからそれほど話すことはないはずが形式ですから。

と言われて結構な時間がかかった。

 その場に居た社長はきっと私よりもだいぶ長くなるんだろう。


 先に解放された私は外は暗いし最初は警察署の中で待とうと思ったけど、

特殊な場所だという先入観からか何となく居心地が悪くて。じっと入り口で

 彼が出てくるのを待っていた。


「お疲れ様です。時間掛かりましたね。疑われてるんですか?」

「犯人が捕まるまではそうだろう。君はもう疑われてはいないだろうけど」

「社長がそんな事するはずないのに。意味ないし」

「残念だけど社内にはそんな事をした人間が居る」

「どうするんですか」

「もちろん後は警察に任せて私達は通常業務で行くしか無い。とにかく彼女が

生きていてくれてよかった。死なれては困る、…色々とね」



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