最後の食事
被害者はすべてで4人。
アルマス、ジャスティン、ミリヤ、ライム。
職業はそれぞれ、勇者、剣士、魔法使い、僧侶。
彼らは4人ともいわゆる「最強勇者パーティー」のメンバーであった。パーティーランクは5年連続1位。実力も人気も兼ね備えたまさしく「最強」のパーティーだ。
しかも、このパーティーは、6年前に、大魔王ルシファーを殺し、この世界を平和に導いたという,比類なき実績まである。
4人は一つ屋根の下で共同生活をしていた。
第1発見者は、レオナという名前の家政婦だった。彼女は住み込みではなく、単発で仕事を受注しており、アルマスのパーティーから仕事を受けたのは初めてであった。つまり、レオナにとっては、パーティーとの初対面が、死体との対面だったのである。
もっとも、パーティーの家には鍵が掛かっており、レオナが家に入れたわけではなかった。
いくらチャイムを鳴らしても反応がないことを不審に思ったレオナが、窓から部屋の中身を覗いたところ、凄惨な光景を目撃したのである。
レオナの通報によって臨場した警察官は、これが「事件」であると直ちに断定した。すなわち、これは魔物のせいではなく、人間の仕業である、と。
部屋は荒らされてはいたものの、パーティーが戦闘した形跡はなかったのだ。そして、死体には一切外傷はなかった。
4人の死因は毒死であった。
死ぬ直前、4人は、共同生活をしていた家で、テーブルを囲み、朝食兼昼食を食べていた。まさかそれが最後の食事となるとは知らずに。
調査の結果、料理の中から、人間の致死量を超える猛毒が検出された。4人ともほぼ即死だったものと思われる。4人はいずれも食事には1口か2口程度しか口を付けておらず、テーブルを囲むようにして倒れていたのだ。
客観的な状況を考えても、動機の面を考えても、捜査線上に浮かび上がる犯人候補は、ただ1人しかいなかった。
セノンである。
セノンは、アルマスのパーティーに所属していた。
しかし、昨夜、パーティーから追放されていたのである。
そして、集めた情報によると、セノンはパーティー内でかなり不遇を味わっていたらしい。
戦闘では全く使ってもらえず、他方で、セノンは、パーティーが生活していく上での家事雑務のすべてをさせられていたのだ。掃除、洗濯、料理、ゴミ出しなどなど。セノンは魔剣士であったが、パーティーでの実質上の役割は家政夫だったのである。
その上で、セノンは、パーティー内で盗みの罪を被せられ、追放されるに至ったのだ。
セノンには、被害者4人に復讐をするだけの十分過ぎる動機があるのである。
そして、客観的な状況の方に目を遣れば、事件は密室で起こっていた。家の外鍵がかかっていたのだ。
被害者4人を毒殺し、外に逃げることができる者がいるとすれば、それは家の鍵を所有している者ということになろう。
前日までパーティーメンバーであったセノンが明らかに怪しい。
そこで、セノンに対して逮捕状が出されたわけであるが、セノンの居場所はすぐに見つかった。
セノンは、新しいパーティーとの出会いを求めて、ギルドに出向いていたのである。
ギルドを訪れた3人の警察官によって、セノンはあっけなく身柄確保されたのだ。




