悪魔の取り調べ
「これは一体どういうことなんですか!? 僕に一から説明してください!!」
目の前の男が、私に対して啖呵を切る。
この男の名はセノン。見た目に清潔感があり、着ている服も大層立派なものであるが、大量殺人事件の容疑者である。
そして、私——グラナムは警察官であり、ここは取調室である。
そのため、「一から説明してください」は本来的には私の台詞である。
とはいえ、ここで喧嘩をしていては取調べはスムーズに進まないだろう。
私は支障のない範囲で、事件と、現在の捜査状況について説明することに決めた。
もっとも、その前に——
私は取調べ室の壁に掛けられた電話を使い、「悪魔」を呼んだ。
しばらくして取調室に来た悪魔を見て、セノンは明らかに体を硬直させた。
「……僕に何をする気ですか?」
「まさか拷問するわけではないから、安心してくれ。ここは警察だからな」
私は、悪魔に、自分の隣の席に座るように命じた。
悪魔は深々と頭を下げた後にゆっくりと椅子を引いた。
「彼の名前は、ジューク。出自は悪魔だが、人間には慣れていて、人間に害を与えることはない。たしかに見た目はおっかないし、無口なところもどこか不気味だがね」
私は、過去に何度も、ジュークと協力して捜査をしているが、ジュークが話しているところは一度も見たことがない。とはいえ、言葉を理解してないわけではない。それどころか、ジュークは、人間以上に「言葉の真意」までもを理解しているのである。
「セノン、悪魔の好物が何か知っているかい?」
「もしかして人の臓物ですか?」
「それもそうかもしれないが、実は悪魔は、人間の嘘が大好物なんだ。悪魔は、発言が真実なのか嘘なのかを確実に見分けることができる。そして、嘘を見つけた場合……」
「どうなるのですか? やはりその人ごと食ってしまうのですか?」
「いや、単に笑うだけだよ。ケタケタケタケタとね」
ジュークは無口な悪魔であるが、笑うときは大声で、大胆に笑う。私が最初にその様子を見たときは、ジュークのあまりの変わり身に驚いたものだ。
「要するに、『嘘発見器』ということですか」
「まあ、そういうことだ。だから、セノン、くれぐれも真実だけを話してくれ。隣でケタケタ笑われてしまうと、取調べに集中できないのでね」
セノンは、ジュークの顔をじっと見つめている。まるで鏡のように、ジュークも同じように見つめ返す。
「セノン、悪魔が同席しているとそんなに嫌か?」
ここで首を縦に振れば、それはセノンが犯行を自白したに等しいのだが、セノンは首を横に振った。
「いいえ、構いません。僕は真実しか話しませんから。というか、そもそも、僕は何を話せばいいのですか? まずはなぜ僕が逮捕されたのかについてそちらから説明してください」




