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第99話 完全決着

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 攪王は怒り狂い、雄叫びを上げながらスキル『修羅化』を発動した。

 ただでさえボディビルダーの様に隆々とした筋肉が更に盛り上がり、超人ハルクの様な体型と化していく。

 体色も肌色から赤黒い色へと変わっていき、さながら阿修羅像の様であった。



 超人化した攪王は只野に襲いかかっていった。

 脇腹の治療を終えた只野も応戦する。


「『ミカエル』! あの化け物を抑えてくれ!」


 そこに黄金の甲冑を纏った美青年の大天使が現れる。

 ミカエルは光り輝く剣を持って攪王に向かい斬りかかっていった。


「天使風情が邪魔をするなあっ!!」


 攪王は拳の一撃でミカエルの剣を叩き折った。

 一瞬驚いたミカエルだったが、剣を捨てると翼をはためかせ飛び上がり、飛び蹴りを放った。


「ぐぉぅ……!!」


 攪王は防壁を張り必死に耐える。

 地面に足がめり込むほどの衝撃を受けたが、召喚獣の一撃を生身の人間が無傷で耐えきってしまった。


「マジかよ。最早人間を超えてるじゃねえか」



 只野は亜空間からグレネードランチャーとガトリング砲を取り出し、攪王を狙い撃った。

 攪王は巨大な防壁を作り、擲弾を受けても重機関銃の連射攻撃を受けても倒れなかった。


(やばいな。あの修羅モードになってから頑丈さが桁違いになってる。このままでは俺の攻撃が通らない。なんとか解除させないと)

 

 上空からミカエル。地上から只野の攻撃を受けても攪王はすべてシャットアウトしていた。

 飛翔しながら繰り出されるミカエルのソバットを攪王は受け止めた。

 その足首を掴んで、思い切り地面に叩きつける。


 ミカエルの顔面がみるみる間に血で染まっていく。

 攪王はそのまま何度も何度もミカエルの頭を地面に叩きつけた。

 害虫をハエ叩きで執拗に叩き潰すかの様に何度も。

 やがてミカエルは淡い光を放って消失していった。

 



「次は貴様だ~。只野」


 攪王はガトリング砲の連射攻撃を両腕でバリアを作りながら防ぎ、こちらに接近してくる。

 これだけ攻撃し続けているのでダメージは与えてる筈だが、怒りに燃える攪王はアドレナリンが出ているのか痛みを感じていないようだ。

 走りながら勢いを付け、殴りかかってきた。


「不味い! 一旦離脱だ」


 『瞬間移動』で攪王から後方100メートルの距離に移動する。

 直ぐに気配を探知した攪王は同じく瞬間的に移動し、只野の前に現れた。


「終わりだ」


 攪王の拳が只野の腹部にめり込んだ。

 『修羅化』により赤黒い肌の悪魔と化した攪王の拳が、燃え盛りながら只野の身体を突き抜ける。


「ぐはっ!!」


 アッパー気味に繰り出された拳によって、只野の身体はそのまま高々と舞い上がり、着地の姿勢も取れないまま地面に叩きつけられた。

 身じろぎもしない只野を見つめていた攪王は、やがて小さく呟いた。



「……さっさと起きろ。まだ死んでいないのだろう」

「ちっ、バレたか」


 致命的な一撃を受けたにしてはあっさりと立ち上がる。

 もっとも腹部を抑えてかなり痛そうにしているが。

 只野の背後から翡翠色のモフモフの獣が現れた。


「『カーバンクル』の物理軽減魔法か」

「おうよ。まったく、カーバルくんには一体何回命を救われてきたのか分からんわ。いつもありがとな」

「きゅっきゅっきゅぅう~♥」



 攪王は只野を鼻で笑う。


「ふん。そんな畜生を頼りにしているから貴様は弱いのだ」

「ああ。そうだよ。今ので実感した。いくら凄いスキルを沢山習得したところで、俺はやっぱり凡人だ。戦闘におけるセンスなんてまるで皆無の、()()()()の人間だ」

「ふ、ならばどうする」

「俺なりの戦い方でお前を倒すって事さ」



 只野は亜空間から数十丁の銃を生み出した。


「その技はさっき見た。今の『修羅化』した私に通用するわけないではないか」

「たしかにな。だから少し趣向を変えてみるぞっと」


 亜空間から現れた様々な銃が攪王を銃撃していく。

 通常時でさえ攪王を倒しきれなかったのだ。『修羅化』で強化された今の攪王には通用するわけがない。

 案の上、銃弾はあっさりと防壁に防がれた。



「ふはははは。この程度の攻撃、バリアを張るまでもないわ! ふはははは! ……つっ!?」


 突如、攪王はお辞儀の様に頭を大きく下げた。

 頭頂部が少し痛む。

 

 バッと上を見上げると真上から丸太が落ちて来たのが分かった。

 その他にもバット、鉄パイプ、ブロック塀、ボーリングの球、鉄筋コンクリートなどが降り注いできた。


「き、貴様!! 一体何をやっている! ふざけているのか!?」

「ふざけてなんかない。至って大真面目だ」

「こんな適当な物で攻撃して私を倒せると思っているのか!? ……あ痛っ」

「ダメージ受けてるじゃねえか。亜空間を通る間に魔力で物質を補強してあるから銃弾より効くんじゃないかと思ったけど正解だな」

「だ、だからって貴様! こんな不格好な攻撃で情けないと思わんか?」

「思わないね。お前に勝つためなら使える物ならなんでも使うさ。それに俺は凡人だ。美波の様な天才じゃない。攪王。お前だってそうなんだろ?」

「…………」



 攪王は押し黙る。

 その間にも只野による亜空間からの物質投擲攻撃が続いた。


 武器になりそうな物、固そうな物をイメージして何でも取り寄せる。

 ハサミ、包丁、鍬、鋤、スコップ、鉄球、レンガ、マンホールの蓋、自動販売機、テーブル、自転車etc……。 


 攻撃が止むと攪王は粗大ゴミの山に埋もれていた。

 かなりのダメージを負ったのか『修羅化』は解かれ元の身体へと戻っていた。

 ゴミの山が崩れ、中から攪王がふらふらと現れる。


「お、おのれ~只野! 私を愚弄しおって」

「馬鹿になんてしてないさ。俺は俺なりに全力で戦っている」

「もういい。貴様との戯れはここまでだ。私の最終奥義で雌雄を決めさせてもらおう」




 遂に攪王の乾坤一擲の技が放たれるようだ。

 ここまでボロボロになりながら良く戦った。

 自分で自分を褒めてやりたい。


 さあ最後のひと踏ん張りだ。

 こっちも全身全霊をかけて戦おう。



 攪王は右腕を空に掲げエネルギーを溜めていく。 

 小さな光だったそれは、徐々に大きく膨らんでいきやがて直径3メートルほどの巨大な球形に変わる。

 

「さらばだ只野一人よ。貴様はここまでだ」

「いいや! 終わらせやしないさ!!」


 只野はエナジーガン『ライファー』にありったけの生命力を注ぎ込んでいく。

 あの攪王のエネルギー弾に対抗出来るだけのエナジーショットを放たなくてはならない。

 

「喰らえ『攪命波』!!」

「500%エナジーショット!!」


 攪王は只野に向かって右腕を振り下ろすと、太陽の様に煌々と光る巨大な球体が降り注いできた。

 対する只野も、銃口から直径2メートル程のエネルギーの球体を作った。中心にエネルギーが収束しビームが射出される。


 500%エナジーショットは攪命波と衝突した。

 お互いのエネルギー弾が拮抗し、ジリジリと押し合いになる。

 だが、見る間に只野のエナジーショットが押され始める。


「はっはっは。所詮貴様はその程度だ只野ー!!」

「うおおおおおお!! ならば600%、いや700%だ!」


 只野は『ライファー』に注ぐエネルギーを更に増やした。

 とっくに限界の五倍の生命力を注入していたが、ここにきて七倍のエネルギーを注いだのである。

 これは言わば命の前借りである。

 只野は堪らず激しく喀血した。


「げほぁ!」

「無理するでない只野。さっさと諦めて灰塵と化せ。……グッ!?」


 只野の700%エナジーショットで攪命波がかなり押し込まれ始めていた。

 攪王の右腕が悲鳴を上げ、血管が切れ始める。

 エネルギー弾の鍔迫り合いは、攪王が七割ほど押し込んでいたのが一気に五分五分まで押し戻されてしまっている。

 

 負けじと攪王も右腕の血管から血を吹き出しながら、攪命波の出力を上げた。


「小僧がぁ!! さっさとくたばらんかぁ!!」


 攪命波は更に倍近くの大きさまで膨らみ、只野の目前までエネルギー弾が押し込まれていく。


「……うっ!! ……くっそ~! 800%、900%だ!!」


 只野が更に200%出力を上げると、ようやく攪命波を五分まで戻せた。

 だがその弊害で只野は全身から出血した。 

 目からは血涙が流れ、鼻からは鼻血が垂れ、耳や口からも血が溢れた。


 エネルギー弾の鍔迫り合いは激しい光を発しながら続いた。

 

「うおおおおおおおおお!!」

「うわああああああああ!!」


 やがて攪王が僅かに押し返し始めた。

 只野のエネルギーが尽き始めたのだ。

 徐々に自分が押している手応えを感じる攪王。


「いい加減くたばれ只野ーーッ!!」

「い、いやだ! 俺は絶対に皆の元に、……美波の元に帰る!! ――1000%エナジーショットだーっ!!」


 只野のすべてを注ぎ込んだエナジーショットは、攪命波を飲み込んでいった。

 優勢だった攪王はまさか只野にこれだけの力が残されているとは思わず、1000%エナジーショットを跳ね返すだけの力は無かった。

 まばゆい光に飲み込まれていく攪王。


「うおおおおおおおおーーーー!? ば、ばかなぁ!! 私が負けるなど……ありえん。ありえんぞおおおおおお!!」



 激しい光に包まれ、攪王の姿は消失していった。


 その光景を見届けた只野は満足そうに口角を上げると、その場に倒れた。

 全身から血を流し尽くし、青冷めた顔で地面に横たわるその姿は、魂の消えた抜け殻の様だった。











 ――あれ? ここはどこだ。

 なんだか見慣れた場所に思えるが、頭が上手く働かない。


 この懐かしい洞窟っぽい感じは『豊島町ダンジョン』か。

 自宅近くの何千回と通った雑魚専の低層ダンジョンだ。


 遠くに物音が聞こえる。ゴブリンの話し声だ。

 咄嗟に物陰に隠れて、敵の注意を逸らしてから急襲。

 こんなにビビっちゃって。ゴブリン一匹に情けねえな。


 ……ってこれ俺か!

 昔の俺の記憶って事か。




 あれ、場面が飛んだぞ。

 今度はもっと広い場所だ。

 ダンジョンではなく、入口前の駐車場かな?

 ああ。『南新橋ダンジョン』か。


 『スキルガチャダス』を手に入れて最初に商売を始めた場所だ。

 ここでは大儲け出来たなあ。

 俺の人生が変わったのもこの場所からだ。


 あれ、ブレザーを着た女子高生がいるな。

 なんだこの無愛想な女は。

 表情が1ミリも変化してないじゃないか。

 でもよく見ると可愛いな。



 ……あれ? 誰だっけ。この子。

 たしか、すごく大切な子だった様な気がするけど。

 ガチャ屋の営業にもいつも付き合ってくれてるし。


 懐かしいなぁ。二人で色んなところに行ったな。

 寿司やラーメンを食べたり、武器を作りに行ったり、温泉に行ったり。

 俺の楽しい記憶の中にはいつもこの子がそばにいるなぁ。


 でももう会えないんだよな。

 知ってるよ。この状態。

 走馬灯っていうんだろ。

 俺もう死んでるんだよな。

 

 ああ。この子に会いたいな。

 どうして俺、素直になれなかったんだろう。

 年の差があるから?

 一回りも離れていれば世間体も気にしなきゃならないから?


 違うよな。

 ――俺は勇気が無かったんだ。


 嫌われたらどうしよう。

 振られたらどうしよう。

 そう思うと怖くて何も出来なかったんだ。

 あの子を失いたくなかったんだ。

 

 でももうこれでお終いだ。

 永遠にさよならだ。

 だって俺はもう死んじまったんだから。


 ああ。あの子に気持ちを打ち明けたかったなぁ。

 もう一度、……()()に会えるならすべて無くしたっていい。

 どうか……、もう一度……。







 

「こ、ここは……」

「只野!!!!」


 目を開けると、泣きじゃくる少女の顔が飛び込んできた。

 重そうな黒髪をボブヘアーにして、切れ長の瞳を大きく見開いている。

 自分がよく見知った、一番会いたかった女の子だ。


「美波……なのか?」

「良かった……良かったよぉ。只野! 只野ぉ!」


 そこにいた美波はいつもの無愛想で無表情で勝ち気な姿ではなく、まるで幼気な少女のように気弱で可憐に見えた。


 周囲を見渡すと、ここは攪王と戦っていた赤い土肌が目立つ台地だった。

 見ると、美波の他に仲間たちが全員集まっていた。

 アリサが慌てて、駆け寄ってくる。


「気がついたのね! 只野くん」

「ア、アリサ。これは一体、……どういう状況なんだ」

「あまりにも只野くんの帰りが遅いから、座標を突きとめて皆で『瞬間移動』でここに来たのよ。そしたら只野くんが倒れていたの。目を覚まさないから心配したわ」

「そうだったのか。攪王の死体は?」

「それが……。着ていた服の一部は発見されたけど、死体は見つからなかったわ」

「そうか。……あれ、俺なんで生きてるんだろう。攪王との戦いで、すべてを出し尽くして死んだ筈なのに……」


 只野は改めて、自分の身体を確認した。

 全身傷だらけだった筈が、傷は綺麗サッパリ無くなっている。

 治癒の痕跡すらない。

 

 そう。その姿はまるで一度死んで()()()()()()()みたいに。


「そういう事か……」

「?」

 

 これが攪王の仕業かどうかは不明だ。

 だが、もしかしたら最後に攪王はプレゼントを送ったのかもしれない。

 自分によく似た平凡なダメ男に。

 

 




 只野はゆっくりと立ち上がった。

 すこしだけふらついたが、元の元気な身体に戻ったようだ。

 

 涙で目を真っ赤に腫らした少女に向き直る。

 只野は人生で初めてといっていいくらい真面目で真剣な表情を作った。 


「美波。お前が好きだ。大好きだ。一生俺のそばにいてくれ」

「…………はい!」


 只野の告白を受け、美波は向日葵の様に笑った。

 いつも暗い顔をしていた美波のその笑顔は、亡くなった母親にそっくりの弾ける様な明るさに満ちていた。



 只野一人はその笑顔を一生かけて守り抜こうと、心に誓った――。

次回、最終回です!

ここまでお付き合い頂いた読者の皆様ありがとうございました。

あと1話だけお付き合い頂けますと、作者としてこんなに嬉しいことはございません。

それではまた!!

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