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第98話 ラストバトル 只野VS攪王

 只野は仲間たちに別れを告げ、攪王の元に向かった。

 心配そうに見送る仲間たち。

 その中でも美波はとりわけ複雑な心境だった。


 自分の実の父親と、大切な人が世界の命運を賭けて戦おうというのだ。

 生半可な戦いにはならないだろう。

 どちらかが死ぬ可能性も十分考えられる。


 堪らず美波は只野の背中に抱きついた。

 

「只野。必ず無事に帰ってきて。お願い」

「……ああ。無事で済むかは分からんが、必ずここに帰ってくるとも。だから待っていてくれ美波」

「うん」



 只野は仲間たちに暫しの別れを告げ、攪王の能力『亜空間移動』で共に決戦の地へと赴いた。

 辿り着いた場所は、アメリカやオーストラリアを思わせる赤い土色をした広大な台地だった。

 もしかしたらここは日本では無いのかも知れない。



 20メートル程の間隔を開けて、両者は向き合った。

 フードを下ろした攪王の表情が見て取れる。

 やはり父娘というだけあってどことなく美波と似ている。


 自分より一回り年上の筈だが、大分くたびれて見えた。

 苦悩がしわになって表情に刻まれているようだ。


 攪王が真っ直ぐこちらを見て口を開く。

 

「只野一人よ。思えば我々は似た者同士かも知れんな」

「どういう事だ?」

「共に下級探索士としてもがき続け、ある日偶然『スキルガチャダス』を手に入れた。これだけ共通するものがあるのは興味深い」

「共通点はあってもお前と俺は違う。俺は世界に絶望なんてしない」

「綺麗事を抜かすな。貴様は本当に大切な存在を失った事がないからそんな事が言えるのだ」

「かもしれない。だが、どんな理由があっても俺は身勝手に他人を傷つけたりなんてしない」


 只野の強い眼差しに、攪王は「青いな」とつぶやいた。


「よろしい。ならば絶望を味合わせてやる。貴様を殺してその首を仲間たちの元に持ち帰ってやるわ」

「やれるものならやってみろ。今の俺はそう簡単には負けないぜ」

「ほざけ。貴様程度私が相手をするまでもないわ。出よ! 『亡者の鋭兵』たちよ」




 攪王がそう叫ぶと、骸骨や死霊といったアンデッドたちが土から這い出て来た。

 その数、実に数千体。

 一個旅団にも及ぶ規模のアンデッドが只野に襲いかかる。


「数が多くて厄介だな。こっちも全開で行く! 『ゼウス』召喚!!」


 そこに現れたのは筋骨隆々で長い髭を蓄えた老人だった。

 上半身は裸であり、石化や雷を防ぐアイギスの肩当てをしていた。

 すべての召喚獣の頂点に立つ存在と言われる、絶対神ゼウスである。


 只野は襲いかかってくる膨大なアンデッドたち目掛けて、ゼウスに攻撃を繰り出すよう指示を出す。

 

「ゼウス! 『天空神の雷霆』だ!」


 ゼウスはケラウノスと言う杖状の武器から雷を発生させた。

 地上に激しい雷鳴が響き渡り、雷が次々と骸骨や亡者の兵士に直撃していく。

 あっという間に、一個旅団は壊滅していった。



 


 攪王は素直に力を褒め称えた。


「やるではないか。只野よ。貴様がゼウスを引き当てるとは思わんかったぞ。ならばこちらは神に対抗して魔王『サタン』を召喚しようではないか」


 全身真っ黒で禍々しいオーラを纏った人型の竜が現れた。

 大きな翼を持ち、人の様な手足が生えているが、分厚い鱗に覆われている。

 その不気味さはまさに悪を具現化したかのようだった。


 サタンとゼウスは激しい戦いを始めた。

 光と闇。天界と地獄を統べる者同士の頂上対決だ。



 サタンが上空に舞い上がり、口腔に魔力を溜めるとブレス攻撃を放った。

 漆黒の闇を纏った黒い閃光がゼウスを襲う。

 ゼウスは幾重にも防壁を張り、この攻撃を防いだ。


 今度はゼウスが地上から、上空にいるサタンを狙い雷霆を振るった。

 サタンは突如現れた雷光にも慌てず、魔法陣を何重にも重ねて攻撃を防いだ。


 サタンはゼウス目掛けて大きな複翼をはためかせ、飛翔した。

 巨大な鉾を取り出して、ゼウスに斬りかかる。

 ゼウスも万物を切り刻むアマダスの鎌で応戦する。



 召喚獣同士の戦いは苛烈を極めた。

 趨勢を見守る只野に攪王が語りかける。


「因果なものだな。私も貴様も『スキルガチャダス』が無ければこんな召喚獣など呼べやしなかった」

「ああ。俺はスキルなんて禄に所持していないようなド底辺の探索士だったよ」

「スキルカードの力はそれだけ巨大だと言うことだ。見ろ。これはまるで神々の戦いじゃないか」


 ゼウスとサタンの戦いは地上での肉弾戦へと変わっていた。

 共に夥しい血を流しながら、骨が軋む音を響かせ殴りあっている。

 やがて両者とも虫の息となり、ダブルノックダウンの形で勝負が付いた。




「ふ。どうやら直接貴様と戦って決着を付けろとの事らしいな」

「来い攪王! 世界のために貴様を倒す!」


 攪王は『肉体・超越超克』と小さく呟くと、着ていた黒いローブを脱ぎ捨てた。

 上半身の筋肉が数倍に盛り上がっていく。


 超人的な肉体を手に入れると、そのまま叫びながら只野に襲いかかる。

 只野は全属性マジックガン『ウルティマ』にて透明なバリアを築いた。


 攪王は只野に向かって渾身の拳を見舞った。

 攪王の拳は只野のバリアを簡単に突き破る。慌てて両腕をクロスしてガードするも、攪王の拳の威力は凄まじく、両腕はへし折られてしまった。


「うぐっ!!」


 そのまま後方へと吹き飛ばされる只野。

 壁に激突し、粉塵を巻き上げながら起き上がる。


 大急ぎで折れた両腕の治療を始めた。

 バリアを張って無かったら即死していただろう。

 攪王の予想外のパワーに驚く。


 【UR】回復魔法により腕の骨がみるみる再生していく。

 攪王が急襲してこない事を不思議に思ったが、その理由が判明した。



 攪王が術を発動し、四つの身体に分裂していたのだ。

 皆存在感があり、分身体がどれなのか見当も付かなかった。 

 右端の攪王が筋肉の盛り上がった右腕を、宙にかざすと龍の形をした衝撃波が襲ってきた。


「『青龍滅殺閃光波』!!」 

「『ウルティマ・プロテクション』!」


 敵の衝撃波を、自分が展開出来る最強の防壁で防ぐ。

 虹色の分厚いバリアが青い龍の閃光波を受け止める。

 全員に衝撃が走るが、只野はなんとか耐えきった。

 


 休む暇もなく、今度は左端の攪王が左腕に光り輝く虎の顔を纏って殴りかかってきた。


「『白虎殴殺驚天撃』!!」

「うぐぁ……!」


 只野の『ウルティマ・プロテクション』には亀裂が走り、防ぎ切れなかった衝撃で全身が軋む。


「中々頑丈じゃないか。それならどこまで耐えられるか試してみようか『玄武圧殺水流衝』!!」


 前方の攪王が両手を突き出してこちらに向けた。その手から蛇の巻き付いた亀の様なものが見える。

 両手から勢いよく水が発射され、只野を襲った。

 バズーカ砲の様な凄まじい威力に防壁ごと押し込まれる。

 衝撃で意識が朦朧となりながらも、なんとか只野は耐えきった。



「よくぞ持ち堪えたな只野よ。褒めてやろう。だが止どめはきっちり刺してやる。『朱雀炎殺紅蓮掌』!!」


 攪王の肩に、燃えるような羽を持った不死鳥が止まっている。

 只野に向かって掌を繰り出すと、不死鳥が形を変え掌に収束していった。

 燃え盛る右手の掌底が『ウルティマ・プロテクション』を完全に破壊した。


 只野の胸部は掌底により陥没し、上半身が焼け焦げた。

 『ウルティマ・プロテクション』により威力が僅かに軽減されていたため、即死には至らなかったが大ダメージを受けた。




 『自動修復』や『体力自然回復』が発動し、少しずつ傷痕が治癒していく。

 痛む胸を抑えながら、なんとか只野は起き上がった。


「まだ生きてるとは存外にしぶといものだな只野よ」

「はぁはぁ……。俺の取り柄はしぶといくらいのものだからな」

「まるで防戦一方ではないか。見どころがあるとは思っていたが残念ながら私の見込み違いだったようだな」

「ぬかせ。だったら今度はこっちから仕掛けるぜ。吠え面かかせてやるよ!」




 只野は両手を広げると、手にはそれぞれアサルトライフルとサブマシンガンが装備された。

 更に後方の空間から、突如無数の銃が現れた。

  拳銃、小銃、猟銃、機関銃、狙撃銃、散弾銃、擲弾銃、大砲が宙に浮いて、銃口を攪王に向けている。


「風祭直伝の技だ! 食らえ『オール・ガン・フィナーレ』!!」

「くっ!」

 

 数十丁の銃が四体に分身した攪王に向かって銃弾の雨霰を降らせる。

 ただの銃弾なら無論攪王にはダメージを与えられない。だが特殊な補強を施されたこの弾丸は攪王のパッシブで強化された肉体を削り取っていった。


 攪王の分身体は防御を貫通され、じわじわと損傷を広げた。

 結果、攪王は分身を保ち続ける事が出来なくなった。

 他の三体を引っ込めて、本体のみになる。


 だが、さすがに本体だけならば『オール・ガン・フィナーレ』に耐えられるらしい。

 硝煙が舞う中、攪王はガードを固めて攻撃を防ぎきった。




「ふ。どうやらここまでの様だな」


 攪王がガードを解除して敵を確認する。

 だが目の前に只野はいなかった。


 攪王はハッとして、後方を振り返る。

 真後ろに只野がいた。

 鋲の付いたいかめしい棍棒で自分に殴りかかろうとしていた。


 攪王は咄嗟に『時間操作』を発動していた。

 只野が空中でピタリと停止する。

 時間を止めて、この危機を乗り切るつもりだ。


「只野め。忌々しい事にあんな大技を囮にするとはな。してやられたと言うところか」



 攪王は手を鋭く細めると只野の右脇腹を手刀で突き刺した。

 右腕が脇腹を貫通し、引き抜くと夥しい血が溢れ出る。

 時間が止まっているので、血が流れ続ける事はなかった。


「ふ。肝を冷やさせた罰だ。貴様は甚振って殺してやる」




 攪王は場所を少し移動して、時間停止を解く。

 時間が動き出すと只野は棍棒を空振りし、地面にすっ転んだ。


 突如目の前の標的が消えていた。

 おまけに右脇腹が激しく痛む。

 激しい出血を確認し、同時に血が逆流し喀血した。



「げぼぁ!! い、一体何が起こったんだ……?」

「なに、時間を止めてやっただけだ。ついでに貴様の奇襲を回避して、脇腹を少しだけ抉ってやったがな」

「そ、そうか……。時間を止めたのか」

「これで分かっただろう。只野よ。貴様が私に勝とうなどと不可能なのだ。天地がひっくり返っても貴様に勝ち目はないのだよ」

「は、はは……。たしかにな。『時間操作』がある限り俺はお前に永久に勝てっこないだろう」

「分かっているではないか。すべては初めから定められていた運命なのだよ」



 只野は希望を無くしたのか下を向いて「はは……ははは」と自嘲気味に笑った。


「何がおかしい」

「ははは。攪王よ。一つ断言してやるぜ。定められた運命なんてないって事をな」

「何をいってる貴様? 希望を失い現実逃避でも始めたか」

「いーや! お前の勝利が確定していた未来はもう存在しないんだ」

「?」

「攪王。試しに時間を止めてみろよ」

「さっきから何をふざけた事を言っているのだ」

「いいからやってみろよ。運命なんて存在しないって事を実感出来るぜ」


 攪王は半信半疑で時間を停止してみた。

 ところが『時間操作』が発動しない。

 今まで当たり前の様に感じていた時間を操れる感覚がまるでなくなっているのだ。


「――これは!? 一体どういう事だ!? 貴様!! 私に何をしたっ!!」

「お前の『時間操作』に対抗するため俺もガチャを引き続けたって言ったよな。『死者蘇生』が出る前に何枚か【GRゴッドレア】が出て、これはそのうちの一枚『スキル封印』だ」

「『スキル封印』だと!?」

「『スキル封印』は発動条件が特殊でな。相手のスキルを直接食らうのが条件だ。『時間操作』を発動される時は俺が殺される時だと思ったから難しいかと思ったが、まさかお前が俺を即死させないとはな! どうせ嬲り殺しにでもしようと思ったんだろ? お前を苛つかせる事に成功して良かったぜ」

「ぐ、ぐぅぅう~~!!」


 攪王は顔を怒張させ、怒りで真っ赤に染めた。

 自身の慢心を戒めるように天に向かって大声で叫び、怒りを解消させる。



「貴様~!! こんな事をしたところで勝ち目はないぞ! 時間など止めなくても圧倒的な戦力差があるのだからな!!」

「たしかにな。だが『時間操作』があれば俺の勝ち目は0%だった。今のあんたになら少しは勝つ可能性もあるんじゃないか?」

「ほざけ!! 遊びは終わりだ!! 全身全霊をかけて殺してやる!!」



 攪王がここまで感情を露わにしたのは初めてだ。

 虫けらほどの存在だと侮っていた只野に予期せぬ攻撃を受け、攪王は怒りに震えていた。



 次回、すべての戦いに終止符が打たれる。

 ラストバトル完全決着――。

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