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第97話 総力をかけた戦い。探索士VS破壊神

 只野たち探索士一行は破壊神を前にして、立ち竦んでいた。


 見れば見るほどこの巨大な化物を倒す事など不可能に思えてきた。

 まるで子供の頃に見た特撮映画の怪獣だ。

 土色の身体に、埴輪の様なあっさりとした顔が不気味だった。

 神というより地球外からやってきた不気味な生命体であった。


 


 このまま見上げっぱなしでいても何も変わらない。

 威勢のいい猫田が先制攻撃を繰り出した。

 召喚獣タケミカヅチを呼び出し、得意の雷魔法の最大奥義である【UR】『ジ・エンド・オブ・サンダーボルト』を放った。


 破壊神の上空に雷雲が集まり、頭頂部目掛けて激しい稲光が突き刺さった。

 凄まじい炸裂音と共に、破壊神の頭に直撃したが表面が少し焦げただけでまるで効果はなさそうだ。

 

「あれが効かないのかにゃ! なんて固さだにゃ!!」

「どきたまえキャットガール! ここは僕がアルティメットな氷結を見せてやろう! 我が美しい召喚獣シヴァよ来たまえ!」


 森迫は召喚獣シヴァを呼び出すと、呼吸を合わせて氷魔法最大奥義『ジ・エンド・オブ・ダイアモンドダスト』を放った。

 破壊神の巨大な足を一瞬凍らせ、動きを封じたかのように見えたが、また行進を始めるとあっさり凍結は破られてしまった。


「ホーリーシット!! 最強の氷魔法ですらノーダメージじゃないか!」

「魔法が駄目なら物理攻撃を試してみようじゃないの。行くわよ! 『暴龍無双脚』!!」


 地面を蹴って高く飛び上がり、一直線に破壊神の膝を目掛けて蹴りを繰り出した。

 一筋の光になって破壊神に突き刺さるムッツ。

 ところがムッツの攻撃はわずかに破壊神の歩みを止めただけだった。

 また何事も無かったかの様に行進を始める。


「物理攻撃も駄目だと言うの? 参ったわね。このままじゃ札幌の街は壊滅しちゃうわ」



 


 それぞれが必殺技を放つも、有効なダメージを与える事は出来なかった。

 探索士たちはこの無敵の巨人を前に攻めあぐねていた。


 空気が悪くなる前に只野が皆に発破をかける。


「皆、もっと攻撃を続けていこう! 目に見えて効果は現れてはいないが、ダメージは蓄積されていくはずだ」


 只野の言葉にアリサが賛同した。


「その通りよ。狙いを一点に絞って攻撃してみましょう。大きなダムでも亀裂があれば決壊するもの。そこから打開策が見いだせるかもしれないわ」

「ああ! それじゃ破壊神の足を狙って攻撃していこう。集中攻撃だ!!」




 只野の号令の元、仲間たちは攻撃へと移行した。

 萌仁香が早速自慢の槍を振るう。


「『超絶武神槍』だじぇ!!」


 萌仁香は破壊神の左足首目掛けて槍術の最終奥義を放った。

 破壊神の足にガトリング砲の様に槍が乱れ突き刺さる。

 その土色の足の表面が少し削り取られた様に見えた。


 アリサも同じ箇所目掛けてティアマトを召喚し、風魔法奥義を繰り出す。


「行ってティアマト! 『ジ・エンド・オブ・テンペスト』!」


 巨大な20メートルほどの竜巻が発生し、破壊神の左足に旋風が刺さった。

 損傷を与えてないように見えるが、萌仁香の削った左足首から小さな亀裂が入っていた。


 続いてメイもリヴァイアサンを召喚し、アリサと同じ箇所に水魔法を放つ。


「お願いリヴァイアサン! 『ジ・エンド・オブ・ハイドロリック』!!」


 街中の水道管が破裂したかの様な水流が下から吹き上げてきた。

 その勢いで破壊神の左足がわずかに持ち上がる。


 もう一度、左足を地面に着地させた時、足首の亀裂にヒビが入った。

 わずかによろめく破壊神。



「お! 見ろ! ぐらついたぞ。皆、左足首を狙って攻撃するんだ!」

「御意。『無限豪連掌』!」


 土門が掌を繰り出すと巨大化した掌底がいくつも生み出され、エネルギー弾として発射される。『無限豪連掌』は破壊神の足首のヒビを広げていった。

 

 数十発の張り手攻撃で、ボロボロと足首が破壊されていき、遂に破壊神は着地の瞬間に左足首を粉砕、前に大きくつんのめって転倒した。

 

 転倒の衝撃はまるで大地震かの様だった。

 激しい揺れが辺りを震わす。

 ビル群を巻き込みながら、破壊神はうつ伏せに倒れた。




 もうもうと煙が舞い上がる中、只野は皆に声をかけた。


「チャンスだ!! 今こそ総攻撃だ!!」


 絶好の好機に皆新たに習得した大技を放ちまくる。

 17人の【UR】一斉攻撃を受けて破壊神は大きなダメージを受けた。

 堪らず「ボォーーーーーッ」と悲痛な叫び声を上げる。


 その様子を少し離れたビルの屋上から眺めていた攪王は、マリオネットでも操るかの様に指を動かした。

 すると破壊神は膝立ちで立ち上がると、空洞になった目から赤い光を溜め始めた。




「やばい! あれは攻撃の前兆かもしれない! 皆、破壊神の後ろに隠れてくれ!!」


 只野の指摘通り、仲間たちは大急ぎで破壊神の背中側に回り始めた。

 破壊神の目から溢れんばかりの光が発せられると、ぽっかりと縦に開いた口から赤いレーザー光が射出された。


 その破壊力は凄まじく、レーザーが着弾した遠方の街は火の海と化した。

 破壊神はそのまま首をぐるりと回しながら赤いレーザーを吐き続け、一瞬にして札幌の街は焦土と成り果てた。


 


 仲間たちは破壊神の後ろにいたため、全員無事だった。

 だがあのレーザー攻撃を見て、戦意を喪失していた。

 森迫は恐怖の余り足を震わせ、歯をカチカチと鳴らした。


 このまま手を拱いていても状況は好転しない。

 只野は何か突破口がないか破壊神の様子を観察した。


 すると、レーザー攻撃を終えてから破壊神の動きが止まっている事に気付く。

 目に灯っていた赤い光は消滅し、元の虚ろな暗い目に変わっていた。


「これはまさか……。エネルギー切れなのか? 活動が停止しているように見えるぞ」


 只野は思い切って破壊神を攻撃してみる事にした。

 エナジーガン『ライファー』から90%エナジーショットを放つ。


 背後から後頭部目掛けて大砲の様なエネルギー弾が飛んでいき、着弾する。

 頭を僅かに揺らしたが、あまりダメージは与えられなかったようだ。

 だが、破壊神はこちらに注意を向ける素振りを見せなかった。


 只野の予想は確信に変わった。


「皆! チャンスだ。破壊神は力を使い果たしたのか今は動けないみたいだぞ!」


 破壊神の背後から探索士たちは再度総攻撃を繰り出した。

 


「『メギドソード』!!」

「『神技・必滅槍』だじぇ!!」

「『メテオストライク・キック』よ!」

「『暴風龍殺陣』」

「『ジ・エンド・オブ・シャイニング』!」

「『紅蓮斬』」

「『ギガース・ドッグ・アタック』!!」

「『鎧袖一触掌』!」


 まるで激戦地の戦場であるかの様に、爆炎や轟音が響き渡った。

 仲間たちの渾身の奥義が破壊神の身体を破砕していく。

 無防備な破壊神は背中から攻撃を浴び続け、悲痛な咆哮を上げた。


(いける! 勝てるぞ!!)




 只野が勝機を見出したその時だった。

 破壊神は巨体を揺るがしながらおもむろに()()()()()出した。


「なぜだ!? 左足は破壊したはずだ!!」


 見ると、粉砕したはずの左足首がきれいに再生されていた。

 どうやら今の沈黙は、回復のためのチャージタイムだったようだ。



 立ち上がった破壊神は、こちらを見下ろすと素早いモーションでトーキック(つまさき蹴り)を放った。

 『黒剣の後藤田』がその蹴りをまともに食らってしまった。

 後藤田はロケット砲の様な速度で全身をビルに叩きつけられた。

 見るも無残なその姿は一目で絶命しているのが分かるものだった。



 破壊神はそれまでの無目的な行進を止め、探索士を狙って攻撃を始めた。

 そこから只野たちに取って絶望的な時間が始まった。


 まるで蟻でも踏み潰すかの様に、破壊神は探索士たちを踏み潰していった。

 『猛犬の中野』、『韋駄天のマサカズ』、同期の畠山栄作、烏丸清恵が破壊神に踏み潰されて肉塊と化した。


「みんな!!」

「く、くっそー!」

「今は逃げるんだ!! 殺されるぞ!!」



 只野たちに出来る事はただひたすら逃げ回るのみだった。

 このままでは全滅も免れない。

 一旦『瞬間移動』で安全地帯に離脱するべきかと考えた時だった。


 破壊神の動きが急に止まった。

 一体何が起こっているのか周囲を観察してみる。

 するとビルの屋上にいた攪王が美波の剣撃を受け、鍔競り合いをしている光景が飛び込んできた。


 


(美波の奴、自分の父が世界中に迷惑をかけている事に責任を感じているんだな。自らの手で攪王を葬り去ろうという事か)

 

 攪王が娘の急襲に対処していると、破壊神はなぜか行動を止めていた。

 それどころか動き出す気配すらない。


「そうか! 破壊神は自立して動く召喚獣では無いんだ! 攪王が操作して動かしていたのか。となると今がチャンスだ。皆ここで決めてしまおう!」


 只野の発案にアリサが呼応する。


「皆、もう一度足を破壊して体勢を崩させるのよ! 転倒させたら今度は頭部に一点集中で攻撃してみましょう!」



 死んでいった仲間たちの弔いだ。

 全員で破壊神の右足首を狙い攻撃する。

 土人形がぼろぼろ崩れるように、足首が粉砕されると、破壊神は仰向けに転倒した。



 美波が攪王の動きを止めてくれている間、只野たちは破壊神の虚な顔面目掛けて総攻撃を開始した。 頭部を破壊すれば確実に倒せるとまでは思っていなかった。

 また再生されたらお手上げである。

 だが、現状可能性があるのは奴の頭を破壊する事くらいだった。


 猛烈な攻撃を受け続け、破壊神の頭部全体に亀裂が入り始める。

 このまま押し込めば破壊出来るのではないか?

 

 希望が見い出せ始めた、その時。

 破壊神がまた動き始めた。

 人間が起き上がる時の動作の様に、腕を使って身体を起こし始める。


 

 ビルの屋上を見ると、美波が攪王の攻撃を受け吹き飛ばされていた。

 そのまま壁に叩きつけられ、よろよろと立ち上がる。

 攪王はその隙に破壊神の操作を再開していた。

 

 これが最後の好機だ。

 破壊神を立ち上がらせてしまったらこれ以上頭部への攻撃が出来ない。

 手を拱いる間にまた回復されてしまう。


 只野は全身全霊をかけて、エナジーガン『ライファー』にエネルギーを注ぎ込んだ。


「食らえデカブツ!! 300%エナジーショットだ!!」


 一時的に限界以上のエネルギーを充填して攻撃する禁断の技だ。

 代償として全身に激しい疲労感と、痛みが押し寄せる。


 銃口から直径1メートル程の球体が膨らみ、中心にエネルギーが収束していき光線が射出された。

 そのエナジー弾は破壊神の頭部に直撃し、大きな亀裂を作った。


「これでも駄目か!?」


 破壊神はこちらを虚ろな目で見ていたが、その顔にビキビキと亀裂が拡がり始め、やがて頭部の崩壊が始まった。

 コンクリートが砕けるように、顔の破片がぼろぼろ崩れ落ちていく。

 頭部が粉々に砕け散ると、首のなくなった肉体は光を放って消え始めた。

 数十秒ほどで、破壊神の身体は影も形もなくなった。





「勝った……。私たち勝ったのね」

「や、やったにゃ。遂に倒したにゃ」

「今度ばかりは本気で死ぬかと思ったわ。亡くなった仲間たちの冥福を祈りましょう」

「皆! 喜ぶのはまだ早いぜ。まだあそこにすべての元凶が残っているんだからさ」


 攪王はビルの屋上から破壊神が消えていく様をつまらなそうに眺めていた。

 やがて、ビルの屋上から飛び下りこちらに向かって飛来してきた。

 すたすたと歩みよる攪王。



「お前の負けだ攪王。降伏しろ」

「何の冗談のつもりだ? こちらはいつでも過去に戻ってやり直す事が出来るんだぞ。貴様らに勝機など初めから存在しない」


 確かにその通りだ。

 『時間操作』がある限りこちらに勝ち目などない。

 

「破壊神で遊んでやったつもりだがもう面倒だ。貴様ら全員皆殺しにしてさっさと終わらせよう」


 攪王は淡々と告げる。

 このままでは確実に全員殺されてしまうだろう。

 只野は思い切った提案をしてみる事にした。


「……ちょっと待った!! 攪王。俺と世界の命運を賭けて1対1で戦わないか?」

「貴様如き雑魚と戦って私に何の得がある」

「俺とお前は同じ能力の持ち主だ。きっと何かの運命によって選ばれたんだと思う。どちらの『スキルガチャダス』が上か最後に戦って決めるのも一興じゃないか?」

「ふ……。つまらん戯言だが、聞き流せぬ部分もある。そうだな。貴様の存在は何かと意識していた。最後に私自らの手で葬り去ってやるのも良いだろう。ただし只野。貴様が負けたら世界は確実に崩壊させる。それでいいな」

「分かっている。それじゃ正真正銘のラストバトルと行こうぜ」

「付き合ってやろう」



 只野と攪王。

 この二人による、世界の存亡を賭けた最終決戦の火蓋が切られた――。

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