第93話 只野・美波VSキッド
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攪王が過去に『時間操作』で飛び去った後の洞窟内――。
主君が去り、キッドはその悪虐な本性を表していた。
自身が攪王に成り代わり『レイジ・リベリオン』を率いると宣言したのだ。
無論、そんな事許せるはずもない。
只野と美波はキッドの野望を止めるべく戦いを挑んだ。
美波はこの3年で新調した『鬼切丸・綱吉』を抜刀した。
モヒカンに紹介された現代最高の刀工、山田宗右衛門に作らせた自慢の逸品だ。
力を入れなくてもコンクリートを豆腐の様に切り裂く驚きの切れ味だ。
只野もガンホルダーから全属性マジックガン『ウルティマ』とエナジーガン『ライファー』を抜く。
銃作りの本場アメリカに直接出向いてオーダーメイドした最高品質のものだ。
両銃合わせて10億は下らない最高峰の銃である。
キッドは青龍刀を片手にニヤニヤとこちらを見ている。
「やる気になってくれたのは嬉しいけどさ、あんたら所詮A級だろ? S級を何人もぶっ殺してきた俺に本気で勝てると思ってるの?」
「勝てるさ。言っておくが今の俺たちは世界中のS級よりも遥かに強いからな」
「大した自信だね。それじゃこれくらいの攻撃受け止められるよなっ!」
キッドは青龍刀を素早く小刻みに振るった。
すると斬撃が龍となって只野と美波を襲う。
「『青龍波動剣』!」
青いエネルギー体の龍が口を開け、二人に向かって襲いかかる。
対抗するように只野はマジックガン『ウルティマ』から銃撃を放った。
「『ウルティマ・バースト・ショット』!!」
銃口から黄色い魔閃光が走った。
ビーム状の光は青龍を破壊し貫通。キッドの元へと突き刺さる。
が、キッドが作り出した左手のバリアでビームは弾かれた。
右脇から、美波が急襲しキッドに斬りかかっていった。
すかさず反応したキッドの青龍刀が美波の胴体を切り裂く。
真っ二つに両断される美波。ところが、それは幻だった。
影分身を切り裂いてしまったキッドは、背中ががら空きになる。
(好機!)
美波が真後ろから袈裟斬りに背中を斬りつける。
だが、突如現れた分厚い壁に攻撃が弾かれてしまった。
慌てて距離を取る美波。
「甘いね。殺気が見え見えだよ。もっと自然に気をコントロール出来る様にならなきゃね。それにしてもお二人さん思ったよりやるね。確かにそんじょそこらのS級よりずっと強いや。短期間で急に強くなった理由があるんだろう? 一体どうしてなんだい?」
「簡単な話だ。【GR】を引くためにこれまでに数億回ガチャを引いてきた。おかげで【SSR】も【UR】も唸るほど余っているんだよ」
「なるほど。それで大量にスキルを習得してきたってわけだね」
「ああ。もっともA級はスキルストックが100までだからな。違法に無制限でスキルを習得しているお前ら幹部には劣るだろうが」
実際只野と美波は【SSR】召喚獣のカーバンクルなど一部のスキルを除き、新たに90以上も【UR】スキルを習得していた。
「なるほどね。それならいい勝負が出来るかもしれないね」
「ずいぶん余裕ぶっこいているな」
「いやいや嬉しいんだよ。久しぶりに骨のある相手と戦えてさ。さあもっと俺を楽しませてよ!」
キッドは口角を鋭く上げると狐のように嗤った。
「さあついてこれるかな? いくぞ『ベルゼブブ』召喚!!」
キッドの声に合わせて10メートル近い巨大な蠅の悪魔が現れた。
王冠をかぶり、髑髏のネックレスをかけ、手には禍々しい黒杖を握っている。
呼応するかの様に、只野と美波も新たな召喚獣を呼び出す。
「『ミカエル』召喚っ!」
「来て『酒呑童子』」
只野が召喚したのは黄金の甲冑を纏い、巨大な翼をはためかせた大天使だった。
光り輝く剣を持った美しく精悍な青年に見える。
美波は三大妖怪の一柱、酒天童子を呼び出した。
燃えるように真っ赤な巨体と、耳まで裂けた大きな口は日本の鬼のイメージそのままの姿だった。
キッドの指示でベルゼブブが上空に舞い上がり、杖を高々とかざした。
すると杖の先端が怪しく赤く光る。
赤黒い光球が、シャボン玉のように拡散しながら降り注ぐ。
ミカエルと酒呑童子は主を守るべく防壁を発生させた。
ベルゼブブの魔法攻撃を召喚獣たちが防いでいく。
赤い光球がおさまるとミカエルは翼をはためかせ、上空のベルゼブブ目掛けて舞い上がった。
ベルゼブブが新たに作りだしたドロドロの闇の粘液攻撃を掻い潜り、その胴体を斬りつけた。
腹部を負傷し、緑色の体液を放出しながらベルゼブブは地上に落下していく。
待ち構えていた酒天童子が、人間一人分くらいの大きさの瓢箪から酒を飲み、毒霧の様に吹き出した。
ベルゼブブはその全身に酒を浴びた。酒は徐々に身体を溶かし、硫酸を浴びたかの様に白煙を吹きあげた。
よろよろとよろめく大蠅にミカエルは上空から金の剣を振り下ろした。
「『熾天使黄金剣戟』!!」
黄金の光が、大滝から降り注ぐ水流の様にベルゼブブを襲った。
ベルゼブブは光に包まれると、悲鳴を上げながら、やがて浄化されていき消えていった。
一人残されたキッドに向かって、只野と美波は宣言した。
「さあ俺たちの勝ちだ。このままミカエルと酒呑童子をけしかけられたく無かったらさっさと降伏しろ」
「私の酒呑童子に丸かじりされたくなかったら土下座して詫びな」
只野と美波の投降を呼びかける言葉も、キッドには届いていない様であった。
「……ぷぷぷ。くくくくく!」
「一体なにがおかしい? 敗北のショックで気が変になったのか」
「私の酒呑童子の鬼鬼ラッシュを食らいたくなかったら泣いて謝りな」
「ふは! あはははっははっははっははは!! いいぜ? やってみろよ。その召喚獣で俺を攻撃してみろよ」
「……お前、俺達が人を殺せないと高をくくっているな」
「後味が悪いから私は殺したくないが、酒呑童子がお前を殺すのは別に止めやしない」
「ならいいじゃないか! ほら! やってみろよ! 忘れたのか? 俺を殺さないと世界はまた『レイジ・リベリオン』の手に堕ちるぞ!?」
「……確かにそのとおりだ。ミカエル。こいつを動けないように拘束しろ。最悪手足をぶった切っても構わん」
只野は覚悟を決め、ミカエルにキッドを攻撃するよう指示を出した。
ミカエルは上空から降下していき、キッド目掛けて黄金の剣を振るった。
ところが、その剣はキッドの身体をすり抜けた。
「なっ!? 透明化か? 小癪な真似をしやがって」
ミカエルがやたらめったらに斬りつけても、キッドの身体が立体映像であるかの様に透り抜けていく。
「只野ミカエルをどかして。私の酒呑童子で攻撃する」
酒呑童子が巨木の様に太い腕からラッシュ攻撃を放った。
どうやらこれが鬼鬼ラッシュらしい。
だがこの拳の雨あられも当たっているはずなのに、光でも殴っているかの様にすり抜けていく。
「どういう事だ? バグった格ゲーみたいになってるぞ。チートでも使ったか」
「くくくくく。チートか。確かにそうとも言えるな。面倒だから種を明かそう。どうせ種を明かしたところでお前らが俺に勝つ方法はないんだからな。俺は攪王からの置き土産で【GR】『全スキル無効化』を習得した。この世のどんなスキル攻撃ももう俺には通用しないって事さ」
キッドの言葉に只野と美波は目を見張った。
俄には信じられない言葉だ。
この話が本当ならばどんな攻撃も奴には通用しないのではないか。
試しにマジックガンで攻撃しても、やはり銃弾は透過していった。
あらゆるスキルも魔法もキッドには無効であるという話は本当だった。
「……初めから俺たちに勝ち目はなかったって事か。」
「あはははははっははははは! いやぁ最高だよ! ずっとその顔が見たいと思っていたんだ」
「これまでの戦いはお遊びってやつか」
「そういう事。簡単に殺しちゃったらつまらないでしょ? 全力で挑み優勢に進んでいると勘違いした奴の鼻っ柱をぺきっとへし折ってやるのが愉しいのさ!」
「趣味の悪い屑め」
「分かりきった事言うなよ? まあ俺にとって屑は褒め言葉みたいなものだけどね。さてお二人さん。もっともっと僕を楽しませてくれるかい?」




