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第80話 最後のゲート。二人の門番

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 雷神の一撃を受け、『迷宮王』クラプトンが絶命した。

 想定外の幹部の強さに驚きを隠せない一同であったが、百戦錬磨の彼らはすぐに気を取り直し再戦を申し込んだ。

 次に戦うのは紅一点である『技能達人スキルマスター』レイラだ。


「私がいくわ」

「女一人で大丈夫か。まとめてかかってきても良いのだぞ?」

「問題ないわ。私一人で十分勝算があるもの」

「ほーう。言ってくれるじゃないか……女っ!」



 ゴドーはトールに指示を出すと彫刻の様な肉体のトールが、ゆっくりとレイラに向き直る。

 レイラはすぐさま反応し、自身も対抗すべく召喚獣を喚びだした。


「ティターン召喚!」


 レイラが叫ぶと身の丈5メートルを超えるトールに匹敵する巨軀の持ち主が現れた。

 ティターンは急襲するトールの小槌ミョルニルの一撃を受け止めた。

 巨大な人型の召喚獣同士の手四つは、その屈強な肉体と相まってプロレスの1シーンのようだった。


 初めは互角だったが徐々にトールが押され始め、ティターンに押し負けた。

 トールは地面に押し付けられ、ティターンの喉輪攻撃に喘いでいる。



「なぜだ!? 俺のトールは最強のはずだ!」

「相性の問題ね。私のティターンは土属性。雷属性のトールの攻撃ではさほどダメージを受けないわ」


 ティターンがトールの首の骨をへし折ると、目映い光を残して雷神トールは消え去っていった。

 ティターンがギロリとゴドーを睨みつける。


「ひっ!!」

「安心して。貴方はティターンではなく私の手で葬り去るわ。トビーの仇よ。『多重影分身』!」


 まるで高速で反復横跳びでもしているかのように、左右にレイラの身体が展開していく。

 残像ではなく、実際に操作可能な複数の分身が現れた。

 8体に増えたレイラは、弧を描くように移動するとゴドーをぐるりと取り囲んだ。


 ゴドーはどこから攻撃が来るのか分からず完全にパニックに陥っていた。

 前に後ろにとキョロキョロ振り返りながら、攻撃に備える。

 ところが、全方位を囲まれてしまった以上攻撃を防ぎ切る事は不可能だった。



「アディオス。『神技・八方位包囲の陣』!」


 それぞれ剣、弓、槍、短剣、鉾、鎌、斧、大鎚を構えたレイラが8人で一斉攻撃を行った。


 ゴドーは全身をドーム状のバリアで覆い、攻撃に備えた。

 だが、全方位をケアした分バリアは薄くなってしまった。

 一度目の同時攻撃でバリアは破壊され、二度目の攻撃は無防備の状態で受けてしまった。 


 ゴドーは為す術もないまま八方からの攻撃を食らい、全身を刺し貫かれ、叩き潰され、切り裂かれた。

 S級トップクラスのレイラ8人分の攻撃を一挙に受けたため、その破壊力は凄まじい。

 後に残ったのは原型を留めていない肉塊のみであった。



「アスタ・ラ・ビスタ、トビー。あなたの仇はうったわよ。必ず『レイジ・リベリオン』を打倒してみせるわ」

「行こウ。まだ幹部どもは4人残っていル。キッド、残りのゲートはあといくつ残っているのダ?」

「次で最後だよ。恐らくアンネとミレイは撹王の護衛に付くだろうから他の二人が出てくるかもしれないね」

「分かっタ。皆用心してくれたまエ」






 キッドが二つ目のゲートを開き、円卓の間へと繋がる最後のトンネルに辿り着いた。

 内部には予想通り二人の門番が立っていた。


 顔が隠れるほどの長い黒髪が特徴の陰気そうな女性メリッサ。

 羽織袴に身を包んだ巌の様な壮年男性、勘解由小路かでのこうじ



 探索士側からは『超人』ジョブズと『孤高』風祭が戦う事になった。

 二人が一定の距離を置いて対峙する。

 風祭がジョブズに向かって宣言した。


「俺はあのオッサンと戦う。日本人対決ってところだ。ジョブズはあの暗そうな女を頼むぜ」

「仕方ない。レディーに危害を加えるのはジェントルマンとしてはやりたくない事だが、奴らは仲間を何人も殺しているビーストだ。ここでしっかり倒させてもらおう」


 メリッサが長い髪の隙間から不気味な視線を送る。

 

「フヒヒヒヒ。返り討ちにしてあげるわ。撹王の元へは何人たりとも通さないわよ」


 白髪を短く刈り込んだ勘解由小路が続く。


「風祭大吾か。日本の宝と呼ばれた貴殿を自らの手で葬りされるとは、非常に重畳なり」




 風祭は勘解由小路と、ジョブズはメリッサと激しく視線を交わし合う。

 火花が起こりそうなほどのにらみ合いの応酬が続き、やがて音もなく勘解由小路が風祭に迫った。


 右手にはいつの間にか日本刀が握られていた。

 無防備な風祭に向かって一瞬で距離を詰めると、居合抜きを放つ。

 風祭の胴が真っ二つに断たれる。

 

 ところが、風祭の肉体は霞となって消えた。

 切られたのは風祭の残像だった。


 

 勘解由小路は背後に気配を感じて向き直る。

 風祭が後ろから、小ぶりな鎌を亜空間から出現させ斬撃を放つ。


「『鎌鼬旋風撃』!!」

「なんの『金剛壁』!」


 鎌から放たれる飛翔する斬撃を、勘解由小路は左手から発した防壁で塞いだ。




「私たちも始めましょうよ。フヒヒヒヒ」

「いつでもきたまえ。獣とはいえレディーファーストだ。先手は譲ろう」

「はぁ? ほざいてんじゃねえぞ、カスがっ! 『ダーク・ボイド』!」


 激昂したメリッサが、下から上へと手をすくい上げると濃厚な闇が現れた。

 ゼリー状の闇の塊が、ジョブズに向かって飛来する。

 

 対抗する様にジョブズは両手から光を放った。


「『エターナル・シャイン』!」

 

 メリッサの放った闇のどろどろは強い光によってかき消された。

 眩い光に目を細めながらも、直様別の攻撃へと切り替える。

 

 亜空間から死神が使うような大きな鎌を取り出す。

 メリッサは大鎌を握ると、ジョブズ目掛けて横一文字に切りつけた。


「死になさい! 『冥府からのいざない』!!」

「! これは避けた方がよさそうだ。『光速移動』」

 

 ジョブズの全身が光に包まれ、目映い光を放ちながら上空に飛び上がった。

 大鎌の一撃を光の速さで飛び上がって回避した。

 ジョブズが避けたあとに大鎌の斬撃が飛来し、そのまま壁に大きな跡を作った。


「これは食らってたら危険だったな。もっとも私がこんな遅い一撃をもらう事はありえない事だが」

「キー!! ちょこまかと躱しやがって! だったら良いわ。面倒だし()()()を使わせてもらうから」



 メリッサが両手を地面に向け、「鏖殺せよ『ハーデス』!!」と叫ぶ。

 そこに現れたのは黒い鎧に身を包み、王冠を被った髑髏の戦士だった――。

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