第8話 俺のスキルガチャ目当てに大行列。そして謎の女アリサ
本日は一挙3話投稿!!
ラスト3話目です!
翌日定刻通りに『南新橋ダンジョン』に向かうと、すでに多くの人だかりが出来ていた。
平日だというのに駐車場は50台くらいの車が停車している。
俺がダンジョン横の出店スペースに移動すると、待ちかねていた客が殺到した。
昨日ガチャを引いていったリピーターを中心に新たな顔ぶれが加わっていた。
中年のおばさんや探索士とは思えない爺様、明らかに未成年と分かる学生まで、顔ぶれは様々だ。
「はーい。寄ってらっしゃい。見てらっしゃい。世にも珍しいスキルガチャだよー。一回一万円で誰でもスキルカードをゲット出来るよー。魔法もスキルも使えないで悩んでいるそこのお嬢さん! もっと上のランクを目指したいそこの御仁! スキルガチャなら運次第であなたも今日から一つ上の探索士だ! さー、押さないで! 一列に並んで下さいね」
俺の呼び込みの声に客が整列を始める。
まるで人気のラーメン屋の様な行列だ。
いや、それどころかこの人数は新発売のゲーム機を求める列といっていいかもしれない。
若者は面白がって長蛇の列をムービーで撮影し始めた。
いいぞ。SNSに投稿してくれればもっと話題になるかもしれない。
そこで俺はさらなる収益を求め、昨日発見した新機能を宣伝する事にした。
「今なら10万円で1回無料のボーナス付きだよー! 10連ガチャで11枚のスキルカードをゲット出来るチャンスだ! さー良かったらチャレンジして下さいねー」
結果、10連ガチャ商法は大いに儲かった。
皆、十万円を握りしめ次々と筐体に金を注ぎ込んでいく。
行列に並んでいた者が途中で抜けて、金を下ろしに行く者が続出した。
今後の商売の参考に、利用者の声を出来るだけ聞き取ってみる。
「くそー。10連ガチャで全部ノーマルじゃねえか! 【R】一枚確定にしてくれよ」
「おおっ!? 俺は【R】二枚抜き来たわ」
「10連引きたいけど、お小遣い足りないし3回でお願いします」
「年金下ろしてきたぞいっ! これで20連頼む!!」
「キャー! 『開錠』引いたわ! これで宝箱開け放題じゃない!」
「11枚全部ゴミでも売れば最低2、3万は回収出来るよな。スライムの『粘液増加』ですら2千円にはなるしな」
「昨日から10万以上突っ込んでるのに一枚も【R】出ねえじゃねえか! ふざけんな! アクティブスキル『読唇』なんていらんわ。このままだと訴えるぞコラ!」
「これってヤラセじゃない? ほとんどノーマルばかりで【R】すらほとんど出ないなんてさ」
皆注ぎ込む金額が増えてきたためか、目が血走っている。
殺伐とした雰囲気が漂う。これはちょっと怖いな。
夜店のくじ引き屋の心境がちょっと分かった。
(ヤラセなわけ無いだろ! 俺だって何が出現するか分からないんだ。あーもう、そろそろ【SR】誰か引いてくれ……!)
俺の心の叫びが届いたのか、気弱そうな大学生っぽい男子が【SR】を引き当てた。
「や、やった……! 【SR】 パッシブスキル:『耐久上昇(中)』が出た……!」
そこで俺は用意しておいた鐘を盛大に鳴らした。
「大当たりーーーーー!!! おめでとうございます!!! このお客様がな、なんと【SR】を引当てました!!!」
周囲の空気が一気に沸騰した。
どよめきが伝播するように広がる。
「おい! 【SR】出たってよ」
「マジで? 何のスキル出たんだ?」
「『耐久上昇(中)』だとさ。汎用性高い人気のパッシブスキルだから売ったら150万は固いよな」
「あのガキ羨ましいわー。ていうか夜道襲われないか心配だな」
「『耐久上昇(中)』って棍棒で殴られても痛くなくなるらしいぜ。すげえな」
「年金もっと下ろしてきたぞいっ! これで40連引いてやる! ワシも【SR】を引いてボロ儲けするんじゃー!」
「【SR】っていってもステータス向上のパッシブだろ? 魔法か攻撃系のスキルなら数百万になってただろうし、夢のある話だな」
【SR】獲得の噂が噂を呼んで行列は時を追う毎に伸びていった。
俺は昼飯も取らず、ただひたすら客にガチャを回させていった。
3時間ほど経過し、大分行列も片付いてきた。
俺は看板を下げて、一旦昼飯にする事にした。
移動販売車から挽きたてのコーヒーとバゲットのサンドウィッチを頼んで小休止した。
椅子に腰掛けパンを囓っていると、となりの席に知らない女性が座ってきた。
「こんにちは。あなたが噂のスキルガチャ屋さん?」
「そうだけど……、一体どちらさんです?」
「自己紹介が遅れたわね。私は牧野有紗。B級探索士で一応『疾風のアリサ』という二つ名を持っているわ。アリサと呼んで」
同業者か。B級探索士って初めて見たな。
ていうか二つ名ダセえ!
二つ名は格好悪い名前にしなければならない決まりでもあるのか?
アリサと名乗った女は20代前半から半ばくらいの女性で、ダークブラウンの巻き髪にライトグリーンのカラコンを入れていた。
恐らくダンジョンでの戦利品と思しき白いローブを着た女子大生っぽい雰囲気の女性だった。
「アリサさんか。よろしくな。俺は只野一人。「ガチャ屋只野」を名乗っている」
「知っているわ。無名のE級探索士がある日突然、誰もが引けるガチャ能力に目覚めたんで探索士界隈から驚きの声が上がっているのよ」
「へえ。そんな事になっていたのか。あと俺はE級じゃなくて一応D級探索士だぞ。先日昇格したんだ」
「あらごめんなさい。協会のホームページによるとE級のままだったから勘違いしちゃったわ」
「まだ更新されてなかったのかよ……。相変わらずお役所仕事だな。ところでアリサさんは俺になにか用でもあるのか?」
俺の質問にアリサは妖艶な笑みを浮かべた。
「あなたに興味があって来たのよ。スキルガチャ……よね? 一回一万円もするけど、スキルカードは売れば最低2、3千円になるから実質三割くらいは還元される。当たりが出ると大儲け出来るし。上手い商売ね。宝くじよりずっと割が良いわ。探索士以外の金に困っている輩が今後は群がってきそうね」
「確かにな。今後は面倒な輩が増えそうだ。探索士の仕事が疎かにならない程度にやっていこうか考えているよ」
「そう。それで話ってのはね只野さん。今日は勧誘に来たのよ。あなたを是非私のパーティーに招き入れたいと思っているの。考えて下さらない?」
俺をパーティーに勧誘したいだと?
二つ名持ちの有名人が無名のDランカーの俺を?
もし少しでもご興味頂けましたらブックマークと『☆5』評価で応援をお願い致します!
下にスクロールしていくと、ポイント評価を付ける部分がございます。
執筆の励みになりますので、レビュー等も何卒よろしくお願い致します!