第79話 頂上決戦始まる。地上最強の5人と幹部たち
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風祭大吾は日本史上最高の探索士でありカリスマである。
探索士に興味がある者なら世界中の誰もがその名を知っているほど、抜群の人気と知名度を誇っていた。
かつては仲間たちと共に探索をしていたが、いつしかソロでダンジョン探索を行う様になり、遂には世界最難関ダンジョンの一つ『アステカダンジョン』を単独行で攻略した。
その偉業からTIME紙の表紙を飾り『孤高』という二つ名が世界中に浸透した。
風祭とジェイコブは15メートルほどの距離で睨みあった。
大柄で禿頭のジェイコブが先に口を開く。
「人間を殺した経験はあるか」
「いや。ねえな」
「貴様ら探索士は魔物は殺せても人は殺せない。我々幹部は何十人もS級探索士を殺してきた。対人戦闘での経験値がまるで違う。貴様らに勝ち目はない」
「それなら心配ない。事前に模擬戦をたっぷり行ってきたからな。それにお前ら『レイジ・リベリオン』の事は人間だと思っちゃいない。魔物以下の畜生にも劣る下等生物だと認識している。なのでお前らには情けなんかかけねえで皆殺しにするつもりだ」
「ほざけ。貴様らなど所詮口だけの存在よ!」
その時、ジェイコブが先に動いた。
虚を突くように右腕を前方に出すと、風祭目掛けて黄金色のレーザー光線を放った。
風祭は即座に反応し、右手からジェイコブのレーザー攻撃を上回るエネルギー波を射出した。
「『神龍閃光波』!!」
右手から繰り出された龍を象ったエネルギー波は、ジェイコブのレーザーを飲み込んで彼目掛けて襲いかかる。
咄嗟にジェイコブは左手で魔法障壁を張る。
「『アブソリュート・シールド』!」
風祭の神龍閃光波を辛くも防いだが、多少の傷を負ってしまったらしい。
もっともその傷も『体力自然回復(極大)』の力で徐々に回復していく。
風祭は敵に回復の間も与えず、攻撃を続けた。
「来やがれ! 『ヘカトンケイル』!」
百手巨人ことヘカトンケイルを召喚し、その無数の手から繰り出されるラッシュ攻撃にジェイコブの防壁は砕かれた。
更に風祭は右手を広げると、何もない空間から全長2メートルにもなる大太刀が現れ、それを掴んで奥義を放つ。
「『絶剣・森羅万象斬』!!」
横薙ぎに振るったその剣からは何も発生しなかった。
周囲がシンと静まり返る。
すると遅れて、ジェイコブの胴体が真っ二つに裂かれて、崩れ落ちた。
ジェイコブは何が起こったのか事態が掴めず、ただ溢れる内蔵を抑え、上半身と下半身をくっつけようと治癒魔法をかけた。
無論、そんな隙だらけの敵を放置しておくわけもない。
風祭はヘカトンケイルに「やれ」と号令を下すと、百手巨人はジェイコブ目掛けてパウンドラッシュを放った。
隕石でも落ちたかのように地面がボコボコに凹まされていく。
残ったのはぺしゃんこになったジェイコブの亡骸だけだった。
「やはり強いわね風祭。単騎でなら貴方に勝てる人間はいないかもしれないわ」
レイラの言葉に『迷宮王』トビー・クラプトンが反論する。
「おいおい。それは聞き捨てならないな。その認識を塗り替えるために次は俺が挑もうじゃないか」
「頼りにしてるわよ。トビー」
「任せておけって。撹王とやるまで損耗ゼロで行くぞ」
トンネルの先へと向かいキッドが扉に暗証番号を打ち込んでいく。
やがて二つ目のゲートが開くと、中には黒髪をオールバックにした長身の男が現れた。
二人目の幹部ゴドーである。
ゴドーの前にゆったりとクラプトンが歩みよっていく。
「ジェイコブはやられたか」
「確認してみるか? お仲間はハンバーグみたいにペチャンコな挽き肉になっていたぞ」
「確認の必要はない。我ら幹部に仲間などという意識もないしな」
「薄情だなオイ。まー弔い合戦のつもりでかかってこいよ」
「いずれにせよ、貴様らはここで殺すつもりだ」
ゴドーはクラプトンの頭上目掛けて、滝の様に降り注ぐ水魔法を放った。
「『ハイドロ・フォール』!!」
「なんの。『ディメンション・バリアー』」
クラプトンは自身の周囲に時空を断絶させる障壁を作った。
障壁に水が消された事によって、膨大な水に押し潰される事なくクラプトンはピンピンとしていた。
「食らいなっ!! 『サンダードラゴン・レイジ』」
ゴドーは続けざま、降り注ぐ滝に向かって雷魔法を放った。
稲光が龍神の様に這い回り、クラプトンの身体を貫いていく……はずだったがディメンション・バリアーを破るまでには至らなかった。
クラプトンは反撃に転ずる。
「雷ってのはよう。こう使うんだ! 来い『ラムウ』!」
長い髭を伸ばした老人が現れた。姿は人間と変わらぬが、召喚獣のため大きさは3メートルを超える。
ラムウは杖を天に掲げると、ゴドー目掛けて魔法を放つ。
「『雷人の轟き』!!」
ゴドーが放ったハイドロ・フォールよりも更に大きい雷が降り注ぐ。
まるで巨大なレーザーキャノンが天空から照射されているかのようだ。
防御魔法を展開して必死に堪えるゴドー。
上方に向かって魔法陣を幾重にも展開し、ダメージを軽減していく。
「うおおおおおおおおおおおっ」
雷が消失すると、そこにはなんとか耐えきったゴドーがいた。
息を荒げてはいるが、無傷である。
「なるほど。雷人の一撃、実に強烈だった。ならばこちらは雷神の一撃で持ってお答えしよう」
「なにっ?」
「来たまえ! 雷神『トール』!」
ゴドーが叫ぶと、身の丈5メートルにも及ぶ筋骨隆々の男が現れた。
長い金髪に王冠を被り、右手にはハンマーを握っている。
「ゆけ! トール。『雷神の裁き』だっ!!」
トールが小槌ミョルニルを振ると、クラプトンとラムウ目掛けて無数の雷光が襲った。
大きさはラムウの一撃よりも遥かに小さいが、数が多く防いでも次から次へと稲光が降り注いだ。
ディメンション・バリアーを展開するも、数多の雷撃が二人を苦しめた。
召喚獣ラムウが抗しきれなくなり雷神の裁きの直撃を浴びる。
同じ雷属性と言えど、吸収や反射など出来るわけもなく、ラムウはわずかに耐えてから消滅した。
クラプトンのバリアーも留まる気配のない落雷に対処しきれなくなった。
やがて防ぎきれなくなったクラプトンは、雷撃を直に浴びてしまう。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一瞬で全身が黒焦げとなり、ひと目で見ても分かる程の焼死体と化した。
『迷宮王』トビー・クラプトンは絶命したのである。
ゴドーとトールはニヤリと笑い「次は誰が相手をしてくれるのかな?」と4人を挑発した。




