第78話 【GR】降臨。最強の能力『時間停止』
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ロスチャイルドがダイヤルを回すと、【GR】カードの背面が現れた。
これまでのスキルカードとは根本から違うデザインだった。
「白い!? いやカード全体が発光しているのか」
【GR】カードは目映いほどに神々しい光を放ち、目を開けるのも一苦労だった。
カードをひっくり返すと、表面も同様に激しい光を放っていた。
やがて光が徐々に収まっていく。
書かれていた文字や絵柄が識別出来るようになると全員が固唾を飲んで見守った。
ロスチャイルドがスキル名を読み上げる。
「【GR】『時間停止』……!?」
『時間停止』だって?
名前から察するに、時間を停止して自分だけ自由に行動出来るようになるスキルか。
まるでラスボスの能力だ。
「諸君! 手筈通りこのスキルカードは私が使用しても良いかね?」
ロスチャイルドの言葉に皆が頷く。
風祭大吾が親指を立てて「旦那。早速使ってみてくれよ」と言った。
ロスチャイルドは早速スキルを習得し試してみる事にした。
『時間停止』を発動した瞬間、この場にいる他の4人のS級探索士と只野一人がピタリと固まった。
いくら触っても叩いても、まるで反応しない。
まるで時間が止まってしまったかのようだ。
見ると、実際に時計も止まっていた。
仰天しながらも、スキルの範囲を確かめるため別荘内を歩き始めた。
掃除中の家政婦も、水槽の中の熱帯魚もその場で停止している。
台所に行くと調理中のコックが、フライパンを揺すって炒めものをしていた。フライパンの上の食材までも宙に浮かんだまま止まっていた。
屋上に登って望遠鏡で、遠くの景色を観察してみた。
おそらく十数キロは離れている、道路の車までも静止している。
そのまま声にだして「1、2、3……」と時間を数え始め、100秒を超えたところでカウントを止めた。
どうやらこの『時間停止』には制限時間はないらしい。
おそらく範囲の指定もないだろう。
試しに魔法やスキル使ってみても自由に発動する事が出来た。
「フハ、フハハハハ! 最強ダ! この能力があればこの世のどんな者にでも勝てるゾ! まさに神の如き力なり! 金、権力、そして物理的な力までも世界一になってしまったカ! このアダム・ロスチャイルドが『レイジ・リベリオン』のゴミどもを駆逐してくれようゾ!!」
ロスチャイルドが高笑いを上げた。
無論、この高笑いを聞いた者はこの世に存在しない。
なぜならば停止した時間の中で動けるのは、ロスチャイルド唯一人であるからだ。
ロスチャイルドは『時間停止』を解除し、早速打倒『レイジ・リベリオン』に向けての対策を練る事にした。
敵の幹部に偽装したキッドの情報を元に、アジトである地下シェルターに潜り込み、撹王と幹部を一網打尽にする計画だ。
最終決戦のメンバーは人類最強の5人『迷宮王』トビー・クラプトン、『技能達人』レイラ・アンダルシア、『超人』デレク・ジョブズ、『孤高』風祭大吾、『伝説』アダム・ロスチャイルド。
探索士協会は他のS級や有力なA級探索士に協力させる準備があったが、彼ら5人からすればただの足手纏にしかならなかった。
S級探索士はスキルストックの上限が無い。
そのため、彼ら頂点5人は500~1000のスキルを習得しており、そのほとんどが【SSR】と【UR】である。
並のS級とは子供と大人の戦力差があった。
彼らはたった一人で米軍基地を破壊出来るほどの強さを持っている。
個人でありながら国家戦力に等しい軍事力を保有しているのだ。
だがそんな彼らにも懸念があった。
敵の幹部と撹王の能力が分からないのだ。
考えにくい事ではあるが、自分たち以上の能力を有している可能性もある。
そのため、リーダーロスチャイルドは只野一人の手を借り【GR】を引いて万全を期したのだ。
(この『時間停止』があれば奴らに必ず勝てる。撹王が【GR】を引く前にケリをつけてしまうべきだ)
早速キッドが発信機で場所を特定した敵アジトへと向かった。
こうしてS級5人と『レイジ・リベリオン』7人の頂上決戦が幕を開けたのだった。
その地下シェルターは南アルプスの地下深くに掘られたものだった。
資産家の避難用に作られたものでアンネの催眠能力によって、所有者から権利を獲得したものだった。
この地下シェルターには出入り口がなかった。
撹王の命令で、地下数百メートルまで向かうエレベーターが破壊されていた。
そのため、この地下へと向かうには場所を知ってる者が『亜空間移動』などで座標を指定して転移するしか出入りの方法がなかった。
まさに難攻不落の要塞であった。
その地下シェルターにS級5人とキッドの姿があった。
コンクリート打ちっぱなしの高さ50メートルはありそうな広大な空間に、目の前には巨大な円盤型のゲートがあった。
彼らは皆、【UR】『瞬間移動』のスキルを所持していた。
内通者キッドの案内であっさりと敵の本拠地に到達していた。
この日は、撹王と幹部が集う会合の日であった。
キッドが軽い調子で口を開く。
「僕たち5人の存在はもうとっくに捕捉されてるよ。さあ、ここからは殺し合いだね。ロスチャイルドさん『時間停止』はどのタイミングで使うんだい?」
「幹部どもを排除しないと、撹王の待つ円卓の間には辿りつけないのだろウ。私一人で奴らを皆殺しにしても構わんが、何があるか分からんからね。この能力は切り札として使わせてもらうヨ」
「へえ。用心深いんだね。さすが世界一の探索士」
そこで『孤高』風祭大吾が口を挟んだ。
「まあロスチャイルドの旦那は殿でどっしり構えていてくれよ。幹部どもは俺たちで減らしていく。美味しいところは任せたぜ」
「頼んだゾ。決して幹部の力を見誤らぬ事ダ」
キッドがボタンを操作し巨大な円形のゲートを開けると、地響きを上げ門が開いていった。
門の内側はトンネルの様な空間になっていて、撹王がいる円卓の間まではまだまだ距離があった。
トンネルの中には男が行く手を阻む様に立っていた。
『レイジ・リベリオン』幹部で、大柄のスキンヘッドの男がジェイコブだ。
キッドがこのトンネルの構造について説明する。
「このトンネルは真っ直ぐ続いていて、それぞれゲートによって区切られてるよ。門番である幹部たちを倒さないと先には進めないね」
「なら先鋒は俺が行こう。このハゲ頭をぶっ倒してさっさと進もうぜ」
風祭が一歩前に出て、ジェイコブと睨み合った。
今、頂上決戦始まりの鐘が鳴った――。




