第77話 100連ガチャマラソン。めざせ通算1億回。
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東京ドームを訪れると、すでに人で一杯になっていた。
客席はパンパンに膨れ上がり、フィールドエリアも人で溢れていた。
これだけ簡単に人を集められるロスチャイルド家の影響力に圧倒される思いだった。
只野はバックネット前に設立されたステージの上でスキルガチャダスを発動した。
この3年でアップデートを繰り返し『【R】10』の様な限定ガチャが3台追加されていた。
もっとも今回はガチャを沢山回さなければならないので『初号機』のみを使用する事になる。
ステージの前には行列が出来ていた。
早速最初の客が100万円を握りしめ、筐体の差込口に挿入した。
通算100万回目のアップデートの時に100連ガチャが実装されていた。
【SR】確定、【SSR】確率アップの100連ガチャは大人気となった。
今回この100連ガチャのおかげで、大分進行がスムーズになる。
現在只野のスキルガチャダスが回された回数は通算260万回ほど。
最初の目標である1000万回まで740万回もガチャを回さなければならない。
7万4000人が100回ガチャを回さなければならないのだ。
東京ドームに集まった約5万人の人間を何度か入れ替えて、この歴史に残るガチャイベントが幕を開けた。
なお防犯のため、会場付近は国内のみならず世界中の探索士が集結して警備にあたっていた。
『亜空間移動』に対抗出来る様に、S級探索士5人も会場内で目を光らせている。
只野の横には『伝説』アダム・ロスチャイルドと『技能達人』レイラ・アンダルシアが控えていた。
客が次から次へと百万円を挿入し、ダイヤルを回して、中身を確認せずに去っていく。
時間短縮のための事務的な作業に、只野は思わず苦笑いをした。
「これはガチャ屋としては寂しい光景だな」
「文句言わないの。あなたに世界の命運がかかっているのだからね」
思わず零した愚痴にレイラが答える。
長いウェーブのかかったダークブラウンの髪にエキゾチックな顔立ち。スペイン人の美しい30代女性だ。
「ロスチャイルドもそうだけど、レイラも日本語が上手だな」
「S級ともなると世界中を旅するからね。パッシブ『全言語翻訳』を所有しているのよ」
「どの国の言葉も解する事が出来、自在に操れる便利なスキルだよな。【UR】だから10億以上するだろう?」
「S級の頂点になると広告やスポンサーからの収入で年収も数百億を超えるわ。お金を集めるのに大した苦労はしないの。寧ろ意中のスキルカードを巡って企業や投資家との争奪戦を制する事が大変ね」
「とんでもない世界だな。俺も日本じゃ金持ちの部類だが、そんな話を聞いてしまうと自分のスケールの小ささを感じるよ」
「ふふ。でも良かったじゃない。今回の【GR】獲得のための1億回ガチャのおかげで貴方は世界でも有数の大富豪よ」
今回1億回到達のために残り9740万回のガチャを引くための費用は、すべてロスチャイルドが負担していた。
そのため、俺の懐には9740億円が丸々入って来る事になる。
ほとんど一兆円である。後進国の国家予算かよ。
金額が膨大だけにピンとこない額である。
もっとも今の時代、いくら金があっても『レイジ・リベリオン』に狙われたら一溜まりもないだろう。
俺も3年前に灰色コートの女に襲われてから、自衛のために【UR】スキル『瞬間移動』を手に入れ襲撃に備えている。
『瞬間移動』は座標を思い浮かべると、意中の場所に一瞬で移動出来る夢の様な能力だ。
ちなみにダンジョン内では階層を移動する事が出来ないため、敵の背後をついたり、離脱する時に使う。
この後も順調に100連ガチャが回されていき、およそ12秒に1人の割合で100回のガチャが回されていった。
1分間で500回。10分間で5000回。1時間で3万回。10時間で30万回。
只野は【SSR】パッシブ『スタミナ自然回復(特大)』を所有しているため、疲労感をほとんど感じずにスキルガチャダスを発動し続けた。
たまにやってくる眠気を解消するため、レイラが隣で『マイティスリープケア』をかけてくれた。
わずかな食事の時間やトイレ、仮眠の時間を除きほとんど不眠不休のまま100連ガチャマラソンは続いた。
100時間で300万回。200時間で600万回。
そして凡そ240時間、約10日をかけて目標の740万回に達成した。
これで通算1000万回達成だ。
ガチャ筐体からいつもの機械的な声でアナウンスが流れた。
≪一千万回の御利用誠にありがとうございました。『スキルガチャダス』の仕様はアップデート致しましてver1.1.6に変更致します。これまでの『回数制限』を撤廃させて頂きます。ご理解とご了承何卒よろしくお願い致します≫
世界の命運のためとはいえ、只野は10日間ぶっ通しでスキルガチャダスを発動し続けた。
拷問とも思える時間が終わると、只野は意識を失い病院へと運び込まれた。
すべてを見届けたロスチャイルドは只野に称賛の拍手を送った。
「まずは1000万回達成おめでとウ。意識が回復次第、今度は私と仲間たちが残りの9000万回を引かせてもらう。今後は人を交代せずにガチャを回し続けられるのでペースも上がるだろウ。また不眠不休でスキルガチャダスを発動してもらうから頑張り給エ」
疲れ果て病院で眠る只野は、意識が回復後またロスチャイルドらS級探索士に拘束されひたすらガチャを回すための機械になる。
ロスチャイルドの別荘にてこの後、約50日間もこの生活が続いたのだった。
――そして遂に通算1億回へと到達した。
これまでに【UR】2067枚、【SSR】11万2309枚が排出されていた。
5人のS級探索士たちが固唾を飲んで見守る中、ロスチャイルド本人の手に寄って1億回目のガチャが引かれようとしていた――。




