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第70話 スキル犯罪組織『レイジ・リベリオン』

 講習会での『氷結の森迫』との対決から数日が経った。

 俺はいつも通り所川ショッピングセンターでガチャ屋を開いていた。


 あの後森迫が担架で運ばれていき、他の何人かが実戦訓練を行って、お開きとなった。

 終わりに『猛犬の中野』が締めの言葉と共に「スキル犯罪への取り締まりに協力して頂ける方を随時募集している」旨を告げた。


 この数日、その言葉が頭から離れなかった。

 協力したい気持ちはあるのだが、今の俺は多忙だ。


 平日はガチャ屋の営業もあるし、ステフとの修行もある。

 何より他の探索士同様ダンジョンで探索を行わなければならない。

 本来ダンジョン探索士とはそういう職業だ。

 町中で犯罪者を取り締まる事になるなど夢にも思わなかった。




 ぼんやりと物思いに耽っていると、目の前に小さな女の子が現れた。年は5歳ほどだろうか。

 このショッピングセンター内の客は9割方探索士なので、こんな女児を目にする機会など無い。  


 女の子は背伸びするとガラスケースの上に乗った俺のガチャを指差した。

 

「ガチャガチャだぁー。これなにが出るの? ぷいきゅあ出る?」

「ははは。ぷいきゅあは出ないよ。スキルカードが出るんだ」

「すきるかーど? まいんもやってみていい?」

「パパやママと一緒ならやってもいいよ。どこにいるのかな?」


 まいんと名乗った少女は、後方の大柄な男性を指差した。

 スキンヘッドにひげもじゃの丸く腹の出た男だった。

 どことなくダルマを想像させる。

 娘のまいんの頭を優しく撫でると、男は大きな口を開け豪快に笑った。


「ガハハハ。娘がちょっかいを出して悪いな。営業の邪魔だったか?」

「構わないよ。ご覧の通り今は客もいないしな。しかし子供連れの探索士なんて珍しいな。初めて見たよ」

「嫁さんにはとっくに逃げられちまってな。男やもめなんで子育ても大変さ。この子は今さっき保育所から連れて帰ってきたところだよ」


 まいんはニコニコと嬉しそうにひげもじゃの腕にしがみついていた。

 全然似てはいないが、どうやら仲の良い親子らしい。


「せっかくだから俺もガチャを引いてみてもいいか?」

「ああもちろん。一万円札を差込口に挿入してくれ」


 そう言ってひげもじゃは3回ガチャのダイヤルを回したが、いずれも【N】カードだった。


「あちゃー。これはハズレかな」

「すまんな。【R】は10分の1、【SR】は100分の1の確率ってところなんだ。カードが不要ならカードショップに持ってけば多少足しにはなると思うぜ」

「まあ何かの記念だと思って取っておくさ。あばよ兄ちゃん。お互い頑張ろうぜ」

「ああ。ありがとう」


 去り際にまいんも「ばいばーい」と手を振ってくれた。

 少し元気を貰えた。子供は良いものだなと素直にそう思う。


 俺も30が近いし、そろそろ嫁さんが欲しいところだ。

 その前に彼女を探さないとだが。





 それから営業を終え、車で自宅へと向かっている時だった。

 カーラジオで、何気なく地元ラジオ局の放送を聞いていると「番組の途中ですが緊急速報です」とアナウンサーの緊迫した声が伝わってきた。

 

≪現在X駅前にて、テロ事件が起こっているとの情報が入って来ました。犯人と思われる人間が周囲に向かって光の球を放ち爆発、火災が起こり多数の負傷者が出ているとの事です≫ 


 これはまさか『スキル犯罪』じゃないか!? 

 X駅は俺の住む県で最大の交通拠点だ。

 夕方のこの時間は利用者も多い。

 ここからならすぐ近くだ。

 

 俺は居ても立っても居られなくなり、車をX駅まで走らせた。



 X駅前は酷い渋滞になっていた。

 駅に近づくほど叫び声や悲鳴が大きくなる。

 近くのパーキングに車を停め、人が多く集まる場所を目指した。

 

 人混みをかき分け、事件現場を目撃する。

 恐らく何らかの攻撃系の魔法かスキルが使われたのだろう。

 電灯や看板が焼け焦げた跡や、路上には血痕が飛び散っていた。


 警察や消防の緊迫した声が聞こえてくる。

 警察官に保護され、泣きじゃくる少女がいた。

 その顔に見覚えがあり、心臓に痛みが走る。

 

 俺は思わず規制線の中に飛び込んで、少女の元へ駆け寄った。



「まいん! パパは……どうしたんだ?」

「うわああああああん! パパは……パパは死んじゃったの! わああああああん」



 まいんの慟哭に、胸が締め付けられた。

 警察官が俺の身元を確認してきたが、知り合いですと答えるのがやっとだった。


 やがてまいんは関係者の車両に乗せられ去っていった。

 警察から事件の詳細を聞かされると、犯人を取り押さえるため、まいんの父は生身で飛び掛かっていった。重傷を負いながらもその場にいた数人で犯人の拘束に成功し、無事逮捕へとつながったという。

 もっともまいんの父は警察が到着する頃には息絶えていたそうだ。

 

 男やもめだと言った髭もじゃは、大切な娘を残しこの世を去った。

 改めて髭もじゃの勇気を讃えたい。


 そしてまいんを天涯孤独の身に追いやった犯人が憎い。 

 とうとう俺の住む県にまで『スキル犯罪者』が出てしまうとは。 


 俺は数時間前のまいんと髭もじゃの仲睦まじい親子の姿を思い出した。

 何かを決意する様に、掌がうっ血するほど拳を固く握り締めた。





 


 とある、寂れたビルの一室。

 コンクリート打ちっぱなしの冷え冷えとしたその部屋には、家具と呼ばれる物がほとんど無かった。


 明かりの消えた暗い部屋に、テレビが一台地べたに置かれていた。

 煌々と光を放つモニターから、全国版のニュース番組が流れている。 

 キャスターは深刻さを装った表情で原稿を読み上げた。


「本日18時過ぎ、X駅前にて『スキル犯罪』によるテロ事件が起こりました。犯人はエネルギーを弾丸の様に発射するスキルを使用し、帰宅途中の通行人を次々と襲撃。死者3名、負傷者14名を出す大変痛ましい事件となりました」


 テレビの映像をつまらなさそうに見下ろす男がいた。

 男の表情は光源が足りず、感情が読み取れない。

 そのまま黙って足元の映像を注視する。

 キャスターが原稿の続きを読み上げた。


「逮捕された男は警察の調べに対し「自分は『レイジ・リベリオン』の一員だ。この先もスキルを手にした同志たちが自分の後に続くだろう」と供述していた事が分かりました」


 キャスターの言葉に男は薄く唇を吊り上げた。

 それだけ聞くとテレビのコンセントを引っこ抜く。

 室内には暗闇と静寂が押し寄せた――。

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