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第63話 萌仁香の平凡な探索士デイズ・前編

 ボクの名前は今浪萌仁香いまなみもにか。15歳のB級(プロ)探索士だじぇ。

 

 かつては最年少C級探索士昇格記録を持っていたため、この町じゃかなりの有名人だじぇ。

 きっとボクのことを知らない者はいないはずだじぇ。



 学校までの通学路を歩くと、通行人はボクを見て皆驚いた顔をしているじぇ。

 やはりスターは辛いじぇな。有名税ってやつだじぇ。

 学校に辿り着くと校門の前で生活指導の山田が立っていたじぇ。

 いつもどおり挨拶をして素通りすると、呼び止められたじぇ。

 

「今浪! お前まぁたその校則違反の格好をしているのか! 直してこいと言っただろ!」

「一体どこがおかしいんだじぇ」


 ちなみにボクの格好はセーラー服に宇宙柄のスカートだじぇ。スカートが不味かったかもな。


「その派手なピンクの髪色だ! うちの学校は染髪禁止だぞ。黒に戻してこい!」

「これは地毛なんだじぇ。堪忍な」

「そんな嘘がまかり通るわけないだろ! 悪目立ちする変な頭だから通行人にジロジロ見られるんだぞ! っておい今浪……どこだ?」


 山田の対応が面倒なんで、気配を消して一気に校門を通過したじぇ。

 ダンジョン以外でスキルを使うのは犯罪だけど、まあ悪い事に使わなければセーフだじぇな。




 教室に入ると皆それぞれ小さなグループを作ってお喋りに興じているじぇ。


 ふん! 下らないじぇ。

 群れなきゃ何も出来ないのが弱者の特徴だじぇ。

 ボクの様な強者になると一人の時間を楽しむことが出来る。まさに孤高だじぇな。




 窓の外をぼんやり眺めているとスマホに着信があったじぇ。

 どうやら美波からメッセージが届いていたらしいじぇ。


<『荒武者の玉鋼』が欲しいからお前も付き合え>


 なんじゃこりゃ? 意味不明過ぎるじぇ。

 前後の文脈を端折はしょり過ぎてワケワカメだじぇ。


 恐らく『荒武者の玉鋼』という素材が欲しいから、採集する為の人員としてボクにも手伝って欲しいという事か?


 ふん! ボクはそんなに暇じゃないじぇ。

 随分と一方的で自分勝手な要望だじぇ。

 ボクが美波のお願いを聞いてやる必要はないじぇ。


 ……まあでもせっかく久し振りにメッセージを送ってくれたから、話に乗ってやってもいいじぇ。 


<仕方ないじぇ。付き合ってやるじぇ>


 そう返信すると、直ぐに返信が届いたじぇ。


<内容も確認せずによく付き合ってくれたな。そういうのを安請け合いって言うんだぞ>


 なんでボクが怒られているんだじぇ!?

 そもそもお前が面倒臭がってちゃんとした説明を交えた文章を書かないのが悪いんだじぇ!

 相変わらずのマウンティング女子で困っちゃうじぇ。



 反論してやろうかと思ったら、美波の奴に一方的に連続投稿されたじぇ。


<『荒武者の玉鋼』は『東新田ダンジョン』に出る貴重な魔物が落とすらしい>

<学校が終わったらX駅に集合な。車は只野が出してくれる>

<ダッシュで準備しろよ>


 なんてムカつくやつだじぇ。

 こっちは協力する立場だってのに、なんで上から目線なんだじぇ。

 文面も簡潔過ぎて犯罪グループの指示書みたいだじぇ。


 まあボクは大人だから、そんな事で腹を立てたりしないじぇ。

 せっかく誘ってくれたわけだしな。断ったりしたら相手に悪いじぇ。

 ボクは仕方なく<なる早で向かうじぇ>と送信した。






 放課後、X駅に向かうと美波が既に待っていたじぇ。


 ブレザーの制服を着崩して、かったるそうにポッケに手を突っ込んでいるじぇ。

 黒髪の重めのボブヘアーが、相変わらずこけしっぽい。

 ボクほどではないけど目はぱっちりとして大きめだじぇ。

 まあそこらの地下アイドルよりは可愛いってレベルじゃないか?


「遅いぞ。何が『なる早で向かう』だ。12分も待たせやがって」

「まずはボクに来てもらった御礼を言うのが先じゃないか? まったく恩知らずなこけしだじぇ」

「別に無理して頼んでないわ。嫌なら帰ってもいいぞ」

「ま、待つじぇ。せっかくここまで足を運んだんだから手伝ってやるじぇ」


 口を開けば喧嘩になるし、一瞬でマウントを奪われてしまう。

 本当こいつはボクの天敵だじぇ。

 まあ少しは実力は認めてやってるので、好敵手って事にしておいてやるじぇ。



「ほら。突っ立ってないでさっさと乗りな」 

「お前の車じゃないだろ。ったく! ……久し振りだな萌仁香。来てもらってありがとうな」

「別に構わんじぇ。それじゃお邪魔するじぇ」


 今声をかけてくれた車の持ち主が只野という男だじぇ。

 痩せたひ弱そうな男だじぇ。

 てっきり23、24くらいかと思ったらボクより一回りも年上だったじぇ。

 若そうに見えて結構オッサンだったじぇ。軽くドン引きだじぇな。


 スキルガチャ屋という商売をやっていて、スキルカードを一万円で引けるらしいじぇ。

 ボクも何回かやってみたけど【N】しか出ないクソゴミだったじぇ。

 世の中の情弱共をだまくらかして金を巻き上げる畜生だじぇ。

 まあ一万円で【R】や【SR】も出るんだから、下級探索士共には夢のある話かもしれんな。



 

 


 車を走らせること40分ほどで『東新田ダンジョン』に到着したじぇ。

 ここは確か50層ほどの中規模ダンジョンだったはずだじぇ。何度か踏破した事があるじぇ。


 このダンジョンを訪れた理由を尋ねる。


「そう言えばなんで美波は『荒武者の玉鋼』が必要なんだじぇ?」

「刀を新調する事になってな。いくつか素材が必要なんだ」

「なるほど。そういう理由だったじぇか。『荒武者の玉鋼』はどの魔物がドロップするんだじぇ?」

「『荒武者・剛鬼』って魔物が落とすらしい。かなりのレアモンらしくそんな魔物一度も見たことないから不安だ」

「確かに見たことも聞いたこともない魔物だじぇ。本当に実在するのか?」 

「特定のダンジョンに極低確率で出現するらしい。X県だとここが一番近かった」 


 ボクらは早速『東新田ダンジョン』への潜行を開始する。

 『荒武者・剛鬼』は44層に出現するらしいので、階段を探して一気に下まで降りる事にしたじぇ。

 以前訪れたことがあるので、フロアはなんとなく覚えていたじぇ。

 3人ともスタミナ強化系のパッシブを持っていたので、ほぼノンストップで走り続けて、二時間ほどで44層まで辿りついたじぇ。

 

 44層はジメッとした湿地帯だったじぇ。

 葦や芒といった草むらがどことなく陰鬱な昔話の日本を想起させるじぇ。

 


 ボクらは共闘して『荒武者・剛鬼』を探し始めたが、まるで梨の礫(なしのつぶて)だったじぇ。

 

「全然現れないな」

「本当に『荒武者・剛鬼』なんて魔物存在するのかだじぇ。ガセネタを掴まされたんじゃないよな?」

「失礼なドラム缶デブだな。きちんとした情報源ソースがあるわ」

「だったらなんで一匹も出ないんだじぇ? さすがにエンカウント率低すぎるじぇ」

「レアおたずねものムシくらい珍しいんだろ」

「なんだその魔物は?」

「元ネタを知らんなら聞くな」



 普段から無愛想な美波は、目当ての魔物が現れない事で更に不機嫌そうだったじぇ。

 このまま探しても見つかる気がしないじぇ。

 それなら……。


「なぁ美波。ボクと勝負しないか? これから二手に分かれて先に『荒武者の玉鋼』を獲得した方が勝ちってゲームだじぇ」

「ほう。焼豚チャーシューの分際で中々面白い事考えるじゃないか」

「負けた方が勝った方の言うことを聞くってのはどうだじぇ?」

「いいだろう。やったるわ」


 ウププププ。天才のこのボクが美波なんかに負けるわけがないじぇ。

 今日こそ美波に吠え面をかかせてやるじぇ!

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