第57話 1対100! A級目指してミッションをこなす
『緑山ダンジョン』はゴツゴツとした岩に囲まれた場所だった。
10層への階段を下りキラーアントを探していると、開けた空間に出た。
陸上競技場のトラックがすっぽり入るくらいの広さがある。
そこに足を踏み入れると、遠くから地響きが聞こえてきた。
どうやらキラーアントの大群がこちらに向かってくるらしい。
土煙が立ち上り、少しずつその全貌が見え始めた。
「こ、これはちょっと予想より多いな。多くても2、30匹かと思ってたが、見た感じ100匹以上はいるじゃないか」
遠方3、400メートルの距離からドドドドと地鳴りを響かせ黒い群れが押し寄せてくる。
そのスケールの大きい光景に、自分がペシャンコに踏み潰される想像をしてしまう。
一旦引き返して仲間たちと再挑戦をしようかと考えたが、今の俺一人でどこまで対処出来るのか知りたくもなった。
俺は前方に向かってマジックガン【アースメーカー】で数メートルおきに土壁を作成した。
更にカーバルくんを呼び出し命令を出す。
「とりあえず土壁を沢山作って足止めだ。それからカーバルくんには厚めに物理軽減魔法をかけて貰おうか」
「きゅう~!」
大急ぎで土壁を10個程立てる。
突貫工事なので1、2メートル程の高さで、厚みもそこまで無い。
どこまで突進を防げるか分からないが、勢いが止まってくれればそれでいい。
移動しながら戦うことも考慮せねば。
早くも先頭のキラーアントが土壁に接触した。
最初の衝撃は防げたが後から後から押し寄せてくる仲間たちの圧力を借り、一枚目の土壁は簡単に砕け散った。
その後も僅かに勢いを殺すことには成功したが、足止めには至らず。
キラーアントの第一波が目前に迫っていた。
こちらも反撃に打って出る。
土壁の隙間からエナジーガン【デッドブル】にて1%ショットを放つ。
着弾の衝撃で動きは止まったが、仕留めるまでにはいかなかった。
「やべえ! 1%じゃ倒せないか!? それなら3%くらいに出力を上げてみるか」
威力が3倍になったため、弾丸が胴体に直撃したキラーアントは後方に吹っ飛び、頭に当たったものは頭部がもげた。
よし。このパワーなら倒す事が出来る。
問題はエナジーガンは自分の体力やスタミナをエネルギーに変換して射出するもの。
3%ショットなら30発程度しか撃てない。
俺はエナジーガンのゲージが二割を切るまで、キラーアントの群れに3%ショットを放ち続けた。
ゲージの残りが心許なくなると、鞄からスタミナ回復用ポーションを取り出し飲み干した。
「くうー! キターーーッ!! やっぱり『モンスターエネルギー』は効くぜ!」
エナジーガンを使用するようになってからスタミナ回復用アイテムは必ず持参するようになった。
スタミナ切れで命を落とすなんて堪ったものじゃない。
パッシブスキルでも補強はしているが、もしスタミナが自然回復するようなアクセサリーがあったら高値でも買いたいところだ。
15個くらい作った土壁は半分以上倒壊していた。
土壁の脇から次々とキラーアントがやってくる。
その中から数匹が俺の元に迫った。
護身用に持ってきておいた【鬼金棒】で『ヘビースイング』をぶちかます。
キラーアントの身体は数メートル後方に吹っ飛び、消失していった。
「『ヘビースイング』はかなり有効だな。でもこの技はめちゃくちゃスタミナを使うから連発は出来ない。銃でチマチマ倒すしかないか」
魔力が大分余っているので【アースメーカー】にて土魔法攻撃を放つ。
数十メートル先から押し寄せてくる奴らの頭上に向かい、引き金を引く。
魔法はイメージが大切だ。
なるべく重くてダメージを与えられるような物体を想像する。
運動会の大玉転がしをイメージし丸岩を創造すると、上空からキラーアントの頭上めがけて降下させた。
今の魔力だと6、7個作るのが限界だ。
それでも頭上から降り注ぐ大岩によってかなりのキラーアントを仕留める事に成功した。
更に大岩が足止めにもなり、後方から波のように押し寄せていた勢いが止まった。
戦況は大分俺の有利に傾き始めていた。
「それでもまだまだ蟻共は大量にいやがるな。こうなりゃ消耗戦だ。ったく、最初のミッションだってのに難易度高すぎるだろ」
それからアリ軍団との激闘が始まった。
ポーションを飲み魔力とスタミナを回復しながら、敵を迎え撃った
敵の数も半分を切り、ようやく長かった戦いに終わりが見え始めた時だった。
持参したポーションが底をついた。
「くそ! ポーションが無え。あとちょっとだってのに!」
スタミナ切れやマナ切れを起こすと、身体に力が入らなくなる。
数は減ったとはいえ30匹程の集団から総攻撃を食らったらさすがに死んでしまう。
【鬼金棒】での近接戦闘に切り替えるしかないか。
だがキラーアントを30匹ぶっ叩くだけの体力が残っているか。
手を仕損じるとゲーム・オーバーだ。
撤退も考慮し始めたところ、行く手を塞いでいた丸岩が砕け散り、キラーアントの群れが押し寄せてきた。
「し、しまった!」
大慌てで『疾駆』を使い、離脱する準備を行う。
ところが、窮地を知らせるスキル『警戒』が反応しない。
命の危険が迫ると『警戒』が発動し、早く逃げるようにと身体に電流が流れる。
『警戒』が発動しないと言うことはまだやれるという事か?
「きゃっきゅっきゅうぅーーっ!!」
見ると俺の身体は今まで見たこともない緑色の光に包まれていた。
どうやらカーバルくんが俺になんらかのバフ魔法をかけてくれているらしい。
身体の内側からポカポカと温まる感じがした。
傷が消えていき、疲労感が和らいでいく。
二丁の銃を見ると魔力とスタミナゲージが徐々に回復していってる。
「こ、これはもしかして自然回復状態ってやつか? 傷も魔力もスタミナも、全て回復していくぜ」
「きゅぅ~♡」
なんて有能な召喚獣だ。
サポート特化の能力といえ、今の俺には最高にうってつけの相棒だ。
「さあて元気満タンだ。残りのアリ共も駆除してやるか」
「きゅうぅー!」
俺は残った30匹のキラーアントに向かっていった。
この日、俺は初のミッションを完遂した。
<奉仕実績>も積めたし、それ以上に一対多での戦闘を経験出来たのは大きかったかもしれない。
A級昇格を目指し、着実に強くなっていこう。
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