第56話 Aランク昇格のための五つの活動実績
今日俺は探索士協会X県支部を訪れていた。
Aランク昇格のために必要な活動実績を確認しに来たのだった。
受付に案内されて、指定された席で待っていると説明担当のお姉さんがやってきた。
「はじめまして。探索士協会職員の葉山と申します」
「B級探索士の只野と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします。順を追って説明していきますね。まずA級探索士になるためには五つの条件が必要となります。一つが<討伐実績>で100種類以上の指定された魔物を一定数討伐する必要があります。これは今まで経験している事からご理解頂けると思います」
「そうですね」
下級探索士の頃はゴブリンとかキマイラ数種類を討伐するだけだった。
100種類以上も魔物を討伐しなければならないのは知らなかった。
「二つ目に必要なのが<踏破実績>となります。指定された50層以下のダンジョンに潜って頂くとそこに記念のスタンプがあります。このスタンプを10種類以上集めて貰います」
「記念スタンプはダンジョンの最下層にたまに置いてありますよね。なんでもスタンプとインクには特殊な素材が使用されていて不正が出来ないとか」
「はい。なのでズルをしようとしても直ぐに分かってしまうんです。三つ目が<奉仕実績>です。こちらは協会からのミッションをこなして頂きます。F~Sランクの難易度があり、貰えるポイントは難易度によって増減します。このミッションで100ポイント以上稼ぐと実績達成です」
ミッションってのは要はおつかいとかクエストの事だな。
面倒なのでこれまで引き受けてこなかったが、昇格のためにはクリアしなければならないのか。
奉仕って言ってるからボランティアみたいなものか?
「四つ目が<指導実績>で下級探索士に戦闘や探索のコツをレクチャーし、指導を行って貰います。こちらは我々協会が仕事を斡旋しますので、得意な分野があれば教えてください」
「まだステフ……師匠からガンナーとして修行を受けている身だってのに、後進に指導しなければならないんですか? 得意分野って言ってもなぁ。剣も魔法も得意ってわけじゃないし、教えられる事なんてあるかな」
「難しく考えなくても大丈夫ですよ。B級に昇格するまでに身に付けた経験などを伝えて貰えれば大丈夫です。下級探索士にとって、B級探索士は雲の上の存在ですから教わることも沢山あるんですよ。そして五つ目が<認知実績>でこちらはやや条件が抽象的なのですが、探索士としての認知度を高めて頂きたいんですね」
「認知度?」
「はい。TVやyoutuve、ラジオや雑誌などメディアに取り上げられたり、講演会、セミナー、コンサルタントなどで知名度を上げて貰いたいのです。A級探索士は探索士協会の顔とも言えますので、誰もが名前を知っている様な存在であって欲しいとの考えなんです」
「なるほど。結構条件が沢山あるしどれも厳しいですね」
「そうですね。A級には年間数十人しか昇格出来ませんからね。一つずつ実績を上げていくことが大切だと思いますよ」
葉山さんからの説明を聞き終え、とりあえず<奉仕実績>を上げるためミッションに挑戦してみる事にした。
ミッションが書かれた張り紙を見ると、主にX県内のダンジョンに関するものが多かった。
<『竹橋ダンジョン』の3層にジャイアントワスプが出没して困ってます。討伐してください>
<『緑山ダンジョン』10層にキラーアントが大量発生して友人が死亡した。これ以上犠牲者を出さないために駆除をして欲しい>
<『遠野川ダンジョン』22層の水飲み場が壊されてました。どなたか修理してください>
<『梅津町ダンジョン』の5層でグールがマミーに進化して困っている。マミー強すぎ!>
<『上飯田ダンジョン』に祖母の形見のイヤリングを落としてしまいました。1層~17層の間のどこかに落としたと思います。見つけた方は拾って届けてください>
依頼内容を見ていると予想外に強い魔物と出くわして困っているものが多い。
基本的に各ダンジョンにはある程度正確な魔物の出没予想が提示されている。その予想を参考に下級探索士は装備を揃え探索に挑んでいる。
例えば1~3層にはゴブリンとコボルトしか出ませんよと言っておきながら、いきなり熊の様なオウルベアが出たら、実力の伴わない探索士は堪ったものじゃないだろう。
そこで低層に相応しくないイレギュラーな強敵が出たら報告して、倒せる実力のある探索士に倒してもらおうという考えなのだろう。
俺はなるべくポイントが高そうなミッションに挑戦する事にした。
『緑山ダンジョン』に向かい、10層に大量発生しているキラーアントを駆除するミッションに挑む事にした。
死者も出ているだけに緊急性が一番高いミッションだと感じた。
キラーアントは通常15層から20層以上に出没することが多い魔物だ。
全高は1メートル、全長は2メートルくらいで大型バイクより少し大きいくらいのサイズだ。
外殻が固く生半な武器じゃ、逆にへし折られてしまう。
ダンジョン産の素材で作った武器ならダメージを通せるが、市販品の金属バットや鉄のバールじゃ通じない。
弱点は胴体と頭部で、首を切断するのが一番手っ取り早い。
ただし筋力もパッシブで強化してないと難しいだろう。
武器やスキルといった装備が整っていない下級探索士が色目を出して10層まで下りたら、キラーアントの大群に襲われ殺されたって事か。可哀想に。
今の俺なら数匹なら余裕で倒せるが、大群となるとどうだろうか。
マジックガンで土壁を作って、カーバルくんに物理防御魔法をかけて貰えば守備面はなんとかなるだろう。
「この程度のミッションをこなせないようじゃA級なんて一生昇格出来ないよな。よーし。やってやるぜ」
『緑山ダンジョン』は全16層の小規模ダンジョンだ。
主にCランク以下の探索士の狩場といったところか。
これと言った特徴もないため、普段の俺ならわざわざ訪れるような場所ではない。
<奉仕実績>と亡くなった探索士の弔い合戦のためだ。
俺は10層に下りキラーアントの大群を探した――。
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